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「やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける」内容の要約と紹介:アンジェラ・ダックワース

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やり抜く力 GRIT(グリット)

レジリエンスとともに、重要な考えとなってきている「GRIT」「グリット」「やり抜く力」。その「やり抜く力」研究の第一人者アンジェラ・ダックワース教授による入門書。

「やりぬく力」を一言でいえば、ひとつの重要な目標に向かって、長年の努力を続けることである。

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PART1 「やりぬく力(グリット)」とは何か?なぜそれが重要なのか?

第1章 「やりぬく力」の秘密 なぜ、彼らはそこまでがんばれるのか?

米国陸軍士官学校(ウェストポインント)へ入学が許可されるのは、最難関大学に引けを取らないが、士官候補生の5人に1人は卒業を待たずに中退する。

さらに、中途退学者の大半は、夏の入学直後に行われる7週間の厳しい基礎訓練「ビースト・バラックス(獣舎)」に耐え切れずに辞めてしまう。

1995年、若手の心理学者ジェローム・カガンは陸軍に召集され、ウェストポイントの新入生を対象に、誰が耐え抜き、脱落するかを予想し、結果をウェストポイントの上層部へ報告することだった。

その後、何人もの心理学者が研究に取り組んできたが、理由を確実に突き止めたものはいなかった。

軍事心理学者のマイケル・マシューズによると、入学試験ではウェストポイントでやっていける資質を持つ人物を選定していた。

だが、その基準は「ビースト・バラックス」を耐え抜けるか予想するには、あまり役に立たなかった。

それどころか、志願者総合評価スコアで最高評価を獲得した士官候補生は、最低スコアの候補生と同じくらい中退する確率が高かった。

マシューズが空軍での経験でも同じことが言えた。困難に対処する力は才能とはほとんど関係がないということだった。

訓練を途中で辞めていったのは、才能がなくてやめたのではない。重要なのは「絶対にあきらめない」という態度だった。

著者は大学院で「成功の心理学」の研究を始めた著者は、各界でインタビュー調査を行っていた。

調査の中で浮かび上がってきたのは、どの分野でも、もっとも成功している人々は幸運と才能に恵まれていた。

そして、ずば抜けた才能に恵まれながらも、能力を十分に発揮できずに、挫折したり、興味をなくして辞めたりする人たちがいることであった。

要するに、どんな分野であれ、大きな成功を収めた人たちには断固たる強い決意があった。

1.並外れて粘りが強く、努力家だった
2.自分が何を求めているかをよく理解していた
決意だけでなく、方向性も定まっていた。

見事に結果を出した人たちの特徴は「情熱」と「粘り強さ」を併せ持っていることで、つまり「グリット(やりぬく力)」が強かった。

「グリット(やりぬく力)」はどうすれば測定できるか。それが「グリット・スケール」である。

ウェストポイントの仕官候補生に「グリット・スケール」のテストを受けさせた。結果は、成績評価と何の関係も見られなかった。

優秀な士官候補生でも「やりぬく力」が強いとは限らず、逆もしかりだった。

「やる抜く力」は才能とは関係がなかった。

そして「ビースト・バラックス」での結果を受けて「グリット・スケール」をチェックしてみると、スコアの差が如実に表れていることが分かった。逆に、志願者総合評価スコアとは関係がなかった。

つまり、志願者総合評価スコアは関係がなく、重要なのは「やりぬく力」であった。

他の分野でも同様の結果が得られている。「やりぬく力」の強い人の方が成功する確率が高い。

それぞれの分野ならではの特徴や条件も存在するが、「やりぬく力」はあらゆる分野において重要だった。

「やりぬく力」と「才能」は別物であり、才能があっても、才能を生かせるかどうかは別の問題ということである。

第2章 「才能」では成功できない 「成功する者」と「失敗する者」を分けるもの

心理学者になる前、著者は教師だった。(その前はマッキンゼーだった)

数学を教えていたが、数学に向いているだけではよい成績は取れないらしいということに気づいた。

当時「才能」に目を奪われていたが、「才能には生まれつき差がある」と決めつけずに、努力の重要性を考慮すべきではないと考えるようになった。

数年間の教師生活の中で、才能によってもたらされるものではなく、努力のもたらす成果に強い興味を抱くようになり、教師を辞めて心理学者になった。

ハーバード大学のウィリアム・ジェイムズは1907年に「人間は誰でも計り知れない能力を持っているが、その能力を存分に生かし切ることができるのは、ごく一握りの並外れた人々に過ぎない」と言っている。

だが、同じ能力であれば、我々は「努力家」よりも「天才」を評価してしまう。

教訓は、才能自体は素晴らしいが、才能を測定するテストはどれも胡散臭いこと。

才能だけでなく「やりぬく力」」を含めて心理学研究の対象となるものは、テストで測定しようとしたところで、不完全な結果しか得られないので、しっかりとした議論がなされるべきであること。

もう一つの教訓は、「才能」に目が奪われてしまい、「努力」に目がいかなくなることである。

「才能」が重要なら、「努力」はその2倍重要である。

第3章 努力と才能の「達成の方程式」 一流の人がしている当たり前のこと

ハミルトン・カレッジの社会学者ダニエル・F・チャンブリスは、どんなにとてつもない偉業も、実際は小さなことをたくさん積み重ねた結果であり、その一つ一つは「当たり前のこと」ばかりという。

しかし、人は「当たり前のこと」では納得しない。

19世紀のドイツの哲学者ニーチェはいう。

「あまりに完璧なものを見た時、我々は『どうしたらあんなふうになれるのか』とっは考えない。」

その代わりに「魔法によって目の前で奇跡が起こったかのごとく熱狂してしまう。」

「我々の虚栄心や利己心によって、天才崇拝にはますます拍車がかかる。天才というのは神がかった存在だと思えば、それにくらべて引け目を感じる必要はないからだ。『あの人は超人的だ』というのは『張り合っても仕方ない』という意味なのだ」

言い換えれば、「天賦の才を持つ人」を神格してしまった方が楽なのだ。そうすれば、現状に甘んじられている。

ニーチェはいう。

「天分だの、天賦の才だのと言って片づけないでほしい。才能に恵まれていない人びとも、偉大な達人になるのだから。達人たちは努力のよって偉業を成し遂げ、天才になったのだ。彼らはみな、腕の立つ熟練工のごとき真剣さで、まずは一つ一つの部品を正確に組み立てる技術を身につける。そのうえでようやく思い切って、最期には壮大なものを創り上げる。それ以前の段階にじっくりと時間をかけるのは、輝かしい完成の瞬間よりも、むしろ細部をおろそかにせず丁寧な仕事をすることに喜びを覚えるからだ。」

著者が大学院2年のある日、指導教員のマーティン・セリグマン教授に理論を作るように指導された。

その結果、生まれた理論は次のとおり。

やり抜く力の理論

・才能×努力=スキル
・スキル×努力=達成

この方程式がほぼ正しければ、才能が人の2倍あっても、1/2しか努力しない人は、例えスキルの面で互角であろうと、長期間で比較した場合には、努力タイプの人に圧倒的な差をつけられてしまう。

努力をしなければ、たとえ才能があっても宝の持ち腐れ。努力をしなければ、もっと上達するはずのスキルもそこで頭打ち。

努力によって初めて才能はスキルになり、努力によってスキルが生かされ、様々なものを生み出すことができる。

第4章 あなたには「やりぬく力」がどれだけあるか? 「情熱」と「粘り強さ」がわかるテスト

ここで紹介されるのが「グリット・スケール」

算出されるのは、現在の自分が自分をどう思っているか、が反映されている。「やりぬく力」は変化する。

「やりぬく力」は「情熱」「粘り強さ」のふたつの要素でできている。

「情熱」のスコアは奇数の問題だけに回答、「粘り強さ」は偶数の問題に回答すればよい。

得点を合計して5で割ればよい。

1.新しいアイデアやプロジェクトが出てくると、ついそちらに気を取られてしまう。

  まったく当てはまらない 5
  あまり当てはまらない 4
  いくらか当てはまる 3
  かなり当てはまる 2
  非常に当てはまる 1

2 私は挫折をしてもめげない。簡単にはあきらめない。
 
  まったく当てはまらない 1
  あまり当てはまらない 2
  いくらか当てはまる 3
  かなり当てはまる 4
  非常に当てはまる 5

3 目標を設定しても、すぐ別の目標に乗り換えることが多い。

  まったく当てはまらない 5
  あまり当てはまらない 4
  いくらか当てはまる 3
  かなり当てはまる 2
  非常に当てはまる 1

4 私は努力家だ
 
  まったく当てはまらない 1
  あまり当てはまらない 2
  いくらか当てはまる 3
  かなり当てはまる 4
  非常に当てはまる 5

5 達成まで何か月もかかることに、ずっと集中して取り組むことがなかなかできない

  まったく当てはまらない 5
  あまり当てはまらない 4
  いくらか当てはまる 3
  かなり当てはまる 2
  非常に当てはまる 1

6 一度始めたことは、必ずやり遂げる
 
  まったく当てはまらない 1
  あまり当てはまらない 2
  いくらか当てはまる 3
  かなり当てはまる 4
  非常に当てはまる 5

7 興味の対象が毎年のように変わる

  まったく当てはまらない 5
  あまり当てはまらない 4
  いくらか当てはまる 3
  かなり当てはまる 2
  非常に当てはまる 1

8 私は勤勉だ。絶対にあきらめない。
 
  まったく当てはまらない 1
  あまり当てはまらない 2
  いくらか当てはまる 3
  かなり当てはまる 4
  非常に当てはまる 5

9 アイデアやプロジェクトに夢中になっても、すぐに興味を失ってしまったことがある。

  まったく当てはまらない 5
  あまり当てはまらない 4
  いくらか当てはまる 3
  かなり当てはまる 2
  非常に当てはまる 1

10 重要な課題を克服するために、挫折を乗り越えた経験がある。
 
  まったく当てはまらない 1
  あまり当てはまらない 2
  いくらか当てはまる 3
  かなり当てはまる 4
  非常に当てはまる 5

アメリカ人の成人のグリッド・スコア。スコアが4.1であれば、成人の70%より「やりぬく力」が強いことになる。

グリッドスコア / パーセント
 2.5 / 10%
 3.0 / 20%
 3.3 / 30%
 3.5 / 40%
 3.8 / 50%
 3.9 / 60%
 4.1 / 70%
 4.3 / 80%
 4.5 / 90%
 4.7 / 95%
 4.9 / 99%

「粘り強さ」と「情熱」のスコアが違うことはよくあり、「粘り強さ」と「情熱」が同じものではないことを示している。

「情熱」に関する質問には、目標に対しての「熱心に」取り組んでいるかをたずねる質問はない。

「情熱」を「夢中」や「熱中」と同じに捉えがちだが、異なるものである。

「熱心さ」ではなく「ひとつのことにじっくりと長い間取り組む姿勢」である。

「やりぬく力」は、ひとつの重要な目標に向かって、長年の努力を続けることである。

そのために「人生哲学」と呼ぶべき目標を立てる人もいる。

そうした最終的な「目的」を「究極的関心」という。この最上位目標は、その下に続くすべての目標に方向性と意義を与える「コンパス」になる

「やりぬく力」が非常に強い人は、中位と下位の目標のほとんどは、何らかの形で最上位の目標と関連している。

逆に、各目標がばらばらで関連性が低い場合は、「やりぬく力」が弱いと言える。

将来の夢を思い描く際、夢を実現するための中位や下位の目標を具体的に設定することができない。

そのため、目標がピラミッド形の構造にならない。

最上位の目標がぽつんと浮かんでいるだけで、それを支える中位や下位の目標が全くないのである。

心理学者のガブリエル・エッティンゲンは、これを「ポジティブな空想」と呼んでいる。

だが、それよりも多いのが、中位の目標が乱立するだけで、それを束ねる最上位の目標がないパターンである。

目標のピラミッドが全体として一つにまとまり、各目標に関連性があって整然と並んでいる状態が望ましい。

ウォーレン・バフェットがお抱えのパイロットに伝授したという「優先順位を決めるための3段階方式」がある。

1.仕事の目標を25個、紙に書き出す
2.自分にとって何が重要かを考え、最も重要な5つの目標に丸を付ける
3.丸をつけなかった20個の目標を目に焼き付け、今後は絶対に関わらないようにする。なぜなら、気が散るからだ。よけいなことに時間とエネルギーが取られてしまい、もっとも重要な目標に集中できなくなるからである。

成功するには「やるべきこと」を絞り込むとともに、「やらないこと」を決める必要がある。

「やりぬく力」は重要性の低い目標にしがみついて、どれもこれも必死に追い続けることではない。

重要な目標を達成するための「手段」にすぎない目標にまで「絶対にやり遂げなければ」と不毛な努力を続けても意味がない。

「やりぬく力」が強い人でも挫折や、逆境や、失敗する。だが、失意は長く続かない。
すぐに新しい下位の目標を見つけるからだ。

特殊部隊グリーンベレーのモットーは「機転、対応、克服」である。「何度やってもダメだったら、ほかのやり方を試すこと」

ピラミッドの下位にある重要度の低い目標には、まさにそのような態度で取り組む必要がある。

そして、重要度の低い目標をあきらめることは悪いことではない。むしろ必要な場合がある。

ほかにもっとよい実行可能な目標があるなら、一つの目標に固執すべきではない。

同じ目標を目指すにしても、今の方法よりもっと効率的な方法や、面白い方法があるなら、新しい方法に切り替えるのは理にかなっている。

だが、重要度の高い目標は、容易に妥協すべきではない。

スタンフォード大学の心理学者キャサリン・コックスが偉業を成し遂げた人物の特徴を調べ、幼児期の知能指数を計算した。その結果、「功績の偉大さ」と知能指数の高さはほとんど関係がなかった。

偉人たちと一般の人々の決定的な違いは次の4つにまとめられる。

  1. 遠くの目標を視野に入れて努力している。晩年への備えを怠らない。明確な目標に向かって努力している。
  2. いったん取り組んだことは気まぐれにやめない。気分転換に目新しさを求めて新しいものに飛びつかない。
  3. 意志力の強さ、粘り強さ。いったん目標を決めたら守りぬこうと心に誓っている。
  4. 障害にぶつかっても、あきらめずに取り組む。粘り強さ、根気強さ、辛抱強さ。

グリット・スケールは自分自身を見つめ直すよい機会である。

第5章 「やりぬく力」は伸ばせる 自分をつくる「遺伝子と経験のミックス」

「やりぬく力」」はある程度遺伝で決まるが、もう少し複雑である。

私たちがどのような人間になるかは「遺伝子」と「経験」とその相互作用によって決まることが、かなり解明されている。

  1. 「やりぬく力」や「才能」など、人生の成功に関わる心理学的な特徴は、遺伝子と経験の影響を受ける。
  2. 「やりぬく力」をはじめ、いずれの心理学的な特徴についても、その遺伝に関係する遺伝子はたった一つではない
  3. 遺伝率の推定値を見れば、形質の発現のしかたは人によって様々であることがわかるが、「平均」がどれだけ変化しているかは、遺伝率を見ても分からない。

3は「環境」が与える影響が極めて大きいことを示している。

ニュージーランドの社会科学者ジェームズ・フリンが発見した現象で、過去100年の人々の知能指数が飛躍的に高くなっていることを「フリン効果」と呼ばれている。

30か国以上で、この50年間で知能指数は平均15ポイント以上高くなっている。

特に高くなっているのが、「抽象的な思考力」を測定する検査である。

逆に、「やりぬく力」には「逆フリン効果」ともいうべき現象がみられる。

もっとも「やりぬく力」が強かったのは65歳以上の人々で、最も弱かったのは20代だった。

例えば70代の人々は、文化的に今とは大きく異なる時代に育った。「ひたむきな情熱」や「粘り強さ」が重んじられた時代だった。

そうした時代に育ったので、若い人々より「やりぬく力」が強い可能性はある。

時代や文化が人々に与える影響により「やりぬく力」が変わる可能性があるということである。

別のデータでは、人は「成熟する」ことで「やりぬく力」が伸びている可能性がある。

どちらの考えが正しいのか、長期的な研究が必要である。

性格心理学には「成熟の原則」という考えがある。

人生の教訓を肝に銘じ、慣れない環境で頑張っていくうちに、新しい考え方や行動が身について習慣となる。

そして、いつのまにか以前の未熟な自分を思い出せなくなるようになる。

新しい状況に適応し、その状態が定着することで、自分のアイデンティティが向上する。つまり「成熟する」のである。

まとめると、二つの蓋然性がある。

  1. 「やりぬく力」は、育つ時代の文化的な影響を受ける
  2. 「やりぬく力」は、年齢とともに強くなる

「やりぬく力」を強くする4ステップ

  1. 興味:自分のやっていることを心から楽しんでこそ「情熱」が生まれる
  2. 練習:「粘り強さ」は昨日よりも上手になるようにと、日々の努力を怠らないことである。そして、慢心しないこと。もっと上手になること
  3. 目的:自分の仕事は重要だと確信してこそ「情熱」が実を結ぶ。目的意識を感じないものには、興味を一生持ち続けるのは難しい。
  4. 希望:希望は困難に立ち向かうための「粘り強さ」である。

PART2 「やりぬく力」を内側から伸ばす

第6章 「興味」を結びつける 情熱を抱き、没頭する技術

ベンジャミン・ブルームの「3段階の発展形式」を第6章では「初期」について述べ、第7章では「中期」、第8章で「後期」について述べる。

「興味」を研究している科学者たちは、この10年ほどで最終的な結論に達した。

1.人は自分の興味に合った仕事をしているほうが、仕事に対する満足度がはるかに高い。そして人生に対する全体的な満足度が高い傾向にある。
2.自分のやっている仕事を面白いと感じているときの方が、業績が高くなる。

自分でははっきりとは気が付かずに興味を抱いている。
1.大人になったらなにをしたいかなど、子供のころには早すぎてわからない
  ほとんどの人は中学生くらいのときに、特定の職業への興味のあるなしがぼんやりと見えてくる
2.興味は内省によって発見するものではなく、外の世界と交流する中で生まれる。
  興味を持てるものに出会うまでの道のりはすんなりとはいかず、回り道が多い。
3.興味を持てることがみつかったら、さらに長い時間をかけて、自分で積極的に掘り下げていかなければならない

無理やり興味を持とうとするのは大きな間違いである。逆説的だが、なにかに興味を持ち始めた時、本人がそれに気が付いていないことも多い。

そして、興味を持ち続けるには、親、教師、コーチ、仲間など、周囲の励ましや応援が必要である。

心理学者のベンジャミン・ブルームは「スキルは3つの段階を経て進歩し、各段階につき数年を要する」と結論に達した。

第7章 成功する「練習」の法則 やってもムダな方法、やっただけ成果の出る方法

ベンジャミン・ブルームの「3段階の発展形式」を第6章では「初期」について述べ、第7章では「中期」、第8章で「後期」について述べる。

メガ成功者たちは「カイゼン」を行い続ける。「継続的な改良」を続けるのである。

つねにもっとうまくなりたい、という強い欲求である。自己満足とは正反対で、ポジティブな心理である。

過去への不満ではなく、さらに成長したいという前向きな思いが原動力となる

認知心理学者のアンダース・エリクソンの研究論文によれば、「10年間で1万時間」の練習は、平均に過ぎない。

「1万時間ルール」「10年ルール」が広まったのは、直感的にイメージ出来てわかりやすいからだ。

だが、エリクソンの研究による最も重要な洞察は、練習時間が多いことではない。練習の仕方が一線を画する点である。

エキスパートたちは、ただ何千時間もの練習を積み重ねているわけではない。

エリクソンのいう「意図的な練習」を行っているのである。

「意図的な練習」とは

  1. ある1点に的を絞って、ストレッチ目標(高めの目標)を設定する(得意なところを伸ばすのではなく、具体的な弱点の克服に努める)
  2. しっかりと集中して、努力を惜しまずに、ストレッチ目標の達成を目指す(ひとりで練習する時間が多い人ほど、スキルの上達が早いことがわかっている)
  3. そして、自分のパフォーマンスが終わると、熱心にフィードバックを求め、しっかりと対処する(改善すべき点がわかったあとは、うまくできるまで何度でも繰り返し練習する)

ストレッチ目標を達成したあと、新たなストレッチ目標を設定し、弱点の克服に努める。これを繰り返す。

「意図的な練習」は音楽家やアスリート以外の人々にも一般原則は当てはまる。

どんなに複雑でクリエイティブな能力も、構成するスキルは細分化することができる。

一つ一つのスキルは練習を積み重ねることで習得することができる。

ベンジャミン・フランクリンが文章力を培った方法は「意図的な練習」だった。エッセイを精読し、何度も繰り返し読みながらメモを取った。

だが、「意図的な練習」は極めて過酷に感じられることがエリクソンの研究でも明らかになっている。

はなはだしい疲労をもたらすので、「意図的な練習」は最大1時間で、休憩を入れて、1日に3~5時間が限界である。

心理学者のミハイ・チクセントミハイはエキスパートのみが体験する状態を「フロー」と呼んでいる。

「やりぬく力」が強い人は、普通の人よりも「意図的な練習」を多く行い、フロー体験も多い。

そして、楽な練習はいくら続けても意味がない

猛練習をして、極度の疲労に追い込むことと、周到に考えた質の高いトレーニング目標を設定し、達成する「意図的な練習」による疲労とは意味が違う。

自分がまだできていないことに挑戦して、失敗して、何とかうまくいくように別の方法を見つけることが、エキスパートの練習方法である。

「意図的な練習」を最大限に活用するためには「習慣化すること」がよい。

大変なことをするのには「ルーティーン」に勝る手段はないからである。

また、「意図的な練習」を活用するために、「意図的な練習」への向き合い方を変える必要がある。「楽しい」と思うことである。

第8章 「目的」を見出す 鉄人は必ず「他者」を目的にする

ベンジャミン・ブルームの「3段階の発展形式」を第6章では「初期」について述べ、第7章では「中期」、第8章で「後期」について述べる。

「後期」は一番長い段階で、自分が取り組んできたことに「さらなる大きな目的と意義」を見出す段階である。

「やりぬく力」の鉄人が、自分の目指していることに「目的」があるというときは、「意図」よりも深い意味がこめられている。

「目的」に特別な意味があるのだ。

自分の思いを言葉で的確に表現するのに苦労する人もいるが、誰もが例外なく口にするのが、他者のことである。どの場合も、伝えようとしているメッセージは同じである。

苦労を重ね、挫折や失望や苦しみを味わい、犠牲を払っても、それだけの価値はある。
なぜなら、その努力は他の人々の役に立つからだ。

「目的」には「自分のすることは、他の人々にとって重要な意味を持つ」のである。

「やりぬく力」の鉄人は聖人と言うことではない。

「やりぬく力」のきわめて強い人は、自分にとっての究極の目標は、自分の枠を超えて、人々に深くつながっていると考えている。

「目的」はほとんどの人にとって、とてつもなく強力なモチベーションの源になっている。

自分の仕事を「天職」と思っている人は少ない。そして、どの職業でも「天職」と感じている人の割合は変わらない。

本人が自分の仕事をどうみなしているかであり、職業を変えなくても、ただの「仕事」と考えていたものが「キャリア」になり、「天職」に変わる可能性がある。

スタンフォード大学の発達心理学者のウィリアム・デイモンによると、確固たる「目的」を抱くようになった人は、必ず若い時に「目的」を持った生き方の手本となる人物(ロールモデル)に出会っているという。

このあとに世の中で解決すべき問題を発見する「啓示」を受ける。

ただ気づくだけではだめだ。「目的」を持つためには、もうひとつの「啓示」が必要である。

「私ならきっと変化をもたらすことができる」という確固たる信念を持ち、行動を起こす覚悟が必要となる。

第9章 この「希望」が背中を押す 「もう一度立ち上がれる」考え方をつくる

日本のことわざに「七転び八起き」がある。「やりぬく力」の強い人々が持つ希望は、運とは関係ない。何度転んでも起き上がる。それがすべてだ。

手応えがないと「学習性無力感」にはまってしまう。

1964年、マーティン・セリグマンスティーブ・マイヤーは有名な心理学の実験を行った。

実験の結果、「無力感」をもたらすのは苦痛ではなく、「苦痛を回避できないと思うこと」ということが証明された。

この実験の10年後に行われた実験で、回避できない苦痛は、食欲減退、睡眠障害、注意力や身体活動の低下など、うつ病の症状をもたらすことがわかった。

セリグマンとマイヤーは、動物も人間も無力感を「学習する」と発表し、科学会で認められた。

セリグマンは対処法に興味を持ち、精神病医でうつ病の認知療法の創始者アーロン・ベックのもとで臨床心理学者の再教育を受けた。

そこでセリグマンは「学習性無力感」と対照的な「学習性楽観主義」を研究した。

逆境に対して「負けるものか」と立ち向かう人間の反応を研究し、あることに気づいた。

楽観主義者も悲観主義者も同じようにつらい出来事を経験するが、受け止め方が異なるのだ。

楽観主義者は自分の苦しみは一時的で、特定の原因があると考えるが、悲観主義者は自分の苦しみは変えようがない原因のせいにして、自分ではどうすることもできないと考えてしまう。

ベックの認知行動療法により、自分の心のネガティブなつぶやきを観察することを覚え、不適応な行動を変えられるようにする。

私たちは、自分の身に起こる出来事を、楽観主義者のように解釈し、反応することを、他のスキルと同様に、練習によって身に着けることができる。

キャロル・ドウェックは「固定思考」の人は挫折の経験を、自分には能力がない証拠と解釈してしまうが、「成長思考」の人は、努力すればきっとうまくできると信じている。

こうしたマインドセットの在り方は、楽観主義と同じような役割を果たしている。

「成長思考」の学生は、「固定思考」の学生よりも「やりぬく力」が強かった。

マインドセットの形成は、子供のころの「褒められ方」によって決まる確率が高い。

ただほめるだけでなく、「自分なりに目標をもって、以前はできなかったことをできるようにすることが大事だよ」と伝える必要がある。

「成長思考」「やりぬく力」のを伸ばす表現

  • よくがんばったね、すばらしい
  • 今回はうまくいかなかったね、一緒に今回の方法を見直して、どうやったらもっとうまくいくか考えてみよう
  • よくできたね、もう少しうまくできたかもしれないと思うところはあるかな?
  • これは難しいね。「すぐに」できなくても気にしなくていいよ。
  • もうちょっとがんばってみようか。一緒にがんばれは必ずできるから。

「成長思考」「やりぬく力」を妨げる表現

  • 才能があるね、すばらしい
  • まあ、挑戦しただけえらいよ
  • よくできたね、君はすごい才能を持っている
  • これは難しいね。できなくても気にしなくていいよ。
  • これは君には向いていないのかもしれない。でもいいじゃないか、君にはほかにできることがあるよ

スティーブ・マイヤーの実権から、高いレジリエンスを身に着けて成長すると、ある程度の制御できないストレスを与えらえても「無力感」に陥ることはない
だが、励ましだけでは、脳は変化しない。実際に逆境を経験して、乗り越えなければならない。困難を乗り越える経験が必要になる。
子供のころに、何かを乗り越えた、うまくできたという経験は、ずっとあとにまで効果を及ぼす。

著者からの提案

1.「知能」や「才能」についての考え方をあらためること

筋肉を鍛えるのと同様に、脳も新しい課題を克服しようと頑張っていると、それに応じて変化する。

脳は完全に固定することはなく、生きている限り、神経細胞は互いに新しい結合を増やし、既存の結合を強化する能力を持っている。

2.楽観的に考える練習をすること

認知行動療法が「学習性無力感」に有効であることから、「レジリエンス・トレーニング」が開発された。予防を目的とした認知行動療法といえる。

3.ひとに助けを求める

ひとに助けを求めることは、「希望」を持ち続けるための良い方法である。

PART3 「やりぬく力」を外側から伸ばす

第10章 「やりぬく力」を伸ばす効果的な方法 科学では「賢明な子育て」の答えは出ている。

子育てと「やりぬく力」の関連性に関する研究は、いまだ例がない。

厳しい子育てと、のびのびした子育て、のどちらがよいか。

厳しい子育てと、のびのびした子育ては、どちらか一方しか選択できないものではない。

子供の興味を第一に考える意味で子供中心で良いが、「なにをすべきか」「どれくらい努力すべきか」「いつならやめてよいか」などの重要なことは、子供の判断に任せない。

  • 「支援を惜しまない」「要求が厳しい」⇒賢明な育て方
  • 「支援を惜しまない」「あまり要求しない」⇒寛容な育て方
  • 「支援しない」「要求が厳しい」⇒独裁的な育て方
  • 「支援しない」「あまり要求しない」⇒怠慢な育て方

心理学者のローレンス・スタインバーグの研究によると、性別、民族性、社会的地位、婚姻区分に関わらず、

「温かくも厳しく子供の自主性を尊重する親」を持つ子供たちは、ほかの子供たちよりも学校の成績が良く、自主性が強く、不安症やうつ病になる確率や、非行に走る確率が低かった。

賢明な育て方は、子供が親を見習うように促すので、「やりぬく力」には大いに関連性がある。

小さい子がおとなの行動をまねる本能は、非常に強力である。

親を手本にするようになるが、心理学的に賢明な親の子供が、必ずしも「やりぬく力」が強くなるとは限らないという結論にもなる。

心理学的に賢明な親たちが、必ずしも「やりぬく力」の面でも手本を示すとは限らないからである。

「やりぬく力」の基礎を築くのは母親や父親だけではない。

身近なおとなが厳しくも支援を惜しまないメンターの役割を務めることによって、絶大な効果をもたらす。

新しい研究によって、子育てに匹敵する優れた教授法が明らかになっている。

教師と生徒たちに関する共同研究で、厳しい教師のクラスでは、生徒の学力が毎年目に見えて伸びていた。

生徒の自主性を尊重し、支援を惜しまない教師のクラスでは、生徒たちの満足度が高く、勉強に積極的に取り組み、大学への進学希望率も高かった。

教師にも賢明な教師、寛容な教師、独裁的な教師、怠慢な教師がいることがわかった。

どんな教師よりも生徒の学力を伸ばすだけなく、生徒の満足度を高め、勉強に対する積極的な取り組みを促し、将来に大きな希望を抱かせるのは、賢明な教師であることが分かった。

ちょっとした短いメッセージでも、相手のやる気を高めることができることも研究で明らかになっている。

第11章 「課外活動」を絶対にすべし 「1年以上継続」と「進歩経験」の衝撃的な効果

体系的な練習が必要な課外活動は「やりぬく力」を伸ばすのに効果的であると考えている。

課外活動には、他の活動にない重要な二つの特徴がある。

  1. 親以外の大人の指導を受けること
  2. 興味を深め、練習に励み、目的を持ち、希望を失わずに取り組むことを学べる
  3. とはいえ、課外活動の効果を示す科学的根拠は十分とは言えない。

ある研究の結果、学校の勉強は大変で、多くの子供にとっては、本質的には面白くない。

友達にメールを打つのは楽しいが、やりがいはない。

だが、課外活動は大変だけど楽しい。

コロンビア大学の心理学者マーゴ・ガードナーらの研究によると、高校で課外活動を1年以上続けた生徒たちは、大学の卒業率が著しく高く、コミュニティのボランティア活動への参加率が高かった。

2年以上続けた生徒に限って、1週間当たりの課外活動の時間数が多かった生徒ほど、就業率も高く、収入も高かった。

課外活動を最後までやり通すことの重要性を最初に研究した学者の一人がウォーレン・ウィリンガムである。

1978年「性格的特徴研究プロジェクト」の責任者を務めていた。

成績と試験のスコア以外に、将来の成功の決め手となる性格的特徴は何かを突き止めようとしていた。

その結果、「最後までやり通す」という性格的特徴が重要なのが分かった。さらに、1年たってもやめずに翌年も続け、その間に何らかの進歩を遂げることである。

課外活動は長期的な目標に向かって「情熱」と「粘り強さ」を身に着けるのと同時に、
課外活動を最後までやり通すのは「やりぬく力」の強い生徒たちにしかできない。

有力な考えとしては「青年期に何らかの活動を最後までやり通すことは、やりぬく力を要するとともに、やりぬく力を鍛えることにもなる」というものである。

ヒューストン大学の心理学者ロバート・アイゼンバーガーはラットでの実験で手間のかかる方法で餌を与えられたラットの方が我慢強くなった。

アイゼンバーガーの妻が教員だったため、学校の生徒たちを対象に短期間の実権を行った。

その結果、「勤勉さは練習によって身に着けることができる」という結論に至った。
研究の重要な結論は「努力と報酬の関連性は学習することができる」ということである。

体験を通して「努力と報酬の関連性」を学ばない限り、放っておくと怠けてしまうようである。

大人も子供も「やりぬく力」が身に着く4つのルール

  1. 家族全員が一つはハードなことに挑戦しなければならない(「ハード」なこととは、日常的に「意図的な練習」を要するということである)
  2. やめてもよい(やめる条件があり、授業料を支払った期間など、区切りの良い時期が来るまではやめてはいけない)
  3. 「ハードなこと」は自分で選ぶ(自分が少しも興味を持っていないのに、ハードなことに取り組んでも意味がないからだ)
  4. 新しいことでも今やっていることでも構わないが、ひとつのことを最低でも2年間は続けなければならない

第12章 まわりに「やりぬく力」を伸ばしてもらう 人が大きく変わる「もっとも確実な条件」

自覚の在りなしにかかわらず、自分が属している文化、自分と同一視している文化の影響を、あらゆる面で強く受けている。

人々が明確な理由をもって、自分たちはこういうやり方でいこう、と同意のもとに集まるところには、独特の文化が存在する。

そして、世間の一般的なやり方との違いが著しいほど、集団の結束は強くなる。こうした集団を「内集団」という。

「やりぬく力」を強化したいなら、「やりぬく力」の強い文化を見つけて、その一員になることである。

リーダーの立場にあるなら、「やりぬく力」の強い文化を創り出すことである。

集団に溶けももう、周りのやり方に合わせようとする人間の欲求は、非常に強力である。

心理学の実験でも、無意識のうちに集団に溶け込み、新しい行動の仕方や考え方を身に着けることが証明されている。

文化には長期的に自分のアイデンティティを形成する力があるという考え方は興味深い。

長期的に条件が揃えば、自分が所属する集団の規範や価値観は、やがて自分自身の規範や価値観となる。

アイデンティティは、性格のあらゆる面に影響を及ぼすが、「やりぬく力」とは特に関連が深い。

アンソン・ドーランスはノースカロライナ大学チャペルヒル校の女子サッカーチームで「やりぬく力」を浸透させた。

「やりぬく力」の文化を築くため、言葉の力を重視している。

何年もかけて12のコアバリューの標語を練り上げた。半分はチームワークに関するもの。半分は「やりぬく力」に関するものである。

そして、毎年、3つの文学作品から引用文を暗唱しなければならない。

ドーランスがひらめいたのは、ロシアの詩人オシフ・ブロツキーに関する記事を読んだ時だった。

コロンビア大学で客員教授を務めていたブロツキーは、大学院生にいくつもロシアの詩を暗唱させた。

学生のほとんどは要求を理不尽だと感じたが、詩を暗唱することによって、大きな変化が起きた。

暗唱できるようになったとたん、ロシアの息吹や魂を心と体で感じることができるようになったのだ。

ジョージ・バーナード・ショーの文章

「人生の真の喜びは、自分自身の行動によって幸せをもたらすことである。つねに病気や不満の種に怒ってばかりいる、身勝手な愚か者に成り下がり、世の中は自分を幸せにしてくれない、などと嘆くことではない」

第13章 最後に 人生のマラソンで真に成功する

1.「やり抜く」は伸ばせる

やり方は2つある

(1)自分自身で「内側から伸ばす」

  • 興味を掘り下げる
  • 自分のスキルを上回る目標を設定してそれをクリアする練習を習慣化する
  • 自分の取り組んでいることが、自分よりも大きな目的とつながっていることを意識する
  • 絶望的な状況でも希望を持つことを学ぶ

(2)「外側から伸ばす」

  • 親、コーチ、教師、上司、メンター、友人などが重要な役割を果たす

2.「やり抜く」の強い人ほど、精神的にも健康的な生活を送っている

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