全ての知識と知恵はSDGs(Sustainable Development Goals)のために。

「人生の科学 「無意識」があなたの一生を決める」内容の要約と紹介:デイヴィッド・ブルックス

この記事は約23分で読めます。

先端諸学からみる無意識の世界

誕生から最期の瞬間までを、「無意識」がいかに一生に影響を及ぼすのかを、脳科学、心理学、行動経済学、哲学などの成果を明らかにしていく。
かなり面白い内容で、自意識が人間の最大の特徴であると思い込んでいる傲慢さをへし折ってくれる。代わりに、いかに無意識が大きな役割を果たしているのかを教えてくれる。
逆に言えば、この「無意識」をいかに使っていくのかが、人生を豊かにしていく秘訣だと言えるだろう。

はじめに

最初に私見

本書が扱うのは「無意識」である。扱っているジャンルも、そして題名もそうだが、スピリチュアルな印象を持つかもしれない。
だが、近年の科学の成果を反映させた本である。科学の本である。

はじめに

この本で問題としているのは、心の奥底の部分である。
つまりは、無意識の感情や直観、偏見、自分でも気づいていない願望、その人の心が生まれつき持つ癖、社会の影響など。
近年「意識」や「心」というものに対する認識は大きく変わってきている。
遺伝学や神経科学、心理学、社会学、経済学、人類学などで、新たな発見があり、理解が進んでいる。
そして、意識や心と「成功」との関係もかなり分かるようになってきた。
 ▼
重要な事:
 意識的に考えていることは、私たちの「人となり」にはあまり関係がないということである。
 「人となり」を決めるうえで重要なのは、意識の下のレベルの心である。
 ↓
自分で意識している部分はほんのわずかしかなく、大部分は意識の下にある。
そして、思考や意思決定の多くも、この意識下の心でなされている。
 ↓
幸福な人生を送れるかどうかも、多くは意識下の心の働きで決まる。

この本の目的

無意識の役割を知ってもらうことにある。
人間が幸福になるうえで、無意識がいかに重要な役割を果たすか、それを知ってもらいたいのでる。
 ▼
われわれの日常の行動は、無意識の世界で生じる愛情や嫌悪などの感情でかなりが決まってしまう。
つまり、無意識の感情の扱い方によって、幸福になるかどうかがほぼ決まってしまう。
 ▼
意識とはいわば「大将」であり、無意識は「兵士」である。
本書では、大将が兵士をどう教育すべきなのか、無意識の声をどうすれば聞くことができるのか、といったことに触れる。
大事な事は、意識の側から無意識に働きかけることも可能ということである。

人間という生物の重要な特徴は、その理性にあるわけではない。
それは社会性である。

1章 意思決定 – 男女の感じ方

女性の美しさを決める基準

世界的に非常に似通っている。
1.肌が美しい
2.唇がふっくらとしている
3.髪が長く、つやがある
4.左右の対称性が高く、口と顎、鼻と顎の間が離れていない
5.ウエストとヒップの比率が0.7になっている

笑う時の表情

眉の端を動かす眼輪筋という筋肉は意識して動かすことはできない
 ▼
眉の端が下がるということは、本物の笑顔であるということ

女性の見方

男性の目を見る
1.瞳の大きな男性には性的な魅力を感じる
2.左右の均整が取れていること
 +
一目ぼれを信じない人は約89%に上る
 +
一般的に女性は男性ほど視覚によって性的欲望を喚起されることがない
 ⇒ 女性が慎重になるにはわけがある
   繁殖力ではほとんどの男性に問題はないが、安定性になると個人差が大きい
   つまり欠陥品が多い
   それゆえ、外見よりも、人柄が信頼でき、社会でうまく生きていける人間を重視する
女性は、物の配置の記憶などは、男性に比べて平均して60から70%上回るらしい。

初対面

初対面の相手がどのくらい信頼できるか、能力はどのくらいか、攻撃的でないか、好感のもてる人かということを、最初の10分の1秒くらいの間で、かなり正確に判断できるという
(プリンストン大学のジャニン・ウィリス、アレクサンダー・トドロフ)
 ▼
第一印象の重要性
トドロフは選挙で争っている候補者の顔を見せ、どっちが勝かを予想する実験をした
70%の確率で勝つ候補者が当たったという

恋の落ちるパターン

自分に似た人と恋に落ちることが多い
ヘレン・フィッシャーの著書「新しい愛の心理学」の中で、男女ともに、民族的、社会的に、宗教的な背景が似ている異性と恋に落ちる傾向がある。また、教育程度や経済力、外見的な魅力、知性なども同じくらいの方が恋に落ちやすい。物事に対する態度、価値観、関心の対象、自己評価の高さ、社交能力やコミュニケーション能力の高さも同様である。
 ▼
つまりは共通点が多いほどよいということである

キス

人間は、唾液の味から相手の遺伝情報を得ることができる
クラウス・ウェデキンドの有名な実験によれば
女性は遺伝子の中のHALと呼ばれる領域の中が自分と大きく違っている男性に惹かれやすいことがわかっている

理性の限界

意思決定は私たちの知らないところでなされ、意識にはあとで知らされる
つまり、意思決定は感情によるもので、理性によるものではない
 ▼
発見のきっかけは「エリオット」という名で知られる一人の人物だ。
エリオットは脳腫瘍にかかり、前頭葉の切除手術を受ける。知性は高く、博識で、社交性も高かった
 ↓
手術後
何事にも集中できなくなりもはや分別のある意思決定ができなくなっていた
依然としてIQは平均以上であり、記憶力もすぐれており、複雑な情報処理にもたけている
だが、表情がなかった
 ▼
エリオットには感情がなくなってしまっていた
 ▼
いくつかの選択肢があり、そのいずれにも正当性があるような場合、どれを選ぶかが彼にはできなかった。
状況は理解できているが、意思決定そのものができなかった。彼にとっては、いずれの選択肢も、まったく同等であったのだ
 ▼
人間は感情がなくなってしまうと、自滅的な行動をしやすくなる
他人の心の痛みを推し量ることができないから、平気で粗暴なふるまいをする
 ▼
理性には限界がある

理性と感情は一体

理性は感情があって初めて機能できるものである
感情に依存していると言ってもよい
感情は、物事の自分にとっての価値を決める役割を果たす
理性はただ、感情によって高い価値を与えられたものを選択するだけである
 +
意思決定は、通常さっぱりしていない
絶えず迷い、揺れ動く
 ▼
幸福で充実した人生を送れる人は、価値判断が適切な人であり、価値判断の微妙な変化を敏感に察知できることも大切である

2章 生活観の違い – 結婚とセックス

生活観の違い

結婚するということは、生活観の違う人間同士が一緒に暮らすということ
 ▼
一見、大きな違いではない、些細な違いだ
結婚してからしばらくは、逐一面白く感じられ、決して不愉快ではない
 ▼
そういう時期はやがて消える
 ▼
結婚生活の「第二ステージ」へ
第二ステージは「来るべき戦いに備える時期」に入る
 つまり
「パラダイムシフト」を求められるようになる

パラダイムシフト

どちらも、相手の人格のうち、ある部分を「聖域」とみなして、干渉をしない
そうやって暗黙のうちに認め合う。
 ▼
移行がうまくいった二人なら、お互いの為に、妥協することを喜びと感じるはずである。

結婚生活の満足度

結婚生活の満足度は一般的にU字型の曲線を描くと言われる
 ▼
はじめ : どの夫婦もとても幸せに過ごす
その後 : 低下を始め、子供がたちが思春期を迎える頃に最低に落ち込むことが多い
その後 : 低いままの状態が続き、仕事を引退するくらいの時期に再び上昇を始める

夫婦間のセックス

女性の性欲は、男性に比べて文化の影響を受けやすい側面がある。
つまり、教育や文化、所得のレベル、社会的地位などによって変わってくる
 ▼
教育レベルの高い女性の方が、総じていろいろなことを試みようとする傾向がある
オーガズムは単なる刺激に対する反射ではない
オーガズムは認知、知覚、つまり身体だけでなく頭が引き起こすものである

3章 乳児期の成長 – 親子の絆

胎児の成長

胎児の脳は毎分25万個というペースで神経細胞が増えていく
そのため、生まれた時には200億個にも達する
 また
味蕾なども機能しているため、母親の食べたものによって羊水が甘くなったりなどの味を感じることができる
そして、胎児は甘い羊水ほど多く飲む
妊娠17週くらいになると
胎児は自分の周囲の様子を感じ取ることができるようになる
へその緒に触れたり、指と指を押し付け合ったりする
 また
子宮の外からの情報を受け取る能力も大幅に向上する
妊娠5カ月
胎児は苦痛を感じれば、その苦痛から逃れようとする
妊娠第3期となると
胎児は夢を見るようになる
 ▼
「母性」というものが真に意味を持ち始めるのは、この時期以降のことである
胎児はすでに音が聴けるようになっており、母親の声を耳にし、音色や口調を記憶し始めている
そして、話し方のパターンやリズムも聞いている

発達心理学

1981年、アンドリュー・メルツォフは、生後42分しかたっていない乳児に対して舌を出した
乳児は同じように舌を突き出した
 ▼
生まれて間もないにもかかわらず、舌であることを認識していた
 ▼
これ以降、知られていなかった乳児の能力が分かってきた

赤ん坊について

1.赤ん坊の身体的特徴は、どれも母親を自然に惹きつけるようになっている
  大きな目、広い額、小さな口とあご
2.人を見つめる技術にもたけている
  相手の表情を読む極めて高い能力をすぐに身につけている
3.できるだけ多く、長く母親に触れていたいという欲求がある
  これはハリー・ハーロウの猿をつかった有名な実験の結果が示している
4.赤ん坊の最も強力な武器は「匂い」である

乳幼児

乳児は平均で約20秒に1回くらい、なんかしらの理由で大人が注意を向けなくてはならない
子どもを産んだばかりの母親は、最初の1年で約700時間の睡眠を奪われる
 ▼
その結果、結婚生活に対する満足度は70%低下するとも言われている

母子の絆

脳の発達のためには他者とかかわる必要がある
ラットの実験
 母親が舐めたり、毛づくろいした方が、そうでない場合に比べてシナプス結合が増えるという結果が得られている
 子どもを母親から引き離すと、そうでない場合に比べて、大脳皮質、小脳皮質で死滅する神経細胞の数が2倍になるというデータもある
1930年代に、H・M・スキールズが孤児を対象とした研究をしている
教育ではなく、母親が愛情を注ぎ注意を向けることでIQが改善するという結果が出ている

存在

サミュエル・テイラー・コールリッジは「自己が生まれる前に、まず愛が始まる。最初の愛は他者への愛である。幼子は、母親の中に己を発見し、その後、何年もたってからはじめて己が一個の人間であることを悟るのだ」
コールリッジは当時3歳の我が子が夜中に目を覚ました時のことを書いている
目をさまして母親にこう言った
「ねえ、僕に触って。お母さん、頼むから僕に触ってよ」
母親は驚いて
「なぜ?」
と尋ねた
子供は泣きながらこう答えた
「僕がここにいないんだ。お母さんが触ってくれないと、僕はここにいられない」

4章 「世界地図」作り – 脳と学習

赤子の自意識

赤子は数か月たつと、周囲にあるものの一つ一つの区別がつくようになる。
「水平」「下」も理解する。
 ▼
アリソン・ゴプニック、アンドリュー・メルツォフ、パトリシア・カールによると、「説明衝動」ともいうべきものに取りつかれているそうだ。
つまり、実験と学習の日々を送るのだ。
とはいえ、自意識というものはない。もう一人の自分がいて、自分を見つめているということはない。
 ▼
これは前頭葉の働きによるものだが、前頭葉はほかの部分に比べて成長が遅い。
前頭葉が未発達であると、自分の思考を自分で制御することができない。
 ▼
アリソン・ゴプニックの「哲学する赤ちゃん」
『彼らにとって、思考というのはあくまでも外界からの刺激によって引き起こされるものである。内的な世界で自発的に何かを思考するなどというのは、彼らの理解を超えた芸当だ』

重要な仕事

赤子は少しでも多くのことを学び、頭の中に世界の地図を作る必要がある。
そのためには、自分を世界の中に浸して、一度にすべてを受け止めるという方法が一番早い。
 ▼
この地図次第で、起きた出来事にどう反応するかが決まってしまう。
何を望ましい、好ましいと思うのか、そして未来を予測する精度もである。

シナプス形成

妊娠2か月から2歳の誕生日までに、毎秒180万のシナプスが作られるという説がある。
2、3歳までには、脳内のニューロンの一つ一つが、平均で15,000のシナプスを作ることになる。
すべてが残るわけではなく、採取的には、100兆から500兆、多い人で1,000兆くらいのシナプスができる。
 ▼
こうしてできるニューラルネットワークは私たちの行動に大きな影響を与えることになる。

一般化

子供は「一般化」にたけている。
そして、これができることによって「想像力」につながっていく。
 ▼
ダン・P・マクアダムスによると、子供時代につくる物語の性質は、その後の人生の物語に影響するという。
自分の実人生に起きる出来事が最終的に良い結果につながると信じるのか、悪い結果となると信じるのか、子供時代のものがタイで大きく左右される。

5章 愛着 – 親子関係と成長

子育て

近年の発達心理学の研究により分かったこと。
・親は決してすぐれた心理学者にならなくても、子育てに成功できる。
・才能豊かな教師である必要もない
 ▼
子育て用の様々な教材があるが、どれも大した効果はない。
親はただ、良い親であればいい。それで十分なのだ。
 +
親が子供に与えるべきものは、一定したリズムである。
親から一定したリズムが与えられれば、子供はそのリズムに乗ることができ、衝動に負けて無軌道な行動をとることもなくなる。
 +
親は基本的には子供にやさしく接すればいい
その中で、ここからはダメといった規律があればいい

愛着

発達心理学者のメアリー・エインズワースによれば、子供は必ず親から離れて行動すべき時が来るという。
「ストレンジ・シチュエーション法」というテスト方法によると、2/3の子供は母親に強い愛着を感じ、ゆるぎない安心感を得ていると考えられる。これを「安全の愛着」と呼ぶ。1/5の子供は母親がいなくても反応がない。「回避の愛着」と呼ばれるものである。そのほかには「混乱の愛着」というものがある。
 ▼
親に対する愛着の種類はのちの人生に影響することが分かっている。
 ▼
「安全の愛着」を持つ子供は、ストレスのかかりやすい状況にもうまく対処することができる。
一方で「回避の愛着」を持つ子は、大人になると子供のころをよく覚えていないことが多いという。
「混乱の愛着」を持つ子は、恐怖心を抱きやすい子供になるという。
親が話好きで他人と積極的にかかわろうとする人たちであれば、「安全の愛着」を持ちやすいこともわかってきている。
親が自分の親と良好な関係を築いていると、子供との関係も良くなる。
親への愛着は学業へも強く影響している。
「安全の愛着」を持つ子、親からきめ細かい配慮を受けている子供は、読解力や計算力が高くなる傾向がある。
 ↓↑
「不安の愛着」「回避の愛着」を持つ子供は学校で問題行動を起こしやすい。

6章 学習 – 友人と学校

集団の形成

ムザファー・シェリフの1954年に行った有名な社会科学実験
 ▼
偶然にせよ、人は少しの共通点が見つかれば、それを根拠を作る。
そして、隣り合って存在する集団の間には、ほぼ間違いなく摩擦が生じる。
 ▼
集団内で高い地位を得て、権力を持つためには
集団の規範について、他のものより深く理解していること

社交性

「ウィリアムズ症候群」という病気の人は、社交には素晴らしい能力を発揮するが、その他のことに関しては深刻な問題を抱えている。
この病気からもわかるように、社交と勉強には別の力が必要なのが分かる。
 ▼
デイヴィッド・ヴァン・ローイの研究によれば、社交の上では重要な感情を知覚する力とIQスコアとの関係性は5%ほどである

ホルモンの影響

男の子と女の子とでは、ホルモンの作用によりストレスへの反応が違ってくる。
 ▼
女の子:人間関係のストレスに強く反応する
男の子:自分の立場を脅かすようなストレスに強く反応する
 ▼
共通:気にしなくていいような些細なことを気にするという点

学習方法

もともとの知識があれば、記憶力は大きく向上する
 ▼
つまり、知識の習得がまずは重要になる
心理学者キャロル・ドゥエックによれば、人は努力した後に他人に褒められると「自分は努力する人間である」という自己イメージをもつようになる
褒められれば褒められるほど、そのイメージは強化される
 ▼
こうしたイメージを持つと、積極的に新しいことに挑戦するようになる
 ↓↑
逆に
賢い、と褒められていた人は、賢いと思われたいことが行動の基本となり、新しいことへの挑戦に消極的になる
失敗してバカと思われるのが怖いからだ
長い時間をかけて丸暗記しようとするより、5日間、毎日同じような個所を一通り読むことを繰り返すほうが良い
それは学習にリズムを持たせることである。
 ▼
リチャード・オグルが「手を伸ばしては、また元に戻す」というリズムである
分野の基礎的な知識に、いつでも立ち戻り、新しい知識に手を伸ばす
意識と無意識を強調させる
 ▼
新しいことを学ぶときは、核となる基本的な知識を身につけ、それを頭の中でしばらく熟成させるとよい
熟成の方法としては日記に思ったことを書くなどが良い、そうすれば、頭の中の整理ができていくからである。

7章 創発システム – 貧困と教育

アメリカの社会構造

アメリカの社会の文化規範が、階層ごとにどう違っているか。
ペンシルバニア大学の社会学者アネット・ラローの研究。
 ▼
知識階級の親(多くが中流階層)と教育程度の高くない親(多くが貧困層)
→親としての振る舞いが根本的に異なる
 量的ではなく、質的に異なる
 つまりは、子供を育てるということに関する論理、モデルが全く違っている
知識階級の子供たち
 ラローの言う「協調育成」の下で育つ
 親たちは、大人が管理する活動に子供を数多く参加させる
 大人の意志により、子供たちはいろんな体験学習ができる
  ▼
スケジュールは厳しくなるが、団体の中で秩序正しく行動するコツを自然と身に着けることになる
 ↓↑
教育程度の高くない親
 大人の世界と子供の世界の間に明確な境界線をつくる
 親が世話を焼く時期はすぐに終わり、放っておけば勝手にするだろう

会話の質

「承認」や「賛同」の意志を込めた会話
 ▼
成し遂げるたび大きな賞賛を受ける
そのため、自分は素晴らしい能力を持っていると感じることができる
親子間で交わされる言語が豊かだと、IQも高くなるし、学業成績もよくなる傾向にある

8章 セルフコントロール – 集中力が人生を決める

生まれながらの気質

驚きやすい人と、そうでないひとがいる
新生児でも、道の状況の置かれたときの反応でわかる
 ▼
1979年心理学者ジェローム・ケーガンらは500人の乳児を対象にした実験を行った
 20%は激しく泣く「高反応」
 40%は「低反応」
 40%はその中間
 ↓
10年後
 「高反応」のうち、1/5はそのまま
 「低反応」のうち、1/3はそのまま
 残りは中間に移っていった
 だが、「低反応」→「高反応」やその逆は見られなかった
 ▼
ある程度までは変化するが、一定以上の変化はされない
ある程度の気質というのは、そのまま維持されていくことになる

慢性的なストレスの影響

慢性的なストレスにさらされていると
1.脳の海馬の細胞が失われやすいという研究結果がある
  海馬の細胞がなくなれば、それに伴って記憶も失われることになる
  特に良い出来事についての記憶が失われやすい
2.免疫系の働きも弱まり、骨のミネラル分も減り、体脂肪は蓄積する
  徐々に体が衰弱していく
3.コルチゾールやアドレナリンが通常レベルよりも高くなる
  そして、長期間高い状況になる
 ▼
ストレスは長く影響を持続し、体をむしばんでいく

セルフコントロール

スタンフォード大学のウォルター・ミッシェルのマシュマロ実験
実験で重要なのは、マシュマロを食べずに長い時間我慢できた子の方が、我慢できなかった子より、のちの学校の成績がはるかによく、問題行動も大場に少なかったこと
 ▼
セルフコントロールは厳密には意志の強さの問題ではない
別の思考パターンを呼び起こすことが必要である
それによって、目の前の事態へ対処でき、マシュマロも我慢できるようになる
つまりは、無意識にどんなきっかけを与えれば、自分にとって望ましい思考が始まるのかを知ることである

理性や意志の訓練

理性や医師は筋肉に似ているということである
 ▼
小さなルールを順守していくことにより、時間をかけて自制心を身に着けていく

9章 文化 – 成功を決めるもの

人間の野心

野心の強い人には共通する性質がある
1.自分の存在に関して根の深い危機感を持っている
2.自分と何か共通点を持つ偉大な先人を見つける人も多い
3.すでに成功した人たちの交流の輪に入りたいと望んでいる
将来の自分をどうしたいか、という「ビジョン」を持っている子は、何事も上達しやすい

天才

長年の研究の結果
「天才とは作られるもので、生まれながらの天才はまずいない」
 ▼
天才と凡人の違いは向上する能力である
時間をかけて少しずつ向上していけるのが天才なのである
つまりは絶え間ない練習、努力である

CEOにとって重要な特質、能力とは?

1.細部への注意力
2.粘り強さ
3.作業を効率的にこなす能力
4.的確な分析力
5.長時間働き続ける能力  など
 ▼
同じようなことはジム・コリンズの「ビジョナリー・カンパニー2-飛躍の法則」にも同様のことが書かれている
マリー・バリック、マイケル・マウント、ティモシー・ジャックの研究
●ビジネスリーダー
 ≠ 外向性、他人との同調性、新しいことを受け入れる感応性
 こうしたこととCEOの成功とはあまり強く結びついていない
 ▼
大事なのは
1.感情が安定している
2.誠実
3.信頼できる
4.計画を立てて完遂する能力

10章 知性 – IQの限界

IQで測れない能力

IQは一定の目安になりうことは長年の研究で確認されている
また、IQスコアは親からの遺伝が大きく影響する
 ▼
経営者たろうと思えばIQは100あればよい
原子物理学の研究がしたいなら120くらい必要かもしれない
 ▼
だがIQは環境によって著しく変化しやすい
リチャード・R・ワグナーの研究によれば
「仕事の業績の大きさは人によって違うが、その違いのうち、IQの高さとの相関が確認できるのは全体の4%程度である」
つまりは、人生の成功にはあまり関係がないということである

11章 無意識の偏見 – 選択の仕組み

選択の仕組み

商品の並べ方や、店の雰囲気を変えると、顧客は無意識のうちにそれに影響される。
=顧客の気持ちを意図的に操ることもかのう
商品が横に並べられている場合、たいていの客は、右におかれているものほど高級なのだろうと思うという。
ティモシー・ウィルソン、リチャード・ニスベットの実験結果からもわかる。
レストランでは連れの多い人ほど多く食べる傾向がある
4人連れだと、家での食事の175%
7人以上になると、196% だといわれている
マーケティングの世界では常識であるが、一人の人が同時に二つの異なった嗜好を持つ
 ▼
「行動経済学」

行動経済学

「人間はあまり未来のことを考えらえない」
=未来の成功を犠牲にしても現在の満足を優先させる傾向がある
ダン・アリエリーの「予想通りに不合理」
 ▼
私たちはみなゲームの駒であり、駒が一体どういう力で動かされているか、自分たちにもわからない
普段は自分たちで動かせていると思っているが、そうではない
残念ながら、現実とは異なる願望でしかない
(行動経済学はこれからしばらくの流行になる分野だろうと思う。なによりも、直感的にわかりやすい事例を扱い、面白いからだ。だが、学問の潮流は常に移っていくものである。)

12章 自由と絆 – 二つの幸せ

人生の区分

かつて人生は4つの時期に分かれるとされていたが、今は6つに分かれるとされる
幼児期
思春期
成年期
老年期
 ↓
幼児期
思春期
冒険期
成年期
引退後の活動期
老年期
成年期にいるかどうかは4つの基準で判断できる
1.親の家から出ているか
2.結婚しているか
3.家族を持っているか
4.経済的に独立しているか
 ▼
1960年代 70%のアメリカ人が30歳までにこうした条件を満たしていた
2000年には40%に下がっている
 ▼
思春期と青年期の間に別の期間があることがこの数字からもわかる

人生を幸せにするものは何かという研究

お金と幸福の関係が複雑なこと
 裕福な国ほど幸福な国であり、裕福な人ほど幸福であるという傾向は確かにあるが、両者の相関関係は意外に弱い
 つまり、その人が幸福かどうかは、何を幸福にするかという定義によって大きく左右されるからである
 これは専門家の中でも大きな議論となっている
これまでの調査で分かったのは
「どうすれば自分が幸福になれるのか」をわかっていない人が実は多いということ
 ▼
たいていの人:仕事やお金、不動産を過大評価
反対に、人と人の絆、努力して何かを成し遂げることの価値は過小評価
お金と幸福の関係は複雑だが、
人との絆と幸福との関係は非常に単純だ
 ▼
人との絆が深まるほど、幸福感も大きくなる傾向がはっきりとみられる
 結婚生活を長く続けている人は、そうでない人と比べてはるかに幸福度が高い
 ある調査では、結婚がもたらす精神的満足は年10万ドルに匹敵するという
 また、友人たちのグループに入り、たとえ月に一回でも定期的に集まることができれば、収入が倍なったのと同じくらいの幸福感が得られることもわかっている

13章 他者との調和 – 二人の間の境界

ソナーの働き

人は自分の置かれた状況を察知するソナーを持っている
成功の可能性が高いのは、物事を、実際より少しだけ大げさに受け止める人である
特に、よいことはやや大げさに受け止めるが、悪いことは重要ではないと忘れてしまえるようような人がよい

14章 合理主義の限界 – 世の中は感情で動く

過信

人間の脳は自分を過信するようにできている
自信の強さは、その人の能力の高さとほとんど関係がないということである
むしろ、能力の低い人ほど自分の能力を過大評価する傾向があることが、大規模な調査の結果で分かっている

15章 科学と知恵 – 「メティス」という境地

無意識は衝動的で、目先の報酬に飛びつきやすい
無意識はとにかく今気分がよくなりたい
そして、苦痛や恐怖からはできるかぎり逃れようとする
無意識にはステレオタイプという問題がある
何にでもパターンを探したがる性向がある
実際にはパターンがないところにも強引に見つけてしまう
無意識は極端に数に弱い
リスクの計算も苦手だ
 ▼
何か判断を下すということに関しては弱い
だが、無意識には理性にできないことがある
意識は無意識に包まれている
=意識は無意識から入力される情報を受け取ってはたらく
 ▼
情報処理能力は無意識のほうが高い
一説には20万倍の差がある
 ↓
無意識の数々の弱点は、長所の裏返し

16章 反乱 – 組織の改革

脳には自分の誤りを察知するような「フィードバック・メカニズム」が備わっている
テストで一度書いた答えがなんとなく間違っていると思って書き直したらあっていたといったものである
 ▼
おかしいと思って答えを書き直した場合、書き直した答えのほうが正解であるということは実際に多いという
(ただし、本書では、多いと書いているだけで、最初の答えと、書き直した答えの正答率に関する記述はない。つまり、書き直したほうが正解に結びつく確率が高いとは書かれていない)

17章 すれ違い – 恋愛から友愛へ

結婚後の関係は多くの場合、恋愛から友愛にかわっていく
国連のデータによると(1947~1989)、4年目の離婚率が最も高いという
心理学者ジョン・ゴットマン
「夫婦の間の関係が健全なものならば、相手に対してたまに否定的な言葉をかけることがあっても、肯定的な言葉をその五倍くらいかける」

18章 道徳心 – 無意識の教育

他人に迷惑をかけているわけではないが、多くの人が話を聞くと嫌悪感を抱くものがある。
聞いた人はなぜ不快に感じるのかは、理由の説明ができないが、ただ、不愉快なことがある。
 ▼
道徳に対する合理主義者の見解は正しくない
人間が合理的、客観的な状況分析によって善悪を判断することはすくない
善悪の判断は心の深いところで無意識のうちに行われることが多い

19章 リーダー – 選挙の心理学

人は、好きな美術品を見つけるような感覚で支持する候補者を決めているらしい
自分の好みに合うかどうかで決めている
 つまり
一見、さほど重要でない要素がその決定に大きく影響する
多くの実験
 ▼
わずか1秒ほど候補者の顔写真を見ただけで
驚くべき正確さで、どの候補者が強いか言い当てている
有権者の判断は直感的、感情的だが、必ずしも非理性的ではない
直感は理性よりもはるかに早く、はるかに複雑な情報処理ができる
そのため、直感に従ったほうがより高度で賢明な判断を下せる可能性がある
「人生の科学 20章 真の「社会」主義 – 階層の流動化」には特段興味引く記述がなかったため省略。

※20章は省略

21章 新たな学び – 過去との対話

最近の調査で
高齢者であっても学習や成長は可能であることが証明されている
 ▼
生涯、脳内のニューロンは新たなネットワークを作ることができるし、新たなニューロンも作られ続ける
衰えてしまう部分も確かにあるが、それ以外のほとんどの部分は衰えることはない
 ▼
同じ結果を出すまでに時間がかかるかもしれないが、問題解決能力となると、ほとんど若い時と変わりがない
「人生の科学 22章 人生の意味 – 最期の時」には特段興味を引く記述がなかったため省略

目次

はじめに
 感情の帝国/この本の目的/改革の失敗/ルソーに倣う/絆
1章 意思決定──男女の感じ方
 出会い/食事/遺伝情報の交換/理性の限界/理性と感情は一体
2章 生活観の違い──結婚とセックス
 夫婦間のセックス
3章 乳児期の成長──親子の絆
 侵略/母子の絆/ミラーニューロン/笑わせる
4章 「世界地図」作り──脳と学習
 重要な仕事/シナプスの形成/一般化/お話を作る
5章 愛 着──親子関係と成長
 強い愛着/人間の複雑さ
6章 学 習──友人と学校
 挨拶回り/社交の天才/スター教師/学習のスタイル/標的になる/ステップ1/ステップ2/ステップ3/ステップ4/ギリシャ人からの贈り物
7章 創発システム──貧困と教育
 決意
8章 セルフコントロール──集中力が人生を決める
 生まれながらの気質/マシュマロ実験/意志決定の三段階/変身
9章 文 化──成功を決めるもの
 天才/規律と効率/家族と血縁/親族との葛藤/経済力と勉学/思考の土台/文化は不平等/自分のためのメモ
10章 知 性──IQの限界
 IQテストで測れない能力/時計と雲/旅立ちの時
11章 無意識の偏見──選択の仕組み
 苦闘の日々/行動経済学/ヒューリスティクス/再出発
12章 自由と絆──二つの幸せ
 人生の区分/仲間たち/運命/エリカ
13章 他者との調和──二人の間の境界
 ソナーのはたらき/報酬系/調和への願望/至上の喜び/エロス再考
14章 合理主義の限界──世の中は感情で動く
 過信/合理主義/迷走
15章 科学と知恵──「メティス」という境地
 古い議論/第六の感覚/認識論的謙虚
16章 反 乱──組織の改革
 公開首脳会議
17章 すれ違い──恋愛から友愛へ
 孤独/離婚宣言/アルコール依存/インカネーションキャンプ
18章 道徳心──無意識の教育
 心の痛み/理性と欲望の葛藤?/道徳と無意識/生まれつきの道徳心/衝動の競技場/道徳の教育/個人の責任/針路の修正
19章 リーダー──選挙の心理学
 プライベートな演説/選挙アドバイザー/暗黙の論争/無理な二極化
20章 真の「社会」主義──階層の流動化
 唯物論的な価値観/誤った政策/発想の転換/「社会」主義/エッセイの連載/社会的流動性/第三の政策
21章 新たな学び──過去との対話
 瞑想/第二の教育/脳の創作/創造活動/幸せな新事業
22章 人生の意味──最期の時
 瞑想的生活/意味の追求/最期の時
謝 辞
訳者あとがき

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