邦題の『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』は挑戦的なタイトルです。
原題は「未来はあなた方が思うより早い:融合するテクノロジーがどのようにしてビジネスと産業、我々の生活を変えるのか」という意味です。
「はじめに」で書かれていますが、本書では具体的な事例をあげながら、コンバージェンス(融合)がもたらす世界を描き出そうとしています。
進化するテクノロジーが、同じく進化する別のテクノロジーと合わさった時、何が起こるのか。
たとえば人工知能、AIが、たとえば拡張現実、ARと合わさるなど。
今、多くの産業に破壊的変化が起きていて、さらに大きな変化が起ころうとしているのは、両者の「コンバージェンス(融合)」の結果です。
このようなコンバージェンスが加速的に起きているのです。
この加速的にというのを表現しているのが、「エクスポネンシャル」というキーワードです。
「エクスポネンシャル」とは「指数関数的に」という意味です。
下記の本と一緒に読むと面白いと思います。
- 「ワーク・シフト」リンダ・グラットン
- 「第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来」クラウス・シュワブ
- 「マッキンゼーが予測する未来―近未来のビジネスは、4つの力に支配されている」リチャード・ドッブス、ジェームズ・マニーカ、ジョナサン・ウーツェル
第1部 「コンバージェンス」の破壊力
エクスポネンシャルな成長曲線をたどっている9つのテクノロジーについて、現状、未来、変化の推進などについて考えていきます。
第1章 「コンバージェンス」の時代がやってくる
これまでバラバラに存在していた「エクスポネンシャル・テクノロジー」の波が融合しつつあります。
たとえば医薬品開発が加速しているのは、バイオテクノロジーがエクスポネンシャルなスピードで進化しているためだけではありません。
AIや量子コンピューティングなどいくつものエクスポネンシャル・テクノロジーがこの分野で融合しつつあるからです。
「破壊的イノベーション」はエクスポネンシャル・テクノロジーが融合すると、その破壊力はケタ違いになります。
個別のイノベーションについて行くのさえ難しいのに、複数が組み合わさるとお手上げです。
ですが、それが今起きているのです。
レイ・カーツワイルが「収穫加速の法則」に従って計算したところ、これからの100年で、2万年分の技術変化を経験することになるといいます。
パラダイムシフトを引き起こし、ゲームチェンジャーとなるブレークスルーが日常的に起こるようになるということです。
しかし、ヒトは未来を見通すのが苦手です。
研究によると、これから数十年でAIとロボティクスのコンバージェンスによって、労働者の相当な割合が失業の危機にさらされます。
社会の変化に適応するために、数千万人の労働者が再教育を受けてバージョンアップしなければならないことを意味します。
- 「空飛ぶ車」は現実になる
- テクノロジーが「融合」しつつある
- 空飛ぶ車の三つの条件 「安全性」「騒音」「価格」
- 「ローカルでリニアな時代」は終わる
- 自動運転車のポイントは「データ」
- イーロン・マスクの怒りが生んだ「ハイパーループ」
- マスク、トンネルを掘る
- ロサンゼルスからシドニーまで30分
- なぜヒトは未来を見通すのが苦手なのか
- あと10年で世界は激変する
- アバターとロボットの時代がくる
- 2028年の朝
第2章 エクスポネンシャル・テクノロジー part 1
レイ・カーツワイルは一つのエクスポネンシャル・テクノロジーの有用性が終わるたびに、それに変わるものが生まれてくることを言っています。
トランジスタも同様で、ムーアの法則にとって変わるものが出てくる可能性があります。例えば量子コンピューティングです。
エクスポネンシャル・テクノロジーの成長サイクルは6つのステージがあります。
- デジタル化
- 潜行
- 破壊
- 非収益化
- 非物質化
- 大衆化
この章で取り上げているのは、AI、ネットワーク、IoTデバイス、ロボットです。
今起きているのは、ロボット技術と他のエクスポネンシャル・テクノロジーとのコンバージェンスです。
- 量子コンピューティングと「ムーアの法則」の終わり
- エクスポネンシャル・テクノロジーの六つのステージ
- 進化する人工知能
- 「見る」「聞く」「読む」「書く」「知識の統合」
- 『アイアンマン』のAIは実現まであと1歩
- ネットワーク 5G、気球、衛星/センサー
- 福島原発事故以降のロボティクス革命
- ロボットはいたるところに
第3章 エクスポネンシャル・テクノロジー Part2
この章では、仮想現実、拡張現実、3Dプリンティング、ブロックチェーン、バイオテクノロジー、遺伝子治療が紹介されました。
- 仮想現実
- 拡張現実
- 3Dプリンティング
- ブロックチェーン
- 「材料科学」とナノテクノロジー
- バイオテクノロジー
- CRISPR(クリスパー)
- 「パーソナライズされた医療」の時代がくる
第4章 加速が「加速」する
変化が加速するのは3つの増幅要因が重なっているからです。
コンピューティング能力のエクスポネンシャルな成長
加速するテクノロジー同士のコンバージェンス
7つの推進力存在
それぞれの推進力は個別に作用しますが。組み合わさった時に最大の力を発揮します。
- 推進力1 時間の節約
- 推進力2 潤沢な資金
- 推進力3 非収益化
- 推進力4 「天才」の発掘しやすさ
- 推進力5 潤沢なコミュニケーション
- 推進力6 新たなビジネスモデル
- クラウドエコノミー
- フリー&データエコノミー
- スマートネス・エコノミー
- 閉ループ・エコノミー
- 分散型自立組織
- 多重世界モデル
- トランスフォーメーション・エコノミー
- 推進力7 寿命を延ばす
- 加速を「加速」させる七つの力
- 推進力1 時間の節約
- 推進力2 潤沢な資金
- テクノロジーが資金を生む/新規仮想通貨公開(1CO)/ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)/孫正義のビジョンファンド
- 推進力3 非収益化
- 推進力4 「天才」の発掘しやすさ
- 「脳」はここまで開発できる
- 推進力5 潤沢なコミュニケーション
- 推進力6 新たなビジネスモデル
- 推進力7 寿命を延ばす
- ジョブズがあと30年生きていたら/平均寿命は「100歳」を超える/三つのアプローチ/青春の泉
第2部 すべてが生まれ変わる
8つの産業に注目し、テクノロジーのコンバージェンスがどのように世界を変えるのかを見ていきます。
第5章 買い物の未来
eコマース革命は始まったばかりで、AIが小売業と買い物体験を根底から変えます。
IoTの影響は広がれば、レジ係が消えていくでしょう。
小売業にはロボットが導入され始めています。賃金が上がる中、ロボットは休みなく働きます。
そして3Dプリンティングがあらゆるモノの小売に広がり始めています。
これから3Dプリンティングは主に4つの面で小売業を変えていくと思われます。
- サプライチェーンが消える
- ゴミが消える
- 交換部品が消える
- 商品はユーザーがデザインする
一方でうまくいけば小売業はコンバージェンス産業になれます。
商業施設に足を運ぶことで、健康、娯楽、学びなどを兼ね備えたエクスペリエンスになるからです。
そうでなければ、ショッピングモールは過去のものになります。
- シアーズの成功と没落
- ウォルマート、そしてアマゾン
- eコマース革命は始まったばかりだ
- AIが小売業と「買い物体験」を根底から変える
- レジ係が消える
- 2026年のショッピング
- 小売業はロボットなしには回らなくなる
- 3Dプリンティングが小売業にもたらす「四つの変化」
- 小売業の最後の望みは「体験」
- ショッピングモールはもういらない
- 2029年のショッピング
第6章 広告の未来
近い将来、ソーシャルメディア・マーケティング市場が消滅すると思われます。
広告は2次元の画面の呪縛から解放されるようになります。
空間的ウェブの時代がやってきて、「声」のコピーが可能となり、「ディープフェイク」が進化していきます。
そしてAIが買い物の意思決定の大部分を担うようになると、遠くない将来、広告が消えてしまう可能性があります。
- SNSマーケティングは終わる
- 空間的ウェブの時代がくる
- 未来のアップルストア
- ハイパー・パーソナリゼーションの不気味な力
- 「声」のコピーが可能になる
- 「ディープフェイク」の進化
- さらば広告、ようこそJARVIS
第7章 エンターテインメントの未来
レンタルビデオを潰すためにネットフリックスが活用したのはインターネットでした。
エンターテイメント産業は少数のハリウッドスタジオとテレビネットワークが実質的に支配してきました。
しかし加速するエクスポネンシャル・テクノロジーが全てを変えようとしています。エンターテイメントの世界では「誰が」「何を」「どこで」という3つの変化が進行しています。
「誰が」ではユーチューブなどに代表されるように、大衆が作り手になりました。
ブロックチェーンにより海賊版の作成は不可能になっています。
「何を」では、コンテンツはこれまで以上に「コラボラティブ」「イマーシブ」「パーソナライズ」されたものになっていきます。
「パッシブ(受動的)」なメディアは終焉し、「アクティブ(能動的)」なメディアへ変わっていきます。
ディープフェイク・テクノロジーが進化すると、私たちの分身を作り出す「リアル・フェイク」ができるかもしれません。
人間と機械の知能が融合して、エンターテイメントは全く新しい領域へ広がっていくのです。
「どこで」は、没入の空間、つまりは仮想空間です。
そしてエンターテイメントはパーソナルなものになっていきます。
やがてはコンピュータと大脳皮質を直結させるテクノロジーの開発が進むと思われます。
- ネットフリックスのコンバージェンスとは
- 「誰が」「何を」「どこで」
- ユーチューブとスーパークリエイターの登場
- AIクリエイター
- パッシブメディアからアクティブメディアへ
- ディープフェイクとリアル・フェイク
- 「ホロデッキ」が現実に
- 「没入」の未来
- パーソナライズの未来
- 2028年の夜/感情コンピューティング
- スクリーンのない世界へ
- ARの巨大市場が出現する
- ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)
第8章 教育の未来
教育をマクロの面で見ると、量と質の問題があります。
量は教師が足りないこと、質は現代的なニーズに対応していないことです。
近い将来、VRが教育のキラーアプリケーションになるでしょう。
VRにAIが組み合わさると、従来の教育のいい点に加え、従来の教育に欠けていた共感力や感情的スキルを育むのに役立つ可能性があります。
さらに5G加わると、世界的な教育問題の見え方が変わります。
今日のAI革命は、一人一人カスタマイズされた学習環境を生み出す力を持っています。
- 「画一的教育」は終わる
- 年10億人の「アンドロイド教師」が生まれる
- 2030年の社会科見学
- 2030年の学校
第9章 医療の未来
医療システムは患者以上に病んでいると言えます。言葉遣いも的外れで、医者にかかる目的は「ヘルスケア」ではなく「シックケア」です。
先手をいつというよりは事後対応です。後衛戦で、非効率で無駄にコストが高く、ときに現実離れしています。
ですが実際には多くの変化が起きています。
6つの変化に注目しましょう。4つはテクノロジーの変化、2つはパラダイムの変化です。
診断:センサー、ネットワーク、AIのコンバージェンスによる大きな変化があります
中盤:ロボティクスや3Dプリンティングによる医学的処置の本質的変化
出口:AI、ゲノミクス、量子コンピューティングによる医薬品の変化
パラダイムの変化は、シックケアからヘルスケアへの変化とマネジメント面の変化です。
モバイルヘルスの時代がやってきて、遺伝情報を読み・書き・編集する時代がやってきます。
伝統的な遺伝子治療とCRISPRによって、たった1文字の遺伝情報を編集することによって1万6,000の疾患を一掃できるようになります。
ロボットも活躍するようになります。今は協働ロボットですが、有望なのは自立型ロボットです。
インパクトの大きいのは小型ロボットの進化です。
3Dプリンティングも手術室に進出しています。
- 娘の難病に挑んだ起業家
- 人体の部品交換
- テック企業が続々参入
- モバイルヘルスの時代がくる
- グーグル、けさの健康状態はどう?
- 遺伝情報を読み、書き、編集する
- CR1SPR×従来型遺伝子治療で1万6000の病を治す
- ロボット外科手術の未来
- AI×3Dプリンティング×ロボットの医療がくる
- 細胞医療
- 新薬開発の未来
第10章 寿命延長の未来
科学者は衰える原因は9つあると考えています。
- ゲノムの不安定性
- テロメアの短縮
- 後成的変化
- タンパク質恒常性の喪失
- 栄養素を認識できなくなる
- ミトコンドリア機能障害
- 細胞の老化
- 幹細胞の枯渇
- 細胞間コミュニケーションの劣化
有望なテクノロジーがいくつかあります
アンチエイジング薬学などです。人間の生存期間を大幅に延ばすことは、できるかどうかから、いつできるかの問題に移っているのです。
- 「老化」は克服できる
- 寿命脱出速度
- ベゾスやティールも出資するアンチエイジング薬学
- カギは「血液」
第11章 保険・金融・不動産の未来
自動車保険を支えているのは人的ミスです。人間が運転席に座らなければ、リスクの90%が消えます。
リスク評価を事業の基盤としている保険業にとっては途方もない変化です。
そして自動運転車が登場すれば、車は所有からサービスで利用するものになり、自動車保険を利用する必要性がなくなります。
保険業は統計学が支配する世界でした。保険会社の役割は伝統的な「発見と修復」から「予測と予防」に変化します。
銀行業と金融業は、エクスポネンシャル・テクノロジーによって、ドルやセントから、ビットやバイトへ置き換わり始めています。
破壊的変化は今後も続くでしょう。
ブロックチェーンにより買い手と売り手以外は全て不要になります。
- 未来社会を俯瞰する
- コーヒー、リスク、保険の起源
- 自動者保険は終わる
- 「保険」の前提が根っこから崩れる
- クラウド保険の登場
- 「予測と予防」の時代になる
- 金融
- グッドマネー
- 送金システムを変えた「エムペサ」
- ブロックチェーン
- AIの侵攻
- クラウド融資/投資/キャッシュレスの未来
- 不動産
- VRとAIで家を買う
- 「立地」という概念が変わる
- 水上都市
第12章 食料の未来
バイオテクノロジーの進歩がアグロテクノロジーと融合し始め、牛を育てる代わりに、幹細胞を育てることでステーキ肉が手に入るようになります。
超えるべきハードルはありますが、倫理的かつ環境にやさしい方法で、世界の食料問題を解決できるようになります。
- 2030年のキッチン
- 食料のムダをなくす
- 食料流通の全ステップが変わる
- 生産量/腐らない/垂直農法
- 牧畜業のムダをなくす
- バイオテックとアグリテックが融合しはじめた
第3部 加速する未来
100年先を視野に入れて、5つの大移動に注目します。
- 経済的な理由による移住
- 気候変動による混乱
- バーチャル世界の探究
- 宇宙の植民地化
- 集合意識(ハイブマインド)のコラボレーション
第13章 脅威と解決策
人類が次の10年で直面する最も重要なリスクは5つあります。
- 水危機
- 生物多様性の喪失
- 異常気象
- 気候変動
- 環境汚染
これらの問題を解決するのに必要なテクノロジーはすでに存在し、コンバージェンスのおかげで今後も改良されていくのは間違いありません。
イノベーションが追いつき、今後必要なのはコラボレーションです。
オートメーションによる失業の危機も、歴史を振り返ると必ずしも事実ではなくなります。
失われる仕事以上の雇用が生まれてきたからです。
エクスポネンシャル・テクノロジーが誕生するたびにインターネットと同じくらいの途方もない機会が生まれます。
- 五つのリスク
- 水危機
- 楽観主義者から見た気候変動
- 発電を変える
- 風力1セント時代/太陽光/コストが劇的に下がる/「タダの資源」をここまで生かせる
- 蓄電を変える
- テスラのギガファクトリー/フロー電池/次世代の蓄電
- 加速するEV開発
- 生物多様性と「生態系サービス」
- ようやくイノベーションが追いついた
- 「自動化」によってはるかに多くの「雇用」が生まれる
- エクスポネンシャル・テクノロジーは雇用にプラス
- テクノロジーは人類をおびやかすか
- 視野 思考のタイムスパンをのばす/予防 先回り対策を打つ/統治 政府をデジタル化する
- 未来を楽観できる三つの理由
第14章 五つの大移動がはじまる
移民は元の住民から雇用を奪うといわれてきましたが、データはその逆の結果を示しています。
移民は雇用を奪うどころか、新たな雇用を生み出す傾向がはるかに高いのです。
視野を10年から100年に広げると、途方もないスケールの移動が行われるのを見ることになります。
- 気候変動により7億人が移住します
- 2050年までに世界人口の66%〜75%が都市に住むようになります
- バーチャルな世界への移動が起きます
- 宇宙への移住が始まります
- ブレイン・コンピュータ・インターフェイスにより個人の意識がクラウドに移ります
- 世界は「人の移動」で進歩する
- 「移民」こそイノベーションの原動力である
- 移民は圧倒的な雇用を生み出す
- これからの100年を予測する
- 気候変動による7億人の移住
- 2050年、世界人口の66〜75%が都市に住む
- バーチャル世界への移住
- 「没入感」が人々をバーチャルの虜にする/VRのカギは「フロー状態」
- 宇宙への移住競争がはじまる
- ジェフ・ベゾス/イーロン・マスク/必要なモノはすべて宇宙にある
- ブレイン・コンピュータ・インターフェースという革命
- あらゆるテクノロジーの究極の交錯点
- 「個人の意識」はクラウドに移行する
- 100年で生物の限界を超える「メタ知能」が生まれる