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「マッキンゼーが予測する未来―近未来のビジネスは、4つの力に支配されている」内容の要約と紹介:リチャード・ドッブス、ジェームズ・マニーカ、ジョナサン・ウーツェル (翻訳)吉良直人

この記事は約11分で読めます。

アメリカで上梓されたのが2015年、日本語版の出版は2017年です。

未来予測の本ですので、年数が過ぎてしまえば、結果との突合せができます。実際にどうなったかのかと比べるのが面白いと思います。

出版後、2019年末からコロナ禍が始まりましたので、様々な前提が崩れていますが、トレンドを知る上で有益な部分は残されています。

本書では破壊的な力を持つ根本的なトレンドがもたらす劇的な変化の中途にあると考えています。

破壊的な変化が起きていることは分かっているものの、その規模の全体像や、結果として起こる2次的、3次的効果の全体像が理解できていません。

本書を読む時期によっては、2次的、3次的効果の全体像が分かりつつある状況になっているかもしれません。

ファクトを交えて描かれておりますので、「ファクトフルネス」と一緒に読むのが良いと思います。

下記の本と一緒に読むと面白いと思います。

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直観力のリセット

4つの破壊的力により、1990年から2010年の間に極度の貧困の中にいた10億人を救い出し、さらに20年間で30億人をグローバル中流階級に引き上げる助けになると考えられます。

一方でこれまで起業を成功に導いてきた多くの前提や傾向、習慣が突然失われる可能性があります。

過去の経験から構築された直観に基づいて意思決定を行ったとすれば、間違えてしまう可能性がかなり高いです。

そのため直観力のリセットが必要となります。

特に見直しが必要となるのは消費・資源・労働力・資本・競合といった意思決定に影響を与える前提です。

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4つの破壊的な力

異次元の都市化のパワー

経済活動とダイナミズムの重心となる場所の移動

移動先は中国のような新興国市場であり、そうした市場の中の都市です。

2010年から2025年までの間に世界のGDPの成長の半分が新興国の440の都市によって生み出されると予測されます。

そうした都市はほとんど名を知られていません。

そして、この変化の背景には都市化があります。

経済史の研究者によると、過去数百年の間、都市住民は農村部住民の1.5〜3倍の生活水準を享受してきました。

都市は規模の経済、労働の専業化、知識の拡散・売買により生産性が向上し、ネットワーク効果によって強化されます。

ここで語られているのは、都市の方が費用対効果が高く、地方への人口の移動は考えにくいということです。

名の知られていない人口400万人を超える440の新しい都市が、急速に成長する経済圏の牽引役になっているのです。

都市の成長は、直線的でなく幾何級数的な伸びを示す特徴があります。都市の人口が倍になるたび、住民一人当たりの所得、生産性、イノベーション性向が15%増加します。

さらに加速する技術進化のスピード

技術の発展がその範囲・規模・経済的インパクトにおいて加速・増大する

技術の事業への適用と技術革新の速度により、企業のライフサイクルが短くなっており、これまで以上に素早い意思決定と経営資源の投入が必要になっています。

そしてこれまでよりもっと多くの技術革新が、もっと速いスピードで登場しようとしています。

破壊的な技術は12ありますが、それぞれは4つのカテゴリーに分けられます。

  1. モノの構成要素の変化
    1. 次世代のゲノム科学
    2. 新素材の開発
  2. 成熟期に達したエネルギー効率
    1. エネルギーの貯蔵
    2. 石油とガスの採掘
    3. 再生可能エネルギー
  3. 人間に奉仕する機械
    1. ロボット工学の進展
    2. 自律的あるいは自律的に近い自動車
    3. 3-Dプリンティング
  4. ITをどう使うのか
    1. 携帯機器によるインターネット
    2. IOT モノのインターネット
    3. クラウド技術
    4. 知識作業のオートメーション化

過去との断絶をもたらすこうした技術の多くの共通点はデジタル化です。

デジタル化は、情報を発見・取引・共有するコストをほぼゼロにしました。

デジタル化の変化は三つにまとめられます。

  1. デジタル化は物理的な物体をバーチャルな品物に変換します
  2. デジタル化により取引に伴う情報のコンテンツを増やして効率的に処理ができるようになります
  3. 様々なオンライン・プラットフォームのおかげで小企業でも大企業と対等に競争できる場が提供されました

消費者の反応も速くなっており、技術の普及スピードが急激に速くなっています。

普及の加速化はイノベーションの加速化も呼びます。

技術的転換点に適用するカギは5つあります

  1. 自社の保有するデジタル資本最大限活用する
  2. デジタルの持つ低い限界コストの活用を考える
  3. 消費者余剰の一部を、消費者に負担させる
  4. 混乱が落ち着くまで待ってはならない
  5. 自社の人材、組織、投資に技術がどう役立つのかを考える

地球規模の高齢化社会の課題に対処する

人口動態の変化

人類の平均年齢が上昇してきており、出生率は低下し、世界人口は老化しているということです。

人口減少は中国に拡大し、すぐにラテンアメリカに広がるでしょう。

人類が誕生して以来初めて人口成長が止まることを意味しています

複数のトレンドが重なり、世界人口はもうすぐです転換点を迎えようとしています。

この点は「ファクトフルネス」でも書かれています。

今後何十年かのうちどこかで、アフリカを除き世界の人口カーブは横ばいになります。

世界中で幅広い年齢層は高齢人口であり、労働人口も高齢化し、政府の社会保障費用が膨らみます。

人口が減り始めている日本は、今後の世界の姿を先行して見てせていると言えます。

そのため老人に対する考え方を変えねばなりません

一方で国が豊かであればあるほど、女性が一生のうちに産む子供の数は少なくなるのが普通です。

移民の受け入れによって出生率低下のトレンドを限定的に逆転できることは示されていますが、長期トレンドを反転する可能性は少ないです。

出生率は広範な地域で低下している一方で世界の平均余命は伸びています。

こうしたトレンドは将来の労働力に深刻な影響を及ぼします。

新たな労働力は減り、年配の人々は今働いている人より長く働くことになるでしょう。

また、平均余命が長くなり、投資収益率が低下すると、高齢者は引退生活に移行する余裕が無くなることを意味します。

社会保障制度や年金制度の確立された国では、制度維持のためのコスト増加に強い警戒感を持つようになっています。

高齢化トレンドに適応する3つのポイント

  1. 従業員の高齢化に真剣に対処する
  2. 高齢化する人口構成を狙い撃ちするマーケティングをする
  3. 高齢者のための製品やサービスがどうあるべきか考える

音速、光速で結び付く世界

流れ(フロー)と呼ばれる貿易・資本・人々・情報を通じて世界が相互に結合する度合いの高まり

貿易と金融のグローバリゼーションを語る上で重要な要素でしたが、世界の貿易システムはさらに複雑化し、複雑かつ繊細、不規則に広がるようになりました。

世界経済はクモの巣状につながっています。

世界的に相互結合することにより、大きなショックが起きると、世界中に瞬時に影響を及ぼしてしまいます。

貿易経路は拡大し、地域間を結ぶ貿易パターンも複雑さを増しました。

金融はグローバル化し、急速な成長も続くでしょう。

人のつながりも世界中で強まっています。国外への旅行や、労働、留学により人の移動は増加の一途を辿っています。

そして近代最大の劇的な変化は、情報が世界を瞬時に飛び回ることになったことです。

デヴィッド・リカードに始まった経済理論と数々の調査から、国家でも都市でも企業でも、つながりから生まれる流れに加わることによって利益を得られることが実証されています。

こうした世界に対応するポイントは4つあります

  1. どこから現れるかわからない新参者に備える
  2. グローバルに、しかもデジタルなエコシステムを築く
  3. グローバルな結合と流れによる競争優位を活用する
  4. 相互に連結した世界で、敏捷である

直観力をリセットするための戦略思考

4つの破壊的な大きな力に対して、どのように立ち向かうことが可能であり、立ち向かうべきかを6つの章に分けて説明します。

次に来る30億人

何世紀もの間、世界の人口の1%以下の人を除き、その日暮らしの人々が圧倒的でした。

1990年になっても、開発途上国人口の43%は、1日あたりの所得が1ドル25セントという極貧の生活であり、地球上の5人に1人しか、1日10ドル以上の所得を得ていませんでした。

1日10ドルの水準が世帯収入が消費者層に達する境界値です。

過去20年間の間の工業化や技術革新、都市化などによって7億人が貧困層から脱出し、12億人が新しい消費者層になりました。

2025年までに消費者層に18億人が加わり、合計42億人になると推計されます。

グローバルの消費は人口1千万人以上のメガシティだけでなく、400あまりのミドルウェイ級の都市が生み出すものが大きく、2025年までにアメリカ経済全体に匹敵するGDPを生み出すと考えられています。

逆回転が始まった

何億人もの人々を貧困から脱出させてきた一方で高額な食費は貧困家庭に不当なほどの打撃を与えています。

資源価格の上昇は食料にとどまらず、影響も家計だけにとどまりません。

2000年から2003年に、農産物、金属、エネルギーはほとんど2倍になりました。

このことは企業業績に下向きの影響を与えました。

20世紀の間にほぼ半減した必須需要財の実質価格のトレンドが終焉を迎えました。

理由の大半は需要の急激な増加と、原油や水など重要資源の供給を増やすのが難しいからです。

価格上昇への4大圧力は、どれ一つとして一時的・短命である要素がありません。

4大圧力

  • 世界の中流階級消費者の人口増大によ急激な需要の増加
  • 飛躍的に伸びる需要に追いつくのに必要な資源が足りず、世界各地で天然資源の埋蔵量が急激に枯渇してきている
  • グローバルな相互連結が緊密になり、あるタイプの資源の需要が増えると、別の商品の供給に深刻な負荷の増大につながることがある
  • 商品と資源市場に与える外部要因が高まっている

こうした新しい強力なトレンドには、資源の生産・利用・管理に関する課題を問題ではなく、機会と捉え直すことが必要です。

資本コストの下がり続ける時代の終わり

30年間下がり続けた金利のおかげで資本コストは今も安いですが、大きな変化が進行しています。

これまでのトレンドは続かず、変曲点に到達しているのは明白なのですが、どちらの方向に変わるのか明確ではありません。

マクロ経済のファンダメンタルズに基づく伝統的な見方によれば、需要の上昇と供給を減らす圧力は、これまでよりも入手困難で、高価な資本の時代が到来します。

2つのシナリオが考えられます。

  • 資本コストが上昇する
  • 金利を押し下げるシステムが確立される

このいずれにも対処できる必要があります。

  • 資本生産性に関して二股かける
  • 新しい資本供給源を追求する
  • 新しいビジネスの機会を活用する
  • 柔軟性を通じてリスクに対応する
  • 思考原則を変える

資本コストを取り巻く著しい変化は、短期的な道筋がどこに向かうか不確実なままです。

技術革新が生み出す新たな労働市場のミスマッチ

雇用無き経済回復のパターンは過去30年間にアメリカ以外の先進国でも見られました。

いずれも職に就けない経済成長と苦闘しています。

若年層失業率は高く、熟練度の低い労働者が労働力市場の変化の矛先に直面しています。

労働力を代替する情報機器による新技術を装備したこと、中国やインドの労働力を活用する手段が新たに可能になり、好況でも不況でも生産性を改善できるようになったためです。

これにより労働市場は企業ほどには柔軟性が高くないことが証明されました。

低賃金の手作業による職種と高賃金・高スキルの職種が求められ、中間にいた労働者の職が蝕まれたのです。

求められるスキルと持っているスキルとのギャップはますますひどくなりそうです。

スキルギャップがどこにでもある時代になろうとしているのです。

複雑な人材問題に対処する4つのポイント

  • 新しい人材源
  • 技術を考え直す
  • 職務を分解し、互いに訓練し合うようにする
  • 教育にもっと積極的に関わる

新たな競合の出現と競争のルールの変化

地歩を確立している大企業と、小規模で敏捷な新興企業との間の勢力バランスも技術が変えてしまいます。

これは確立されていた企業の寿命を短くしています。

新興市場から突如としてライバルが現れるようになり、技術革新により大企業であることが必ずしも強みではなくなってきています。

新規の競合に不意打ちを食らうと、大企業素早い方向転換ができません。

新種のライバルに立ち向かうには

  • 新たなエコシステムを理解してモニタリングする
  • 内なる力を引き出す
  • 提携関係を築く
  • 世界中の才能を引き込む
  • 惰性に陥ることを避ける

社会と政府にとっての戦略的課題

政治家も経営者と同じく直観力をリセットしなければなりません。

グローバルな競争と技術の変化により、創造的破壊が労働市場の適応能力を超え、危機的なスキルギャップが生まれています。

人口は高齢化し、福祉の維持が、資本コストを押し上げています。

生産性の向上は公共部門で未達成であり、所得格差の拡大は国民の反発を強めています。

こうした様々な課題が政治家にのしかかってきています。

人口の高齢化は、いずれ公共支出が負担しきれなくなる爆弾を抱えることになります。

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