全ての知識と知恵はSDGs(Sustainable Development Goals)のために。

「ワーク・シフト」内容の要約と紹介:リンダ・グラットン

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概要

2012年8月5日第1刷発行

リンダ・グラットン氏はロンドンビジネススクール教授。

経営組織論が専門で、組織におけるイノベーションを促進するホットスポットムーブメントの創始者。

英エコノミスト誌の「仕事の未来を予測する識者トップ200人」にも名を連ねる。

また、2年に一度選ばれる経営思想家のランキングであるThinkers 50にも名を連ねる。

本書では未来を描きだし、そこから逆算する形で、今のうちに備えておかなければならないスキルや、生き方の変更=シフトを提起している。

描かれる世界は、現在の2013年からわずか12年後の2025年。

12年前と言えば「ひと昔前」という表現をするが、この場合「ひと未来先」とでもいうべき近未来である。

現在の2013年から「ひと昔前」の2001年。

この12年で変わった最たるものは情報技術だろう。とんでもない量の情報が毎日のように世界でつくられ、蓄積されている。わずかな日数で、過去数百年かかって蓄積された分に相当する情報量が生み出される世界となった。

同じく、大きく変わったものは社会階層だろう。現在は社会階層がかつてないほど固定化してしまい、流動化、柔軟性がなくなっている。

流動性、柔軟性が失われた社会構成は、下方向へのベクトルだけが強く働くようになった。リーマンショックによって経済が想像以上に不安定なものであることがわかったが、これ以降、格差は急速に拡大していき、下方向のベクトルはさらに強くなっている。

技術の進歩により、そしてそれゆえの新興国の発展により、先進国の中間層の職が失われようとしている。世界は二極化しつつある。それがどのくらいのスピードで世界を席巻するのかは、不明である。クラウス・シュワブが「第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来」で同様の指摘をしている。

あらゆる要素が、全世界的にパラダイムシフトを要求する時代になった。わずか12年でだ。世界は否応なくく変化せざるを得なくなっている。だが、世界の進む方向は不透明である。

本書で書かれている現実は、奇しくもノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ教授の「世界の99%を貧困にする経済」で書かれている現実と未来図に似ている。現在の識者が観る現実と、そこから見えてくる未来予想図は、よく似ているのかもしれない。

本書で書かれている最も重要なメッセージは、「これから10年の未来は、過去の延長で考えていてはいけない」ということである。

これからの未来は、過去にないスピードで変化していくだろう、そして、今までの過去の経験が役に立たないほどの変化をもたらす可能性があることを覚悟した方がよいのかもしれない。

不透明な時代に、いかに先を読むか。そのヒントが書かれている。

世界的にベストセラーになっているという事実は、世界的に同じような認識を持つ人間が増えているということであろう。

そして、同じような認識を持つ人間が増えているということは、想像以上に世界は小さくなっているということなのか。

下記の本と一緒に読むと面白いと思います。

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第1部 なにが働き方の未来を変えるのか?

革命のスピード

イギリスに産業革命が起き、それが真にイギリス人の仕事のあり方に「シフト」を起こしたのは、19世紀の中盤から後半の第二次産業革命のときだった。

この時期、エンジニア階層が誕生し、イノベーション推進の文化が形成され、蒸気機関によるエネルギーの普及の結果、人々の働き方が抜本的に変わった。

その後半世紀で、エンジニアが経済活動の指揮者となり、職人の地位が低下した。

今後数十年の間に、仕事の世界でこれと正反対の動きが起きる可能性がある。

ピラミッド型の組織と交換可能なゼネラリスト的技能に代わって、水平型のコラボレーションと磨き上げられたスペシャリスト的技能が復活しようとしている。

はっきり言えるのは、途方もなく大きな規模創造的・革新的変化のプロセスが始まったばかりであり、大転換の結果、世界中の人々の毎日の生活が根本から変わる。

昔と異なり、過去の延長線上に未来を思い描くことは不可能になっている。

父の生涯から将来どのような働き方をするのかを予測することはできない。変わらないものもあるが、難しいのは、なにが変わり、なにが変わらないか

これから起きようとしている変化を突き動かすのは、5つの要因である

  1. テクノロジーの進化
  2. グローバル化の進展
  3. 人口構成の変化と長寿化
  4. 社会の変化
  5. エネルギー・環境問題の深刻化

5つの要因から導き出される未来は「漫然と迎える未来」「主体的に築く未来」に大別される

好ましい進路を選ぶために、

  • 自分と周囲の人に特に影響を及ぼしそうなのは、どの出来事やトレンドか?
  • 自分の職業人生に影響を及ぼす要素は何か、その要素にどういう影響を受けるのか?
  • 未来に押しつぶされないキャリアを築くため、この先5年間に何をすべきなのか?

を考えていく

「未来に押しつぶされないキャリアを築く」ために3つの面で常識をシフトしなければならない

  1. ゼネラリスト的な技能を尊ぶ常識を問い直す
  2. 職業生活とキャリアを成功させる土台が個人主義と競争原理であるという常識を問い直す
  3. どういう職業人生が幸せかという常識を問い直す

働き方を変える5つの要因と32の現象

|要因1| テクノロジーの進化

  1. テクノロジーが飛躍的に発展する
  2. 世界の50億人がインターネットで結ばれる ⇒ 都市圏だけでなく、農村部でも進むため、これまで存在しなかったグローバルな意識が形成される
  3. 地球上のいたるところで「クラウド」を利用できるようになる
  4. 生産性が向上し続ける ⇒テクノロジーをけん引役に、経済の生産性が向上し続けてきた、コストのほとんどかからない高度なコミュニケーション技術に支えられ、このトレンドは続くだろう
  5. 「ソーシャルな」参加が活発になる
  6. 知識のデジタル化が進む
  7. メガ企業とミニ起業家が台頭する
  8. バーチャル空間で働き、「アバター」を利用することが当たり前になる
  9. 「人工知能アシスタント」が普及する
  10. テクノロジーが人間の労働者にとって代わる

「al+」、それはクラウド上の人工知能アバター

ワークシフトの中で書かれていたアバターによる仕事。
あまり現実的でないと思っていたが、どうやら認識間違えであるようだ。
こうした世界が現実化するのは、本当のことなのかもしれない。

|要因2| グローバル化の進展

  1. 24時間・週7日休まないグローバルな世界が出現した
  2. 新興国が台頭した
  3. 中国とインドの経済が目覚ましく成長した
  4. 倹約型イノベーションの道が開けた ⇒途上国でコストをかけずにイノベーションが成し遂げられ、成果が先進国に輸出され始めている
  5. 新たな人材輩出大国が登場しつつある ⇒中国とインドが世界で指折りの人材輩出大国になりつつある
  6. 世界中で都市化が進行する ⇒2008年以降、世界の総人口のうち都市に住む人の数が、それ以外の地域に住む人の数を上回り、都市への流入人口は今後さらに加速していく
  7. バブルの形成と崩壊が繰り返される
  8. 世界の様々な地域に貧困層が出現する ⇒先進国も含めてあらゆる地域に貧困層が出現する ⇒ 高度な専門技能を持たず、高齢化が進む都市住民向けサービスのニーズにこたえる技能と意志もない人たちが下層階級になる

|要因3| 人口構成の変化と長寿化

  1. Y世代の影響力が拡大する
  2. 寿命が長くなる
  3. ベビーブーム世代の一部が貧しい老後を迎える
  4. 国境を越えた移住が活発になる

|要因4| 社会の変化

  1. 家族の在り方が変わる ⇒世界中で家族の規模が小さくなり、伝統的な家族の在り方があたりまえでなくなる
  2. 自分を見つめなおす人が増える
  3. 女性の力が強くなる
  4. バランス重視の生き方を選ぶ男性が増える
  5. 大企業や政府に対する不信感が強まる
  6. 幸福感が弱まる ⇒一定レベルに生活水準が達すると、それ以上に生活水準が向上しても、幸福感が弱まっていく傾向がある
  7. 余暇時間が増える

|要因5| エネルギー・環境問題の深刻化

  1. エネルギー価格が上昇する
  2. 環境上の惨事が原因で住居を追われる人が現れる
  3. 持続可能性を重んじる文化が形成され始める

なお、本書では多くの箇所で「~世代」の記述が出てくる。2010年時点での欧米の世代をベースにしているので、掲載しておく。

  • トラディションアリスト世代(1928~45頃生まれ)
  • ベビーブーム世代(1945~64頃生まれ)
  • X世代(1965~79頃生まれ)
  • Y世代(1980~95頃生まれ)
  • Z世代(1995~

第2部 「漫然と迎える未来」の暗い現実

いつも時間に追われ続ける未来

1990年代以降、仕事の世界で時間の細切れ化に拍車がかかった。テクノロジーの進化とグローバル化の進展により、時間はますます細切れになった。こうした傾向はますますエスカレートするだろう

時間に追われるようになると、失われるのは、物事に集中して取り組む時間である。技能を磨く必要があるにもかかわらず、その時間が持てない。

技能を磨くために長期間集中して打ち込む必要があるが、10,000時間を費やせるかが試金石であることが分かっている。1日3時間で、10年間だ。

観察と学習についても同じことが言える。技能を高めるために、達人たちの仕事ぶりを観察し、自分との細かな違いを知ることが大切である。

つまり「暗黙知」が多分に含まれているからである。高度な専門技能を身につけることは、<第一のシフト>の核をなす要素である

どうして時間に追われるようになったのか?

  1. 情報通信技術の飛躍的発展(土台をなすのは、コンピュータの性能の目覚ましい向上である。携帯端末の進化もある。)
  2. クラウドの進化
  3. バーチャル空間とアバター
  4. 人工知能アシスタントの普及

これらにより、1日24時間週7日休みのない世界が誕生する

時間に追われないようにするには

三つのシフトを成し遂げることが効果的

  1. 専門技能の習熟に土台を置くキャリアを意識的に築くこと(高度な専門技能は10,000時間を費やしてはじめて身につくという説もある)
  2. 時間に追われる生活を脱却しても必ずしも孤独を味わうわけではないことを理解する(目指すべきは、自分を中心に据え、他の人との強いかかわりを保った働き方を見出すこと)
  3. 消費をひたすら追求する人生を脱却し、情熱的になにかを生み出す人生に転換すること(問われるのはどういう職業を選ぶのか、そしてその覚悟ができているのかという点だ)

孤独にさいなまれる未来

2025年の世界では、他の人と直接対面して接する機会が減る。人はほかの人たちとの関係に強く影響を受ける。

最も幸福感が高いのは、最も裕福な人たちでもなければ、最も大きな業績を成し遂げた人たちでもなかった。最も強い関連性が一貫して認められたのは、親しい友達がどの程度いるのかという点だった。

また、家族の在り方も変わっているかもしれない。

家族や親せきは遠く離れた土地にしかおらず、仕事の同僚や仲間もそばいいない、ほかの人間との接触がほとんどない孤独な生活がまっている

孤独にさいなまれる未来を生む要因

  • コミュニティの結びつきの弱い都会に住む結果として孤独が生み出される
  • 家族の誰かが遠くに移住しており、家族の結びつきが弱まり、孤独を和らげる重要な要素が失われる
  • エネルギー価格の上昇により、通勤や出張をして人に会うのではなく、バーチャルでコミュニケーションをとるようになる
  • 深いレベルの変化としては、企業や政府への信頼をなくしている

1.都市化の進行

未来では都市化が爆発的に拡大する

都市生活者の割合は2010年、多くの先進国では75%以上が都市で生活しており、このペースが減速すると判断すべき材料はない

【感想】

ちょっと前の、これからは地方の時代というのは、明らかな幻想ということである

むしろ、日本においては、限界集落があらゆるところに誕生していく可能性があり、地方自治体は、いかにして人里を自然へ回帰させるか、つまりは「店じまい」をするかを考えなければならない時代が来る、ということである

人口が都市部に集中していったい何が悪い?

人口が都市部に集中していったい何が悪い?
日本の人口分布が変容を続けている。2月初旬に総務省が発表した2014年の人口移動報告(住民基本台帳に基づくデータ、外国人は除外)によると、東京をはじめ神奈川、埼玉、千葉の首都圏3県と、愛知、福岡、宮城の合…

都市への一極集中は何が悪いのだろうかというのは、素朴な疑問である。
学者でも同じように思っている人がいるらしい。

日本の人口分布が変容を続けている。2月初旬に総務省が発表した2014年の人口移動報告(住民基本台帳に基づくデータ、外国人は除外)によると、東京をはじめ神奈川、埼玉、千葉の首都圏3県と、愛知、福岡、宮城の合計7都県を除き、すべての道府県から人口が流出していることがわかった。

人口の一極集中が進むことを危惧する報道が相次いでいるが、夏野剛氏は「本当に、そんなに問題なのだろうか」と疑問を投げかける。

2.移住の増加

高いレベルの教育を受けたり、いい仕事に就くため、戦乱や自然災害から逃れるために移住する人が増える

3.エネルギー価格の上昇

エネルギー価格の上昇により、自動車や飛行機で遠くの友達や家族に会いに行き、孤独を和らげることが難しくなっていく。

今後、化石燃料はますます利用しづらくなる

埋蔵量の問題もあるが、中国やインドなどの新興国が経済発展のプロセスの中で最もエネルギー消費量の多い段階に達することであり、かつ、両国とも莫大な人口を抱えている

4.家族の在り方の変化

昔に比べて家族の規模が小さくなっている

5.大企業や政府に対する不信感

6.幸福感の減退

7.余暇時間の増加

余暇を受動的なテレビを見て過ごすことが多くなる

どうすればよいか<第2のシフト>

三つのタイプの人的ネットワークを積極的に築いていく

  1. ポッセ(同じ志を持つ仲間)=長期にわたり互恵的な関係を築ける少人数のグループ
  2. ビッグアイデア・クラウド(大きなアイデアの源となる群衆)=多様性に富んだ大人数のネットワーク
  3. 自己再生のコミュニティ=頻繁に会い、一緒に笑い、食事をすることでリラックス、リフレッシュできる人たち

新しい貧困層が生まれる

これまではどこで生まれたかによって、経済的にどのくらい成功できるかがおおむね決まっていた。欧米に生まれていれば、最初からきわめて有利な立場にあった。

これからは、どこで生まれたかではなく、才能とやる気と人脈が経済的運命の決定要因になる。聡明な頭脳と強い意欲のかけている人は下層階級の一因となる。

勝者総取りの社会

1980年アメリカのCEOの平均年収は、従業員の平均年収の42倍だった。2000年には531倍になった。

このまま拡大すれば、勝者総取りの社会が出現する

【メモ】

ジョセフ・スティグリッツ教授の「世界の99%を貧困にする経済」ではまさにこの世界が描かれている。

格差が拡大すると、社会不安が増大する可能性が非常に高まる。格差が大きくなるほど、人は他人を信頼しなくなる傾向がある。また、格差が広がれば、人々の不安が強まる可能性も高まる。

2025年の人々は、自分の社会的地位に不安を感じているので、謙譲の美徳を実践するより、自己アピールに余念がない。

ナルシズムが蔓延するようになる。

繁栄から締め出される要因

先進国でも経済的繁栄から締め出される人が珍しくなくなる

  1. バブルの形成と崩壊が繰り返され、多くの人のたくわえが失われていく
  2. テクノロジーによる雇用喪失
  3. 新興国の台頭
  4. 新しいグローバルな貧困層の出現

引く手あまたの人が一部の地域に引き寄せられる反面、そうでない人々は経済成長から取り残された土地に縛れらる

デコボコな世界が出来上がる

そこではクリエイティブ・クラスター(創造的人材の集積地)、巨大生産拠点、メガシティ、地方部の4つのタイプに分かれる

しかしメガシティが生まれると、周辺地域は都市と結びつきを失い、スラム化していく

第4のタイプの地域は、広大な地方部と遠隔地である

人口密度がきわめて低く、経済活動の集積がほとんどなく、グローバル経済との結びつきが非常に弱い地域である

この地域は、テクノロジーをどの程度利用できるかによって、どのような経済的境遇に置かれるかが決まる

ベビーブーム世代の貧しい老後

2025年までに、欧米、日本ではベビーブーム世代の大半が一線を退くが、この世代以降は、年金だけでは老後の生活を支えられない人が増えるだろう

現在の企業年金の仕組みが設計された1950年代のシナリオは崩れてしまっている

将来引退生活に入ったベビーブーム世代と、その老後を経済面で支える羽目になるX世代・Y世代との間に、深刻な摩擦が生まれるという予測もある

第3部 「主体的に築く未来」の明るい日々

第2部 「漫然と迎える未来」では5つの要因の最も暗い部分が現実になった場合を想定している。

5つの要因を検討すると、もっと明るいシナリオが実現する可能性がある。

コ・クリエーションの未来

世界のいたるところで協力しながら問題解決に取り組む状況が生まれる。

5つの要因が生み出す数々の課題を解決するために、昔とは比較にならないほど高度なイノベーションと創造性が要求される。

課題の難易度だけでなく、イノベーションの性格も変わる。

コラボレーション的・ソーシャル的な性格がきわめて強くなり、多くの人の努力が積み重なって実現するものになる。

イノベーションと創造が「マス」型の活動に変わる。

「思考の余剰」を手にした人々が多くの時間を使い、互いの専門技能とアイデアを持ち寄って、大きな課題を成し遂げる時代がやってきている。

1990年の当時。

ベビーブーム世代が社会の主役に踊りだそうとしている。

この世代は人口が多いので、他人と競争することが当たり前と思って育ってきており、消費することを習慣づけられて育っている。

この世代の志向や希望が仕事の在り方を形作っていった。

この世代のマネジメント手法は、アメとムチの原理で管理するというものだった。

だが、権威主義的なマネジメント哲学(=X理論)は人間的なマネジメント哲学(=Y理論)よりも効果が乏しい

だから、このベビーブーム世代にとって、コ・クリエーションを実践するためにほかの人と手を携えることは、テクノロジーの面で難しかっただけでなく、そもそも縁遠い考え方だった

一方で、2025年の世界。

多様アイデアや視点が組み合わさったコ・クリエーションの世界

単純な足し算以上の効果が生まれる。これはベイズ統計学の考え方によって想定される通りの結果である。

ひとことでいえばダイバーシティ(=多様性)はモノカルチャー(=単一文化)を凌駕する。

この時、テクノロジーの進化によって50億人の人々がつながる世界太生み出されている。

大勢の人々が結びつくことによって、集積効果を生み出し、専門家より正しい判断を下せる「賢い群衆」が誕生する。

古いヒエラルキーが崩れ始める。

対等の関係の人間同士が協力して仕事を進めるケースが増える。

アメリカの物理学者フィリップ・アンダーソンの有名な言葉「量は質の変化を生み出す」

50億人の結びつきが、質の変化を生み出していく

積極的に社会と関わる未来

「グローバル思考」の拡大は、新しいトレンドの考え方である

1990年。国籍や経験、ものの考え方が似通った人たちと一緒に人生のほとんどを過ごす人が多数派だった。

パソコンを持っている人は少なく、それ以上にインターネットを利用する人が少なかった。

インターネットのおかげで世界の人々がお互いを深く理解できるようになった側面がある。

ようするにグローバル思考が生まれたのである

そして、共感の世界が誕生する

共感の精神に目覚めて、社会貢献のために自分の時間をささげようとする人が何百万人も現れる。

こうした人たちの特徴は、社会活動の比重が高まる結果、仕事、社会奉仕、育児、地域活動など生活の要素のバランスが取れていることである。

自分の選択、その選択がもたらす結果を真剣に考える人々が増える。その結果、生活水準とライフスタイルでいくつかの代償を受け入れなくてはいけないかもしれない。

どういう要素で人生を優先さたいかは、人によって違う

職業生活に何を望み、それを実現するために、どのような代償を覚悟するのか?

未来に押しつぶされない職業生活を築くための第三のシフトを行うために第一歩である。

ミニ起業家が活躍する未来

2025年には世界中で何十億人ものミニ起業家が働いている。

他のミニ起業家とパートナー関係を結び、共存共栄していく「エコシステム(生態系)」を築いていくようになる。

特定の大企業ではなく、こうしたミニ起業家たちのエコシステムが市場の方向性を左右するようになる

ミニ起業家たちは自分が夢中になれる対象を仕事にしている

テクノロジーの進化によって、生産性が向上し、仕事の関係も垂直の関係ではなく水平の関係が築かれていくようになる。

(例として、アプリ開発が取り上げられている。実際に、2010年代においても、こうした人は生まれている。「プログラムもできない僕はこうしてアプリで月に1000万円稼いだ:チャド・ムレタ (二見書房)」)

テクノロジーの進化だけでなく、グローバル化の進展、長寿化は様々な面で職業生活に明るい影響を与える可能性がある。

ミニ起業家として働いていたとしても、大勢のミニ起業家と結びついて働いている。

問いかけ

1.大きな企業の中心で働きたいのか、それとも企業に属さずに自分でビジネスを行いたいのか

会社に雇われない働き方を望むのであれば、<第一のシフト>と<第二のシフト>を実践し、専門技能を磨き、同時に、他の人と連携してイノベーションを推し進める能力を身につけることが不可欠だ

2.何歳まで働きたいのか

70歳代まで働きたいのであれば、自分のエネルギーをどのように割り振るかが重要になる

3.どこで暮らしたいのか

グローバル化が進めば、生活する土地の選択肢は大きく広がる

第4部 働き方を<シフト>する

仕事の世界で必要な三種類の資本

1.知的資本

知識と知的思考力の事である

<第一のシフト>では、知的資本を強化することを目的とする

昔は幅広い分野の知識と技能を持つ人材が評価されたが、そういう状況は変わると考えらえる

2.人間関係資本

人的ネットワークの強さと幅広さ

孤独に競争するのではなく、他の人とつながりあってイノベーションを成し遂げていく

3.情緒的資本

自分自身について理解し、自分の行う選択について深く考える能力

加えて、勇気ある行動をとるために欠かせない強靭な精神をはぐくむ能力

第一のシフト ゼネラリストから連続スペシャリストへ

専門技能の連続的習得 … ニーズの高まりそうなジャンルと職業を選び、高度な専門知識と技能を身につける。必要に応じて、他の分野の専門知識と技能の習得を続ける

セルフマーケティング … 自分の能力を相手に納得させる材料を確立する

リスクを抑えられるという利点があったゼネラリストの存在意義は薄まっている

ゼネラリストと会社の間には、その会社でしか通用しない技能や知識に磨きをかけるのと引き換えに、終身雇用を保証するという契約があったため、会社の外で役に立つ高度な専門技能や専門知識を持っていない管理職がいる

たとえば、フォードの幹部がいきなり菓子メーカーに転職しても、幹部職の役割は務まらない可能性が高い

この旧来の終身雇用の契約が崩れ始めた

一社限定の知識や人脈と広く浅い技能しか持っていないゼネラリストは大した役には立たない

幹部レベルの管理職だけでなく、現場管理職、情報の収集、報告書の作成、方針の提言などを仕事にしてきた人たちも同様である

連続スペシャリストへの道

1.技能がほかの技能より高い価値を持つのはどういう場合なのかを考える。
2.未来の世界で具体的にどういう技能が価値を持つかを予測する。

5つの要因に関する知識をもとに根拠のある推測をする

3.未来に価値を持ちそうな技能を念頭に、自分の好きなことを職業に選ぶ
4.その分野での専門技能に徹底的に磨きをかける
5.習熟した後も、移行と脱皮を繰り返し、他の分野に転身する覚悟を持ち続ける

高い価値を持つ専門技能の三条件

  1. 技能が価値を生み出すことが広く理解されている
  2. 技能の持ち主が少なく、技能に対する需要が供給を上回っている
  3. 技能がほかの人に模倣されにくく、機械によっても代用されにくい

未来に押しつぶされないキャリアと専門技能

時代を超えて常に価値のあるキャリア以外に、今後価値が高まりそうなキャリアの道筋

  1. 草の根の市民運動家
  2. 社会起業家 … 経済学者のムハマド・ユヌスのマイクロファイナンス機関、グラミン銀行や、ブレーク・マイコスキーのトムズシューズ
  3. ミニ起業家 … iPhoneのアプリを開発している大勢の独立事業者

以上の三つのキャリアに加え、未来の世界で価値が高まり、希少になり、模倣されにくいと思われる専門技能がある

  1. 生命科学・健康関連
  2. 再生可能エネルギー関連
  3. 創造性・イノベーション庵連
  4. コーチング・ケア関連

経済学者のロバート・ライシュは「C」で始まる5つの職種に分類している

  • コンピューティング Computing
  • ケアリング Caring
  • ケータリング Catering
  • コンサルティング Consulting
  • コーチング Coaching

サービス関連の新しい職種が登場するのは、私たちの働き方と生活の変化が生む必然の結果である

自分を見える化する

  1. 自分の仕事に自分の刻印を押すなり、著名を書き込むなりし、自分の仕事がだれの目にもわかるようにする
  2. 専門職にならってギルド(同業者組合)やそれに類する組織をつくること
  3. 活力を失わないために、様々な要素を取り込んでキャリアのモザイクを描き、教会のカリヨン・ツリー(組み鐘のタワー)型のキャリアを実践すること

3.カリヨン・ツリー型のキャリアとは

今後主流になっていくのは、いくつもの小さな釣鐘が重なって職業人生を形作る「カリヨン・ツリー型」のキャリアである

精力的に仕事に打ち込む期間と、長期休業して学業やボランティア活動に専念したりして、ジグザグ模様を描きながら仕事や技能を高めていく

従来は、20歳前後で企業に入社し、30代前半に中間管理職に昇進、その後順調に昇進し、50歳代でエネルギーと収入が最高潮に達する

60歳のある日に退職し、その瞬間にすべてが終わるという、伝統的なキャリアのカーブ

専門技能の習得・向上に時間を割く人も増えている

対面式の教育とオンライン教育を併用すると、対面式の教育だけを受けるより、学習が進み学習効果の定着率も高い

このブレンド型の学習方法が最もうまくいく

第二のシフト 孤独な競争から協力して起こすイノベーションへ

未来に必要となる三種類の人的ネットワーク

  1. ポッセ(同じ志を持つ仲間) … 比較的少人数のブレーン集団
  2. ビッグアイデア・クラウド(大きなアイデアの源となる群衆)
  3. 自己再生のコミュニティ … 情緒面の支えと安らぎを与えてくれる人間関係

ポッセ

比較的少人数のグループで、声をかければすぐに力になってくれる面々の集まりでなくてはならない

専門技能や知識がある程度重なり合っている必要がある

専門分野が近ければ、互いの能力を十分に評価し、能力を生かしやすい

メンバーは以前にいっしょに活動したことがあり、あなたを信頼している人でなければならない

ビッグアイデア・クラウド

自分の人的ネットワークの外縁部にいる人たちで構成されなくてはならない

友達の友達がそれに該当する場合が多い

自分とは異なるタイプの人間とつながりを持つことが大切

メンバーの人数が多いほうがいい

アメリカの社会学者マーク・グラノヴェッターの職探しの研究に見られる「弱い絆」

自己再生のコミュニティ

温かみのある人間的な絆は、これまでより意識的にはぐくまないと手に入らなくなる

第三のシフト 大量消費から情熱を傾けられる経験へ

最も難しいのがこの第三のシフト。やりがいと情熱を感じられ、前向きで充実した経験を味わえる職業生活への転換を成し遂げ、所得と消費を中核に据える職業人生からの脱却。

このシフトが重要なのは、仕事の機械化が進んできた歴史に大きな転換点が訪れようとしているからである。

伝統的なキャリアと仕事の形態が崩れ、もっと大きな自由と機会を手に入れる可能性を生み出せる新しい働きかたが広がり始めている

仕事に関して個人の選択の余地が大きく広がっていくのだが、漫然としていては新たなチャンスは生かせない

選択肢が広がることの恩恵に浴するためには、自分がどういう人間でありたいのか、恩恵と引き換えに何をあきらめる覚悟があるのかを、厳しく選択しなければならない

仕事の世界の古い約束事

働くのは、給料を受け取るためであり、その給料を使ってものを消費し、そうすることで幸せを感じる、というのが古い約束事

この古い約束事が崩れ始めている

  • 人口構成の変化の要因
  • 先進国の経済に倹約の時代が訪れ、金儲けと消費だけが仕事の目的であってはあらないという考え方が生まれつつある
  • テクノロジーの進化とともに自分の本当の望み通りに行動するチャンスが広がり始めている

「お金を稼ぐために働く」という考え方を、そもそも問い直す必要がある

お金があれば幸せが増すのではないかという考えがあるかもしれないが、お金と消費には、経済学でいうところの「限界効用の逓減」が当てはまる

つまり、基礎的なニーズが満たされれば、それ以上に多くのお金を手にしても、比例して幸福感が高まるとは限らない

物質主義的思考が強い人は、受け身的な行動をして時間を過ごす傾向が強まる

たとえば、長い時間テレビを見て過ごす傾向がある

物質主義的思考が弱い人は、社交をしたり、将来の計画を立てたりすることに時間を費やす場合が多い

第三のシフトでは、古い約束事を次のように書き換えることが可能になりつつある

「働くのは、充実した経験をするため、それが幸せの土台だ」

目次

プロローグ 働き方の未来は今日始まる

序章 働き方の未来を予測する

第1部 なにが働き方の未来を変えるのか?

第1章 未来を形づくる五つの要因
要因1 テクノロジーの進化
要因2 グローバル化の進展
要因3 人口構成の変化と長寿化
要因4 社会の変化
要因5 エネルギー・環境問題の深刻化
自分自身の未来予想図を描く

第2部 「漫然と迎える未来」の暗い現実

第2章 いつも時間に追われ続ける未来―三分刻みの世界がやって来る
(ジルのストーリー)二〇二五年、ロンドン
(まだ時間が細切れでなかった時代)一九九〇年の一日
時間に追われることの弊害
時間に追われる未来を生む要因
時間に追われない未来をつくる

第3章 孤独にさいなまれる未来―人とのつながりが断ち切られる
(ローハンのストーリー)二〇二五年、ムンバイ
(アモンのストーリー)二〇二五年、カイロ
(人とのつながりがあった時代)一九九〇年の一日
同僚との気軽な関係の消滅
家族との関わりの希薄化
家族と家庭はどう変わってきたか?
孤独にさいなまれる未来を生む要因

第4章 繁栄から締め出される未来―新しい貧困層が生まれる
(ブリアナのストーリー)二〇二五年、オハイオ州
(アンドレのストーリー)二〇二五年、リエージュ
豊かさの新しい決定要因
「勝者総取り」社会で広がる格差
劣等感と恥の意識が強まる
ナルシシズムと自己アピールの時代
繁栄から締め出される未来を生む要因
暗い未来を抜け出す道はあるのか?

第3部 「主体的に築く未来」の明るい日々

第5章 コ・クリエーションの未来―みんなの力で大きな仕事をやり遂げる
(ミゲルのストーリー)二〇二五年、リオデジャネイロ
(コ・クリエーションが活発化する前の時代)一九九〇年の一日
多様性はイノベーションの触媒
コ・クリエーションの未来を生み出す要因

第6章 積極的に社会と関わる未来―共感とバランスのある人生を送る
(ジョンとスーザンのストーリー)二〇二五年、チッタゴン
(共感の世界が訪れる前の時代)一九九〇年の世界
バランスの取れた生活を実践する
積極的に社会と関わる未来を生み出す要因

第7章 ミニ起業家が活躍する未来―創造的な人生を切り開く
(シュイ・リーのストーリー)二〇二五年、河南省鄭州
ミニ起業家たちの「生態系」
ミニ起業家と創造性の未来を生み出す要因

第4部 働き方を<シフト>する

第8章 第一のシフト―ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
なぜ、「広く浅く」ではだめなのか?
連続スペシャリストへの道
高い価値をもつ専門技能の三条件
未来に押しつぶされないキャリアと専門技能
くまでも「好きな仕事」を選ぶ
度な専門技能を身につける方法
移動と脱皮で専門分野を広げる
セルフマーケティングの時代
自分の刻印と署名を確立する
カリヨン・ツリー型のキャリアを築く

第9章 第二のシフト―孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
未来に必要となる三種類の人的ネットワーク
ポッセを築く
ビッグアイデア・クラウドを築く
自己再生のコミュニティを築く

第10章 第三のシフト―大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
仕事の世界の「古い約束事」とは?
「古い約束事」が崩れはじめた
お金と消費に最大の価値を置く発想
なぜ、私たちはお金と消費が好きになったのか?
消費より経験に価値を置く生き方へ
重要なのは選択肢を理解すること
自分で自分の未来を築く
<シフト>を実践する

エピローグ 未来のために知っておくべきこと
子どもたちへの手紙
企業経営者への手紙
政治家への手紙

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