目次
はじめに 子育てにかかるお金はどんどん高くなっている
- 子育てに成功した親の話はアテにならない
- 「データ」を使えば、教育・子育ての効果がわかる
- 成績よりも受験よりも「学校を卒業したあと役に立つ」教育こそ重要
- 信頼できる「エビデンス」で、あなたの子育てを助けます
第1章 将来の収入を上げるために、子どもの頃に何をすべきなのか?
- 将来の収入を上げるために、子どもの頃にやっておくべきことベスト3
- スポーツをすることは将来の収入を上げる
- 理由1 採用で有利になる
- 理由2 忍耐力やリーダーシップが身に付く
- スポーツをしても勉強はおろそかにならない
- スポーツの良い効果は女子のほうが大きい
- スポーツをすると欠席が減り、自尊心が高まる
- リーダーになることも将来の収入を上げる
- リーダーになると将来の採用や就職で有利になる
- リーダーになると学力や学歴も高まる
- リーダーシップは「才能」ではなく、習得できる「スキル」である
- コラム 偏差値の高い学校に行くと、将来の収入は上がるのか?
第1章から第3章は、子どもたちが将来に稼ぐ力を身に付けられる3つの方法を提案します
- (1)スポーツをする
- (2)リーダーになる
- (3)非認知能力を高める
第1章では、(1)スポーツをする、(2)リーダーになる、を取り上げます。
(1)スポーツをする
子どもの頃のスポーツ経験が、大人になってからの収入を上げるのは、主に2つの理由があると考えられています。
- 1.企業がスポーツ経験のある人を好んで採用したいと考えるから
- 2.スポーツ経験によって、忍耐力、リーダーシップ、責任感、社会性などが身に付くと考えられるから
スポーツ経験による賃金の上乗せ分を、スポーツの「賃金プレミアム」と言います。
賃金プレミアムのほとんどが、忍耐力、リーダーシップ、責任感、社会性などの「非認知能力」が高いことによるものです。
週1~2回のスポーツは、週に30分程度テレビやスマホを見る時間を減らすことを示したエビデンスがあります。
「スポーツをする時間」は「勉強する時間」を奪うことなく、テレビやスマホのような「受動的な活動の時間」を減らすのです。
スポーツをすることは学力を高めることがわかっています。
たとえば、ドイツのデータを用いた研究は、3~10歳のときに放課後にクラブでスポーツをした経験があると、小学校の成績が高くなります。
ところが、小学生から高校生のあいだにスポーツをすることは良い効果があるというエビデンスが多いのに対して、大学生については研究の結果が分かれています。
スポーツの良い影響は、女子のほうが大きいという複数のエビデンスがあります。
スポーツ参加率の増加は、彼女らの教育年数を伸ばし、大学進学率を上昇させ、卒業後に就労する確率を高めました。
スポーツをすると自尊心に良い影響があることを示したエビデンスもあります。
2021年から始まった教員の働き方改革により、小中学校での部活のあり方が変わってきました。
部活動指導をプロの指導員を擁する一般企業に委託したり、近隣の中学校が合同で部活動をして、スポーツする機会を減らさない取り組みが行われています。
ここでは、さまざまな手段を講じて、放課後に子どもたちがスポーツをする機会を充実させることが重要になります。
(2)リーダーになる
高校時代にリーダーシップを発揮した経験がある人は、そうした経験のない人に比べると、高校を卒業して11年後の収入が高くなることが分かっています。
また、同程度の学力でリーダーの経験がない高校生と比較すると、4年制大学・大学院に行く確率が高いこともわかっています。
リーダーになれば、学力や学歴も高まると言えます。
リーダー経験の賃金プレミアムは、女性のほうが大きいというエビデンスがあります。
リーダーシップは、天賦の才能ではなく、経験を積むことによって習得できる「スキル」です。
稼ぐ大人に育てるための近道は、偏差値の高い大学へ行かせることと考える人は多いかもしれません。
しかし、有力な研究の多くが、偏差値の高い大学に進学することが将来の収入に与える効果はほとんどない、あってもきわめて小さいことを示しています。
また、偏差値の高い高校への進学が入学後の学力を高める効果はほとんどありません。
しかし、偏差値の高い高校へ行くことは、学力を高める効果は限定的でも、将来の幸福感にプラスの影響があることがわかっています。
第2章 学力テストでは測れない「非認知能力」とは何なのか?
- 学力テストの点数は将来の収入のほんの一部しか説明できない
- 「非認知能力」は心理学や認知科学で長年研究されてきた
- 非認知能力は中年以降にこそ重要
- 非認知能力は結婚や寿命とも関連している
- 非認知能力は学力を伸ばすが、その逆は起こらない
- 将来の収入を上げる3つの非認知能力
- 非認知能力1 忍耐力 ── 成績、貯蓄、健康が良い傾向
- 非認知能力2 自制心 ── 借金、病気、薬物依存と関連
- 非認知能力3 やり抜く力 ── 仕事や結婚生活を定着させやすい
- 最近になればなるほど、非認知能力の重要性が増している
- コラム どうやって「非認知能力」を測るのか?
(3)非認知能力を高める
この章では「(3)非認知能力を高める」ことを見ていきます。
学カテストの個人差は、将来の収入の個人差の多くを説明することができません。
女性や高卒、短大・専門卒の男性にとって非認知能力の価値が高いことがわかっています。
所得分布で下位10%に位置する人々にとっては、非認知能力の影響は、認知能力の何倍もの大きいのです。
この理由は、非認知能力の高い男性は、失業する確率が低く、仮に失業したとしても、失業期間が短いからです。
非認知能力と将来の収入の関連は40~60歳のあいたでもっとも大きくなります。
非認知能力はIQの高い男性にとっても重要であり、「勤勉性」や「外向性」の影響が大きいことがわかります。
勤勉性や外向性は、経済力や認知能力よりも長生きと強い関連があります。
注意していただきたいことがあります。
それは、非認知能力が重要だからといって、認知能力が不要だとは言えないということです。
認知能力と非認知能力は別々のものでありながらも、両方が互いに影響し合って、将来の学歴や収入に影響します。
獲得した非認知能力は、その後の教育投資の生産性を高め、認知能力を伸ばすことの助けになります。
小さい頃に勤勉さを身に付けた子どものほうが、のちのち学力が高くなりやすい、ということです。
- 学校教育や親による教育投資は、幼少期のほうがより効果的です。理由は、「技能が技能を生む」性質があるからです。人生の早い時期に投資を開始することで、あとになってより大きな利益を得られます。
- 幼少期に身に付けた非認知能力は、その後の認知能力を伸ばすのに役立ちます。しかし、その逆(幼少期の認知能力→その後の非認知能力)は観察されません。
将来の収入を上げる非認知能力が3つあります。
①忍耐カ
忍耐力があると成績、貯蓄、健康が良い傾向になります。
逆に、子どもの頃や若い頃に、忍耐力に欠けると、生涯収入が低くなることがわかっています。
忍耐力がないと、学校での成績が悪く、校則違反が多く、高校を中退する確率が高く、大人になってから後悔する確率も高いです。
さらに、飲酒量が多くなり、肥満になり、貯蓄率が低くなります。
②自制心
借金、病気、薬物依存と関連します。
自分の感情や行動をコントロールできることが重要です。3~11歳のあいだに自制心が低かった人は、32歳時点での健康面や経済面、安定的な生活の面で不利です。
③やり抜く力
GRITと呼ばれる、やり抜く力が強い人は、成績が良く、学歴が高く、仕事や結婚生活を継続し、定着させています。
やり抜く力は勤勉性とも強い相関関係があり、勤勉性と将来の学歴や収入の間にも強い正の相関があります。
こうした非認知能力は年々重要になってきています。
人関係能力を必要とするが、低い認知能力でよいという仕事の雇用率は一貫して上昇しています。
しかし、高い認知能力を必要とするが、低い対人関係能力でよいという仕事の雇用率は一貫して低下しています。
第3章 非認知能力はどうしたら伸ばせるのか?
- 音楽や美術は非認知能力を伸ばす
- 「好奇心」を伸ばすことに成功した授業
- 好奇心が高まると知識が定着し、学力も上がる
- 学校で他者に対する「思いやり」を育む
- 生徒の非認知能力を伸ばせる「先生」がいる
- 学力と非認知能力の両方を伸ばせる先生は少ない
- どういう先生が非認知能力を伸ばせるのかはまだわかっていない
- コラム 「やり抜く力」は伸ばせるのか?
非認知能力を伸ばすには第2章までで述べられた、スポーツやリーダーの経験の他に、音楽や美術も有効です。
音楽活動で学校の成績が良くなり、勤勉性が高く、外向的で、意欲的になります。
美術館で絵画の鑑賞を経験すると、他者への寛容性が高く、批判的思考力に優れるようになります。
非認知能力には「好奇心」も含まれます。好奇心が高まると知識が定着して学力も上がります。
好奇心以外にも、「向社会性」や「利他性」を高めることにも注目が集まっています。
向社会性とは、「他者への思いやり」です。人格の中でも重要で、人々の向社会性は社会全体に影響を及ぼします。
多様な仲間たちとともに過ごし、相手の立場に立って考える経験は子どもたちの向社会性を身に付ける機会となります。
母親の向社会性から影響を受けていることも示されています。
つまり、子どもの向社会性や利他性を高めるためには、身近な大人や友人の影響が大きいと言えそうです。
科学的根拠(エビデンス)で子育て p76
子どもたちが接する大人の中で、先生の役割は大きいです。
生徒の非認知能力を伸ばせる「先生」はいますが、学力と非認知能力の両方を伸ばせる先生は少ないです。
子どもの学力や非認知能力に対する変教員の寄与は主に2つのことがわかっています。
1つ目は、教員は、子どもの学力よりも、非認知能力に対して大きな影響を与えているということです。
2つ目は、海外の研究と比較すると、日本の教員が子どもの学力に与える影響は小さいということです。
理由ははっきりとは分かっていません。
そしてどういう先生が非認知能力を伸ばせるかは分かっていません。
「コラム」では「やり抜く力」が取り上げられています。「やり抜く力 GRIT(グリット)」が参考になります。
第4章 親は子育てに時間を割くべきなのか?
- 子育て世代の「時間貧困」は深刻
- 学歴の高い母親ほど、子育てに時間をかけている
- 時間投資の効果は子どもの年齢が小さいときのほうが大きい
- 子どもの成長とともに、親よりも子ども本人の時間投資が重要になる
- 子どもと過ごす時間の質を高め、学力を上げたパンフレット
- 祖父母と同居すると、孫のコミュニケーション力が上がる
- 祖父母と同居すると、孫の学力も上がる
- でも、祖父母は保育所の代わりにはなれない
- 弟妹は兄姉からの情報を頼りに学校を選ぶ
- 第1子は第2子よりもデキがいい
- 第1子が有利になることを示す4つの仮説
- 仮説1 親の時間投資に差があるから
- 仮説2 非認知能力に格差が生じるから
- 仮説3 親のしつけに格差があるから
- 仮説4 予想外の妊娠だったケースが多いから
- 1人っ子にもデメリットがある
- コラム 「早生まれ」は損をするのか?
学歴の高い親のほうが、子どもへの時間投資が長くなる傾向があることがわかっています。
外で働いているかどうかは、子どもへの時間投資にさほど大きな影響を与えません。
子どもが小学校に入ると、子どもが家にいない時間が多くなるため、外で働いている母親と専業主婦の母親とで、子どもと過ごす時間にそれほど大きな差は生じないためです。
日本では、専業主婦の母親のほうが子どもの勉強時間は長くなり、外で働く母親のほうが体験に積極的です。
海外とは異なり、日本では学歴だけでなく、外で働いているかどうかも影響を与えています。
母親の時間投資は、勉強か体験かによらず、子どもの認知能力や非認知能力を高めます。
そして、時間投資の効果は、勉強か体験かによらず、子どもの年齢が小さいときのほうが大きいことがわかっています。
3歳時点の時間投資の効果は、その後も持続するようです。
持続力が高いのは認知能力よりも非認知能力への効果のようです。
時間投資には、母親であっても父親であっても同じだけの価値があることが示されています。
子どもの年齢が7歳や11歳になった時点でも、親の時間投資が非認知能力に与える効果は十分に大きいことがわかっています。
子どもが11~15歳になる頃には、子ども自身の時間投資が認知能力に与える効果が大きくなります。
子どもの年齢が上がれば上がるほど、親の時間投資の効果は小さくなり、子ども自身の時間投資が重要になります。
一連の研究を大雑把にまとめてみると、子どもの年齢が小さいときの親の時間投資は特に効果が大きいと言えそうですが、その重要性は、子どもの成長とともに低下していき、子ども自身の時間投資の重要性が増していくということになります。
科学的根拠(エビデンス)で子育て p100
そして、子どもと長く一緒に過ごせば良いというわけではなく、子どもの能力は生まれつきではなく、努力によって変えることかできるという成長マインドセットを持つことで質を高めることができます。
祖父母と同居することは、孫のコミュニケーション力や言語発達に良い効果がある一方、肥満になりがちであることを示すエビデンスがあります。
そして、長期間、祖父母と同居した子どもは学力が高い傾向にあります。
祖父母と一緒に過ごす「時間の長さ」こそが重要だということなのです。この研究では、祖父母と孫が一緒に過ごす時間が10年延びると、孫が高校を卒業する確率が7ポイント増加する、つまり、祖父母と孫が一緒に過ごす時間が十分に長ければ、孫の学歴に良い影響を与えるというのです。
科学的根拠(エビデンス)で子育て p106
生まれ順があとの子どもほど、将来の学歴が低くなることが分かっています。
生まれ順は、学歴のみならず、成人後の就職や収入にまでも影響します。
生まれ順があとになればなるほど、フルタイムで雇用される確率が低く、収入も低くなるというのです。
親が第1子だった場合、その子も学歴が高くなることが明らかになっています。
第1子が有利になる仮説は様々です。
- 親の時間投資に差があるから。
- 非認知能力に格差が生じるから。
- 親のしつけに格差があるから。
- 予想外の妊娠だったケースが多いから。
一人っ子にもデメリットがあります。
競争心が弱く、他人を頼する気持ちに分け、リスク回避的な傾向が強いことがわかっています。
第5章 勉強できない子をできる子に変えられるのか?
- 勉強することが苦にならなくなる3つの秘策
- 秘策1 「目標」を立てる
- 目標を立てることで、大学生の成績が大幅に改善した
- 目標の力で成績を上げるための3つの条件
- 秘策2 「習慣化」する
- 習慣化のための2つの条件
- お金で釣るのは逆効果になることもある
- 秘策3 「チーム」で取り組む
- 友だちとチームを組むことで勉強量が増える
- チームを組んでも、勉強ができる子は損をしない
- コラム 子どものウソを見破れば、学力を上げられるのか?
勉強することが苦にならなくなる3つの秘策
- (1)「目標」を立てる
- (2)「習慣化」する
- (3)「チーム」で取り組む
目標の力で成績を上げるための3つの条件
- (1)ある程度達成可能なインプットに対して
- (2)他人ではなく自分が
- (3)自己管理の方法について学んだ上で目標を設定するとより効果的
習慣化するための2つの条件
- (1)何かを始めるときに感じる初期の抵抗感を和らげ、取り掛かるきっかけを作ること
- (2)繰り返すこと
の2つを同時に行うことが重要
チームを組んでも、勉強ができる子は損をしないことがわかっています。
能力の高い学生は足をひっぱられることなく、能力の低い学生の成績が大きく向上したことが示されています。
仕事でも同様の傾向があり、生産性の高い労働者ほど、チームで働くことを選ぶ傾向があります。
子どもが親に伝えることなく、ウソをついたり、隠したりしているような、親が子どもの本当の姿を正確に把握できていない場合ほど、子どもの学力が低くなっていることも明らかになりました。
第6章 「第1志望のビリ」と「第2志望の1位」、どちらが有利なのか?
- 優秀な友達から受けるのは「良い影響」だけではない
- 学力の高い友人と同じグループになると学力が下がる
- 「鶏口となるも牛後となるなかれ」は正しい
- 小学校の学内順位が中学校での学力に影響する
- 小学校の学内順位は最終学歴や将来の収入にまで影響する
- 順位が子どもたちの将来に影響を及ぼすメカニズム
- 仮説1 親や教員からの扱いが違うから
- 仮説2 子ども自身の「自信」に影響を及ぼすから
- 順位は「前回と比べて」どれだけ伸びたかを伝えるのが正解
- 子どもを「深海魚」にしないために、親にできることはある
- 「学歴フィルター」では優秀な学生を採用できない
- コラム 自分だけが出世できないときに感じる「相対的剝奪」とは?
学力の高い友人と同じグループになると学力が下がってしまいます。
そのため、学力の低い学生同士でグループ学習をさせたほうが、学力の高い学生と学力の低い学生を同じグループにして学習をさせたときよりも成績が良くなります。
小学3年生のときの学内順位が、中学校入学後の学力だけでなく、大学進学率、将来の年収にまで影響することを明らかにしています。
高校生のときの成績順位が低いと、未成年での喫煙や飲酒をしたり、避妊をしない性行為、暴力行為に及ぶ確率が高まることがわかっています。また、勤勉性などの性格的な特徴、メンタルヘルスにまで影響を与えるというわけです。
科学的根拠(エビデンス)で子育て p160
順位が子どもたちの将来に影響を及ぼすメカニズムには幾つかの仮説があります。
- 1.親や教員からの扱いが違うから
- 2.子ども自身の自信に影響を及ぼすから
「前回と比べて」どれだけ伸びたかを伝えるのが正解です。
第7章 別学と共学、どちらがいいのか?
- 東大進学者は別学に多い
- 別学出身者の学力が高いのは「見せかけの相関」である
- 別学へ行くと学力は高くなり、女子の肥満が増える
- 男子校が有利な理由は「ロールモデル」となる同性の教員が多いから
- 女子校が有利な理由は「ステレオタイプの脅威」が生じにくいから
- 女子校に行くと将来の収入が下がり、結婚や出産の確率が下がる
- 男女を別にすると性別に対する偏見や固定観念が強まる
- コラム 教育の効果は男子と女子で異なるのか?
別学へ行くと学力は高くなり、女子の肥満が増えます。
男子校が有利な理由は「ロールモデル」となる同性の教員が多いからです。
そして、女子校が有利な理由は「ステレオタイプの脅威」が生じにくいからです。
第8章 男子と女子は何が違うのか?
- 「女性っていうのは競争意識が強い」は間違い
- 競争心の男女差は、小学生にすでに表れている
- 競争心の男女差が進路選択や職業、収入の男女格差につながっている
- 女子校の生徒の競争心は男子と変わらない
- 女子は自分に自信がないが、勤勉で協調性が高い
- 独身女性は無意識に「妻」のように振る舞う
- 女性がリーダーに選ばれやすい選抜の方法がある
- コラム 「女性枠」を設けることは男性への「逆差別」なのか?
男女の「選好」(好み)には差があり、それが行動や進路選択、収入にも影響しているという研究結果が複数報告されています。
スタンフォード大学のニーデルレ教授らの研究では、男性は競争心が強く、女性は弱い傾向があることが明らかになりました。
男性は競争的環境で力を発揮しやすい一方で、女性はそうした環境では力を発揮しにくい傾向があります。
この競争心の違いにより、歩合制の報酬制度を選んだ男性のほうが、収入面で優位になるケースがあり、収入格差の約10%が競争心の違いで説明可能とされています。
競争を促す求人に対しても、男性は積極的に応募しますが、女性は消極的です。
アムステルダム大学の研究では、理系進学の性差も競争心の差に起因するとされており、文化や社会制度が思春期の女子の競争心を低下させることが示されています。
女子校の生徒は共学の女子より競争的な選好を持つ傾向があり、これは環境による影響の例とされています。
他の研究では、女性はリスク回避傾向や不安感が強い一方で、勤勉性や協調性が高いことが示されています。
また、独身女性は周囲の男性の目を気にして行動を変えるプレッシャーを受けており、これは結婚市場における評価を意識した行動とされています。
第9章 日本の教育政策は間違っているのか?
- 経済学的な考え方に基づいて、教育政策を考える
- 保育料の引き下げは子どもに悪影響を与えた
- 幼児教育の「質」を数値化する
- 質の高い保育所や幼稚園に通うと、小学校入学後の学力が高くなる
- 学力を重視する幼児教育の質は低い
- 親には幼児教育の質の高低を見抜けない
- 「1人1台端末」政策は子どもの学力を低下させた
- デジタル教材には子どもの学力を高める効果がある
- 「習熟度にあった指導」が学力向上の鍵
- PCに先生の代わりはできない
- PCは使えば使うほど良いというわけではない
- 結局、教員こそが教育の核である
- 善意で生み出された教育に、悪影響がないとは限らない
- コラム 政府は教育にもっとお金をかけるべきなのか?
幼児教育の効果と質の重要性
幼少期の子どもへの教育投資は、非常に効果的で「割が良い」とするエビデンスが多数あります。幼児教育が子どもたちの将来の成果に良い影響を与えるためには、一定以上の教育の質が担保されている必要があります。
たとえば、保育所の「保育環境評価スケール」の点数が1点高いと、小学2年生時点の算数で偏差値が5.2、国語で5.5も高くなるという結果が出ています。
また、保育所の園長が持つ教育信念も質に影響し、「基礎学力重視」の傾向が強いと教育の質が下がり、「関心・経験重視」の場合は質が高まる傾向が見られます。
一方で、幼児期に小学校の勉強を先取りするような教育は、逆効果になる可能性があるため、注意が必要です。加えて、親が教育の質を正確に判断するのは難しいと指摘されています。
GIGAスクール構想とデジタル教材の実態
2019年に始まった「GIGAスクール構想」による「1人1台端末」政策は、子どもの学力を向上させるどころか、むしろ低下させたという報告があります。これは、手段が目的化してしまったことが原因とされています。
同様の政策は、コロンビアやチリ、ルーマニア、スウェーデンなどでも実施されましたが、やはり学力向上にはつながらず、失敗に終わったケースが多いようです。
デジタル教材とアダプティブラーニングの効果
一方で、デジタル教材や教育用ソフトウェアには、学力を向上させる効果があるという研究も増えています。
中でも注目されているのが「アダプティブラーニング」という学習方法です。これは、子ども一人ひとりの習熟度に合わせて内容を調整するもので、日本では「個別最適化」とも呼ばれています。
アダプティブラーニングを導入した研究では、算数・数学において改善が見られたと報告されています。これは、個別の理解度に応じた指導ができるからだと考えられています。
ただし、動画やデジタル教材を子どもに与えるだけでは十分ではなく、教員の関与が不可欠です。教員が効果的に活用することで、デジタル教材は学力向上の手段となります。
教育政策とエビデンスの重要性
日本ではこれまで、教育政策の効果を科学的に検証する習慣があまり根付いていませんでした。これが、日本の教育政策における大きな課題とされています。
しかし近年では、「エビデンスに基づく政策形成」の重要性が徐々に認識されつつあります。今後は、科学的根拠をもとにした政策決定が、より良い教育の実現に向けて求められています。
ジャクソン教授らの研究によると、以前の論文では学校財政改革による教育支出の増加は学力向上に効果がないとされていました。
しかし、ジャクソン教授らはより長期的な視点から分析し、教育支出の増加が将来の収入を高める効果があることを明らかにしました。
この発見は非常に重要であり、今後の教育政策の議論では、学力だけでなく長期的な成果にも目を向ける必要があるといえます。
第10章 エビデンスはいつも必ず正しいのか?
- 「もっとも重要な決定とは、何をするかではなく、何をしないかを決めること」
- 今、学校に必要なのは「手術室を1つ空けておく」こと
- 「エビデンス」を読み解く上で私たちが注意すべき4つのこと
- 注意点1 エビデンスには信頼性の「階層」がある
- 注意点2 エビデンスは合理的な判断を助ける「補助線」にすぎない
- 注意点3 エビデンスは「絶対に覆らない決定版」ではない
- 注意点4 海外のエビデンスは日本にはあてはまるとは限らない
- 世界では「リアルタイムデータ」を用いたEBPMが始まっている
- 高齢化が進む社会でも、子どもの教育投資への優先順位は高い
何を「やるか」より「やらないか」を決めることの重要性
私たちはつい「やらないよりやったほうがいい」と考えがちですが、行動には機会費用が伴います。何かを選んで実行するということは、それによって他の可能性を捨てているということです。
したがって、限られた時間や資源の中で、何をするかよりも何をしないかを決めることのほうが重要になる場面も多いのです。
エビデンスに基づく政策形成の必要性
何を優先して実施するかを判断するには、エビデンスに基づく政策形成が必要です。しかし、エビデンスを使う際にはいくつかの注意点があります。
注意点1:エビデンスには「強さ」の階層がある
すべてのエビデンスが同じ価値を持つわけではありません。ランダム化比較試験(RCT)や自然実験、回帰不連続デザインなどは比較的信頼性の高い方法とされています。さらに、それらを統合したメタアナリシスやシステマティック・レビューはより強力なエビデンスとされます。
注意点2:エビデンスはあくまで「補助線」
どれほど強いエビデンスであっても、それは政策判断を支えるための一つの補助線にすぎません。最終的な判断には価値観や状況の判断も必要です。
注意点3:エビデンスは「絶対」ではない
エビデンスはあくまで現時点の知見であり、将来にわたって変わらないものではないという点も重要です。
たとえば、「マシュマロ・テスト」が子どもの自制心を測る指標として広く知られていますが、単純すぎるかもしれないという見方も出ています。
注意点4:海外のエビデンスはそのまま使えないことがある
海外の研究結果が日本にそのまま当てはまるとは限らないことも重要です。
同様に、日本国内の研究であっても都市部のデータが地方に通用しない場合もあります。これは「外部妥当性」の問題と呼ばれます。
教育への投資は将来への利益につながる
高齢化が進む中でも、子どもへの教育投資の優先順位は高くあるべきです。
日本では医療や介護への支出を重視する声も多いですが、子どもの教育や健康に投資した政策は、将来的に税収の増加や社会保障費の削減という経済的利益をもたらすことが実証されています。
