本書が発行されたのが2024年10月20日ですので、使用されているデータはそれ以前のものであり、そのデータを使用して分析していることに注意が必要です。
本書の構成は下記のとおりです。
- プロローグ:人口減少の影響を受けている地方の中小企業の状況を、山形県酒田市の事例をもとに解説しています。
- 第1部:統計データを分析し、日本経済で起きている構造変化を解説しています。
- 第2部:再び企業事例を紹介しています。
- 第3部:日本経済の先行きを予想しています。後半ではいくつかの政策的な論点も紹介しています。
さて、「はじめに」に書かれている下記の内容は、経済学の理論の限界を示している言葉と感じました。
もし、人口の増減によって経済成長が変化するのが理論的に確実なのであれば、採るべき政策はだいぶ絞られます。
人口減少を食い止め、最低でも人口維持のためにあらゆる資金・リソースをそのことに集中するのが合理的です。
ですが、「暗黙の前提があった」と下記でも書かれているように、理論的な決着が着いていないのであれば、経済学者は理論的な結論を示すべきです。
人口が減少しても、経済発展がありうるのか/ありえないのか、採る政策は全く異なっていきます。
再び長期の低迷を迎えるのか、緩やかでも経済を成長させられるのか、経済学の理論的結論によって、政策が真逆になりえます。
これまで世界の人口が長期的に増加を続けていた事実からもわかるように、近代の世界経済を振り返れば、経済というものは基本的には人口が増加している状態のもとでそれと並行して成長をしていくものだという暗黙の前提があったといえる。しかし、日本の人口はいままさに調整局面から減少局面へと移行しつつある。そうであれば、人口減少とともに歩むこれからの日本経済の構造はこれまでのそれとは異なるものになる可能性が高い。
近代で日本のような大きな経済規模を有する国において、人口が持続的に減少した事例はほかに類を見ない。そう考えれば、人口減少が経済にどのような構造変化を及ぼすのかということは、これまで必ずしも自明ではなかったと考えられる。
ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」 p5
次から本書の概略を見ていきます。