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「科学的根拠(エビデンス)で子育て」内容の要約と紹介:中室牧子

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「学力」の経済学」で一躍有名になった中室牧子氏による一般書です。

2024年12月に出版されました。『「学力」の経済学』が2015年6月の出版ですので、9年半が経ちました。

この間にコロナ禍により社会の様々な状況が変わり、また、新しい研究成果も出ています。

そしてアカデミアで勤務する研究者を取り巻く環境も大きく変わりました。

多くのアカデミアの研究者は、税金を原資とするいわゆる“科研費”を受給して研究を行っています。

一昔前まで、研究の内容を、社会に還元しないアカデミアの研究者もいましたが、昨今の流れの中で、社会還元するのが当たり前になりつつあります。

税金を使って研究しているのですから当たり前の説明責任です。

本書のように、研究内容を一般書として社会に還元することが、アカデミアの全研究者に求められる時代になって来ているといえます。

さて、

「はじめに」で述べられていますが、子育てに成功した親の話はアテになりません。

生存者バイアスがあるので、気をつける必要があると述べています。

生存者バイアスとは、事故の生存者の話だけを聞いて、事故のリスクを過小評価してしまうことです。

p2 科学的根拠で子育て

もし事故で多くの人が亡くなっていたとしても、亡くなった方からの情報を得ることができません。

生存者からの情報だけから、自分が事故に遭ったとしても生存できると都合よく解釈してしまうことがあります。

教育や子育てでも同様です。

お金や時間をかけて子育てに成功した人の話に耳を傾けるだけでは、まったく同じことをしていたのに失敗した人や、あまりお金や時間をかけなかったのに成功した人の話を知ることはできないからです。

p3 科学的根拠で子育て

では、何が教育に効果があるのか、を知るためには、多くのパターンが必要になります。

中室牧子氏は教育経済学を専門としており、ビッグデータなど様々なデータを駆使して得られた科学的根拠(エビデンス)に基づいて、教育や子育ての効果を分析しています。

子どもの頃のある時点で受けた教育が、大人になってからの就職、収入、昇進、結婚、健康、そして幸福感などに与える影響を明らかにすることができるようになりました。

p4 科学的根拠で子育て

教育や子育ては、短期的な成果よりも長期的な成果の方は重要ですので、本書では学校の中だけでの成功をゴールとせず、学校を卒業したあとの、本番の人生に役立つ教育が何かを問うています。

本書では国際的こ権威ある学術雑誌に掲載された信頼性の高いエビデンスに基づいています。

エビデンスは効果があったものだけでなく、効果はなかったものや、悪影響のあったものも紹介されたいます。

また、世の中の通説とは逆のことを示すエビデンスも紹介されています。

なお、本書における「エビデンス」は、あくまである集団に対する平均的な効果です。

そのため、エビデンスがすべての子どもに当てはまるとは限りません。

子どもの個性を踏まえて、活かしていくことが大切です。

そして、エビデンスは後続の研究によって覆ることがあります。

第10章で述べられていますが、有名な「マシュマロ・テスト」は2018年の追試した研究で、子どもの自制心は子どもの自制心を計る上で単純化され過ぎているかもしれないことが分かりました。

マシュマロ・テストで測られた自制心と、将来の学力や問題行動との間に明確な関連が確認されなかったのです。

このように有名な研究結果ですら、追試の研究などによって、疑義が生じます。

このように、本書で紹介されているエビデンスが未来永劫正しいものとは限らないということを念頭におく必要があります。

これまでの常識とは異なる内容も書かれていますが、もしかしたら、将来の研究によって、巡り巡ってこれまでの常識の方が正しいということがあるかもしれません。

エビデンスは絶対ではないと言い切っているのは、こうした一般書としては珍しいと思います。

何か思うところがあって、敢えて言及したのかもしれません。

さて、本書の詳細は次のページで見ていきます。

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