全ての知識と知恵はSDGs(Sustainable Development Goals)のために。

「その問題、経済学で解決できます。」内容の要約と紹介:ウリ・ニーズィー,ジョン・A・リスト

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行動経済学の本。

経済学は歴史的に理論中心の学問でしたたが、コンピューターの発達とともに実証研究の世界に入っていきました。

こうした普通の経済学の流れと違って、かといって、完全に筋が通っていて明らかなことをする道を切り開いたのが著者です。

現実の世界で経済学のランダム化実験を行うという道です。

著者を紹介しているスティーヴン・レヴィットは『ヤバい経済学――悪ガキ教授が世の裏側を探検する』『超ヤバい経済学』で知られます。

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はじめに 思い込みの向こうへ

[人がやってることって、どうしてそんなこと人はやってるんだろう?]
どうして女は男より経済的に成功しにくいんだろう?
性別の格差は何が原因で起きているのか、だれでも”意見”は持っている。
 だが、
自分の思っていることが本当の理由だってどうしてわかるのだ?
従来、経済学者たちは対照付の実地実験に疑いの目を向けていた。
意味のある実験を行うためには、調べたいこと以外を全部一定に保たなければならない。
現実の世界ではムリである。そう信じてきた。
 ▼
対照実験のできない現実の世界を相手にしているのなら、ランダム化実地実験で本当の答えを出せる
実地実験は、ここ数十年で起きた実証研究上の最も重要な発明の一つになった。

ビッグデータが抱える2つの問題

因果関係がありそうでも、単純な相関であり、因果でないということはよくある。
そうやって取り違え、お金と労力を無駄に使っている
本物の因果関係を特定するのはとても難しい
ビッグデータを使ったやり方の背後にあるのは、因果ではなく、相関に大きく頼った分析である
意味のある相関と意味のない相関を区別するためには、なにが何を起こしているのか、因果を仮定しないといけないことが多い
つまり、人間が理屈を考える世界へ逆戻りする
 そして
ビッグデータはとにかく大きいので、どう掘り進んだらいいかなかなかわからないということだ

いまどきの差別

人が差別をするのは本当はなぜなのか
明らかに差別は人間の生活に深刻で長期的な影響を及ぼす
実地実験の結果
あからさまな毛嫌いとか純然たる悪意というのは、思っているほどありふれてはいない
 ▼
いまどきの差別はほとんどの場合、人や企業が利益を増やそうとするために起きていることが分かった
 でも
生の悪意が消えてなくなったわけではない
差別するのは、相手には関連することについて選択する余地があると思っている場合である

男女格差は生まれのせいか、育ちのせいか

女性と男性は競争に勝つ力が違っているのだろうか?
競争に勝つ力に違いがあるのは生まれのせいか、それとも育ちのせいか
 ▼
調査の結果
育ちのせいである
女性が競争から排除されず、力を持った個人として社会に受け入れられる、そうした環境に入れば、女性は男性と同じだけ競争に強くなる

第1章  人にやってほしいことをやらせるには?

[インセンティヴが働く(働かない)のはどんなときか、そしてそれはなぜか?]
インセンティヴの仕組みを導入する前に、まず、インセンティヴがどう働くかを理解しないといけない
 そののち
インセンティヴを使って、どうして人は実際にやっているような振る舞いをするのかを理解しないといけない
罰金を取って大失敗の巻
インセンティヴは裏目に出ることさえある
期待していたのと逆の行動を人々がとってしまうのだ
 ▼
保育園で遅刻した親に3ドルくらいの罰金を取るようにした
すると
3ドルの罰金を払うことで、心配したり罪の意識を感じることがなく、かえって遅刻がふえる
 ▼
お金が関係をぶち壊す
罰金を科すことによって、迎えに来るのに遅れることの意味を変えてしまったのだ
インセンティヴを使うのなら、間違いなく思った通りに働くようにしなければならない
お金の絡むインセンティヴを使うなら、細かいところに注意しなければならない
インセンティヴは人との関係に関する認識を簡単に変えてしまう

第2章  女が男ほど稼げないのはなぜか? クレイグズリスト、迷路、それにボールとバケツでわかること

[キリマンジャロのふもとの平原にて]
この章と次章で検証するのは、労働市場における性別格差のどれだけが文化によるものなのかである。
証拠もないのに女性は生まれつき男性より競争力が低いとは仮定しない。
 ▼
実験によって
男女の違いのどれだけが生まれつきなのか?
どれだけが文化的に身につけたものなのか?
西欧文化圏での実験では、女性は競争が得意ではなさそうであった
 だが
父系の強い社会と、母系の強い社会ではその傾向は変わるのだろうか
 ▼
ものすごく父系の強いタンザニアのマサイ族とものすごく母系の強いインド北東部のカーシ族とで同じ実験をして比べてみた
タンザニアでもやはり大体の女性は競争が好きではないようだった
 が、
西欧文化で暮らす女性に比べてずっと競争嫌いというわけではなかった

第3章  母系社会は女性と競争について何を教えてくれるだろう?

[カーシ族を訪ねる]
カーシ族では、女性は平均で男性の平均よりずっと高い割合で競争を選んでいる
 簡単に言うと
カーシ族では育ちは女王様なのである
 ▼
適当な文化の下では女性は男性と同じくらい負けず嫌いになるし、女性の方が男性よりも競争を好むという状況がたくさんある
さて
競争に前向きなことで、経済的インセンティヴが働く市場での振る舞いはどうなるか
1.カーシ族の女性は、生まれてからずっと積極的になれ、自信を持てと教えられているので、交渉が巧い
2.価格の決まる仕組みを仕切るのが母系社会の部族の女性かそうでないかで市場の仕組みが大きく異なった
カーシ族に「公共財ゲーム」を使ったところ
男性も女性も、他の族(アッサム族)よりもグループ全体のためによりたくさん投資する傾向がある
身勝手な人が少ないことがわかったのである
男女差別はとても根が深い
 ▼
とても幼い年代から始まっている
教育に携わる人もそうでない人も、性別のステレオタイプにはめ込まないよう、高い意識を持って注意を払い、手を打たなければならない
生まれつき決まっているものなんて何もない
子どもたちが社会化の過程で身につけるインセンティヴに対するあるべき反応を変えることができれば、子供たちの未来は変えられる

第4章  惜しくも銀のメダリストと大健闘で銅のメダリストが成績格差を埋めてくれる、とは?

[公的教育:6270億ドルの問題]
インセンティヴを学校教育で実地実験する。
学校を改革のための実験室とし、教育システムの数十年続く凋落トレンドを逆転させることができる。
教育では何が本当はうまくいくのか、どれくらいうまくいくのか、なんでうまくいくのかを調べてきていない。
国中の学区を実験場として使い、憶測や逸話だけではなく、科学の上に立った教育政策を作ってこなかった
3万人が暮らすシカゴハイツは、アメリカ最悪の教育問題の縮図である。
一人当たりの所得が貧困ラインを大幅に下回っている。
他の都市部の学校と同じように、中高生の50%は卒業前に中退する。
だいたいは中3から高1の間である。
 ▼
生徒たちに学校を続けさせるにはどうしたらいいか
シカゴハイツの高校生の卒業率を改善する実験が始まった
データによると、学校に通う年が1年減るだけで、生徒の将来の稼ぎは大体12%減る
高校を中退した人と、高卒の人との年収の差を20年間で累積すると、15万6800ドルの差になる
 だが、
教育がお金の形で報われるのは何年も先の話である
ずっと先で褒美がもらえるからという理由で何かをしたりはしない
 ▼
子どもにはその傾向がある。
 ▼
将来得られるはずの報いをきちんと考えらえれない傾向は、子供が青年期になるといっそうひどくなる。
ティーンエイジャーはすぐに手に入るご褒美の中毒である
将来のために投資するなんて何もありがたくない
 ▼
自分の衝動を今すぐ満たしたい、という気持ちと、将来の報いを結びつける方法はないだろうか?
成績を上げる3つのアイディア
教育でお金のインセンティヴを使うのは大きな物議を醸しだすが、どう使うのがいいのかよくわかっていない
1.学期や年度の終わりで成績の良い生徒に賞金を払うのではなく、成果を出した瞬間にもっと近い時点で払う
2.お金を支払うのに宝くじを使う
3.インセンティヴを使って親が積極的にかかわるようにする
 ▼
こうしたインセンティヴを使ってプログラムが行われた
参加した400人の学生のうち、がけっぷちの50名を中3で受ける標準検定試験に合格させることができた
落第寸前の生徒たちで見ると、プログラムの効果で合格者は約40%増えている
 さらに
プログラムが終わった後の高校1年になっても、インセンティヴを与えられなかった同級生に比べていい成績を上げ続けた
学校を続けさせるだけでなく、成績を改善できないだろうか?
新たな実験。
 ▼
損失フレイミング:損や罰の形で命題を形作っている
利得フレイミング:利益やご褒美の形で命題を作っている
 ▼
最初に20ドルを渡し、試験の点が前回よりも上がったらそのまま20ドルを持って帰ってよい、だが、上がらなければ20ドルは返してもらう:「損失」グループ
 のと
前回より試験の点が上がったら、試験が終わったらすぐに20ドルがもらえる:「利得」グループ
 とで
どちらの方が成績が良いか
 ▼
いずれの場合も目覚ましい成果を上げたが、
事前にご褒美を渡し、そのうえで成績が上がらなかったら取り上げると脅したほうが、ずっと大幅に改善した
12%向上したのだ
 実のところ
これは学年の人数を3分の1減らすとか、先生の質を大幅に改善するとか、それくらいやらないと期待できない反応の大きさである
先生に同じ手が通用するか?
追加のボーナスを稼ぐチャンスを与えた
 ▼
いったん手にした報酬を取り上げられるかもしれない可能性に直面すると、生徒たちの成績は向上した
改善は4%から6%である
1.子どもたちは即座にもらえるご褒美に強く反応する
2.一度あげたご褒美を取り上げられるかもしれないという脅しは、後でご褒美をあげるよという約束よりも、ずっと強力
3.親が子供の教育に参加すればとても助けになる。それは読み、計算という認知的技能の学習に限ったことではなく、慎重さやなんかの非認知的技能の学習についてもいえる

第5章  貧しい子がお金持ちの子にほんの数ヵ月でどうすれば追いつける?

[保育園への旅]

アメリカで長く続いている貧困対策制度のヘッドスタート
欠陥は
・先生たちの大部分は学がなく、給料も安い。大学を出ているのは30%に満たない
・プログラムの運営が保健福祉省だ(教育省ではない)
 ↓
実験用の学校を作る
グリフィン財団が拠出してくれたグリフィン幼児期センター(GECC :Griffin Early Childhood Center)

2種類の保育園
・心の道具箱のカリキュラムに基づく社会的技能の学習や構造化された遊びが行われれている保育園
 →非認知的技能(=人付き合いなど)を育む
・伝統に沿っていて、読み書き速習と呼ばれるカリキュラムに基づいて勉強中心に作られている保育園
 +
親の学校
→子供の発達度合いに応じたお金にインセンティブを長期と短期で受けられるようにする

将来成功するためには子供たちは幼いころにどのような技能を身に着けていなければならないのか
 ▼
実験は初期の段階だが
科学的な方法に基づいて、正しいインセンティブを与えれば、貧乏な子どもたちは10か月でお金もちの子供たちに負けない能力を身に着けられる

親の学校も
短期的なインセンティブの方が長期的なインセンティブよりもいい成績を出している

第6章  いまどきの差別を終わらせるカンタンな一言とは?

[君が嫌いってわけじゃないんだ、ただお金が愛しいってだけさ]

どんな差別が起きているか
どんな種類のインセンティヴが背後で働いているか
差別の背後にあるインセンティヴがわからないと、社会全体の差別をなくすことはできない

ユダヤ人でゲイリー・ベッカーという人物がいる

ベッカーは差別の経済学を研究し始めた
経済学と社会学を組み合わせようというもので、研究によって、人が差別を行う時、市場や経済のやり取りに何が起きるのかがわかった
 ↓
1957年「差別の経済学」を出した。
そして、1992年ノーベル経済学賞を受賞する

悪意による差別から、現在は別の種類の差別が広まっている
「経済的」差別である
 ↓
この差別は見えにくいがどんどん広まっている
そして、解析は難しく、おうおうにして非道だ

実験によって、悪意や人種差別は、見えにくい経済的差別に変わった
だが、ときどき悪意や人種差別は経済的差別と組み合わさって、ひどい結果をもたらしている
 ここで示されるのは
経済的差別は単純な計算ずくに基づいている
 ということである

第7章  なにか選ぶときにはご用心。選んだものがあだになるかも

[差別の隠れた動機]

同性愛のカップルがどんな扱い受けるのかは
販売担当者の人種に強く影響されていた
 ↓
アフリカ系やヒスパニック系の少数民族の販売担当者は、多数民族(白人)の販売担当者よりも、同性愛のカップルを差別する割合が高かった
 ↓
考えられる理由
少数民族の人たちは、信心深いと認識していることが多く、宗教の多くが同性愛は間違っていると教えていることである

こうした研究結果を持ち寄ると
悪意が頭を持ち上げるのは

差別をする側の人間は、自分が評価しようとしている相手が、自分で選んで問題の特性を身に着けていると思う

時である。
 ↓
心理学者の言う帰属理論にあっている

前章で、今どきの差別を終わらせる簡単なひとことは? → 今日のうちに3件で見積もりをもらう
 ▼
買物をするときに経済的差別に合わないようにするためには、実勢の価格や製品に関する知識を十分に持って立ち向かうこと
取引に関する十分な知識があることをシグナルで送ることによって、販売担当者の差別をするインセンティヴを大幅に変えることができる

第8章  ぼくたちをぼくたち自身から守るには?

[実地実験を使って生きるか死ぬかの状況を学ぶ]

若者の暴力を減らす

都市部の若者を脅かす暴力を減らす。
当時シカゴ市長だったリチャード・デイリーやロン・フーバーマンなどの政策当局者がやってきた。

イリノイ州では服役囚一人当たりに年4万ドルを費やしている
殺人が社会に課す費用は、医療費に捜査費用、法的費用、服役費用など100万ドルを軽く超えると見積もられる
 ↓
どうすれば、納税者の収める血税を、ティーンエイジャーの銃による暴力をもっとも効果的に減らすことに使えるか

フーバーマンは通称「CLEAR」と呼ばれる市民・警察分析報告システムを立ち上げた人物で、シカゴの発砲事件はCLEARが立ち上がった1999年から3分の2も減少している
CLEARの特徴は、統計を追跡してデータを掘り起こす手法に頼っている
 ↓
フーバーマンは校内暴力を減らすために2年に及ぶ実験プログラムを立ち上げた、6000万ドルもつぎ込む
計画を開始するために、700校、40万人超の生徒の中から、銃犯罪にかかわる可能性の高い子をどうやって割り出すのかが、効果的に対応できる体制のために必要だった。
 ↓
要因の分析
1.男であること
2.ヒスパニック系やアフリカ系アメリカ人は同じくらいのリスクにさらされている
3.少年院に入れられた過去があることが強い予測力がある
4.留年していること
 ↓
大体1万人程度に絞れた
 ↓
若年指導プログラムを通じて擁護者に引き合わせる
このプログラムはお金がたくさんかかる
生徒一人当たり平均で1万5000ドルだ
 だが
懲役コストに比べるとなんということもない

肥満

デブの子の割合は1980年以来3倍近くになっている
 ↓
「アメリカ医師会ジャーナル」の1999年の研究によると、アメリカでは毎年28万人から32万5000人の成人がデブをこじらせて亡くなっていると結論付けている
これはよく知られる死亡原因を上回る

子どもに健康的な職を選ばせるためには
 ↓
子どもにクッキーよりも果物を選ばせるためには何が必要だろう?
 ↓
栄養に関する教育を施した、いわゆる食育は効果がない
 が
ご褒美をあたえると果物を選んだ

クッキーを届かないところに置くというのも効果がある
 ↓
カギはやり方である

臓器提供

臓器提供には2つやり方がある
1.参入オプション…提供者になると明示的に意思表示をする
2.脱退オプション…拒否しない限り自動的に提供者になる
 ↓
脱退オプションを取るオーストリアなどでは99%の提供者の割合で、参入オプションを取るドイツでは12%程度

脱退オプション制は
シカゴ大学の行動経済学者・リチャード・セイラーが「そっと後押し」と呼ぶ実例

『ハーバード大学のキャス・サンスティーンと一緒に書いた「実践 行動経済学」(日経BP社2009年)』

明示的な約束のもとでも臓器提供率を高めることはできないだろうか?
 ↓
登録するための書類を簡単にする
 つまり
障害を減らし、手間暇を節約させると、そっと後押しをするよりも、ちょっとだけうまくいく

地球温暖化対策のために

白熱灯から電球型蛍光灯に変えさせるには
 ↓
社会規範
隣の○○さんがやっているといったような、漠然としたきっかけで、人は他人の後を追うようになる
 ↓
人にふるまいを改めてほしければ
社会規範と値段のコンビネーションである

第9章 人に寄付をさせるのは本当はなんだろう?

[心に訴えてもだめ、見栄に訴えろ]

なぜひとは寄付をするのだろう?

どんな種類の組織もそうだが
自分の先達たちが意志決定に使っていた通念や「直感」に従いがち
検証可能なデータよりも、そうしたものに頼りがち

募金の世界はどんな仮定に基づいて動いているのだろう?
 ↓
目標金額の33%が必要なシードマネーだという
つまり15000ドル集める必要があるなら、まず5000ドル必要ということだ
33%が魔法の数字だという
 だが
根拠がない
 ↓
業界を動かしているのは言い伝えであり、科学ではない

シードマネーは寄付を集めるのには有効だった
でも
33%は間違っていた
 ↓
必要な金額の33%は集まっていますと書くよりも、67%が調達できていると書いた方が募金の額は大きかった
 ↓
寄付する人は
自分が助けなくても目標は達成できる
他の人たちの寄付にただ乗りできると感じる
 ↓
人はリーダーについていけ、みたいな行動をとりたがる

マッチングギフト
あなたが100ドル寄付してくれたら、篤志家が同じ額の100ドルを寄付することになっています
といったたぐいの方法
 ↓
上乗せの大きさは関係ない
つまり、あなたが1ドル寄付したら篤志家が1ドル寄付して2ドルとなる場合と、1ドル寄付したら篤志家が2ドル寄付して3ドルとで差がないということだ

研究によって透けて見えてきたのは
「暖かな光」仮説だ
 つまり
暖かな光は、寄付をするといい気分になれるところからきている
 ようするに
不純な思いやり ということ

 となると
寄付をすればどれだけいい気持になれるか教えてあげて、欲に訴えることが大事ということだ

美形が寄付に来た場合
たしかに、寄付の額は大きくなる
 だが
美形効果は生涯を通じて寄付を呼び込んではくれない
 ↓↑
宝くじの要素を加えると
寄付を募るだけの場合に比べて50%ほど総額が増え
その後何年も寄付を続けていた

トンティン方式は有効ではある
ロレンツソォ・トンティ、ナポリ出身で1650年代にフランスのマザラン枢機卿に見いだされるまで無名だった
彼は、生きていることを条件とした年金の一種で、生き残った人が給付金を受け取る仕組みを提言した
 ↓
アメリカでは禁止されている方法
(考えればわかるが、誰かが死ねば分け前が増えるので、殺人のインセンティブが働いてしまう)

第10章  割れた唇と「これっきり」のチェック欄から、人が寄付をする理由についてわかること

[おたがいさまというすばらしい現象]

前の章は、人がいろんなことに突き動かされて行動するのを見た
暖かな光を感じたいという自分本位で人間的な欲求もそんなことの一つだ
 この章では
ダイレクトメールを使ったユニークな実地実験が、根本的で人間的な欲求に訴えるのかを見ていく

ブライアン・マラニー
スマイル・トレインを設立した
 ↓
寄付をする人たちにどんなインセンティブを与えるのが一番うまくいくのかを実地実験している
 その結果
事前と事後の写真を見せるのと、片方だけ見せるのとでは、事前だけの写真を載せた方が反応率が17%も高かった
つまり、「自分が助けなければ」、寄付をする人はそう思う

こうした実地実験の結果
スマイル・トレインの発見は
悲しそうな顔をした白人(アフガニスタン人)の子供の写真
寄付をする人の半分以上を占める白人寄付者は自分と同じような外見の相手を助けるのを好むからとブライアンは推測している

ブライアンの実験にさらに行動経済学の手法を取り入れる

2008年4月実験が始まる
「今、寄付を一度いただければ、二度と寄付はお願いしません」
そして、寄付をする人には「寄付はこれっきりにします、確定申告用の領収書を送ってください。二度と寄付を頼まないでください」というチェック欄を設けた
さらにもう一つ「制限つきでダイレクトメールを受け取る」を選べるようにした
 ↓
「これっきり」で出した方が多くの寄付が集まる
そして、チェック欄に印をつけたのはたった39%だった
標準の手紙の2倍近い反応がある そして 平均の寄付額も少し増える
 ↓
いったいなぜだ?

主導権を慈善団体から寄付者に移せば流れが変わる

第11章  管理職は絶滅の危機?

[職場に実験の文化を作るには]

実地実験を行わなかったがために、とんでもない損失を出したのがネットフリックス
実験なんてやると金がかかるからなぁ
 という経営者
実験をやらないことこそお金がかかるのである

インテュイットでは働き手にデザイン思考を植え付けた
問題を調べ、情報を集め、想像力を駆使して解決策を作るための方策だ
 そして
仮定や仮説を実験で検証する
 ↓
会社の全部門が実験の企業文化にのっとって、仕事をするようになる

実地実験をやっている会社の例がもう一つある
ヒューマナである
もとは介護ホームと病院のチェーンだったが、現在は医療保険の巨大企業である
 ↓
医療費を抑え、同時に国全体の健康状態の悪化も食いとめる

ダイレクトメールの返事をもらうには
 ↓
先に報酬を送るか、後で送るか
 ようは
人付き合いか、条件付きか
 で、
条件付きでお金を払う方が、先に払うより安くつく
 ↓
実験で学べるのは
予算が限られていて、少額なら、少ない額を封筒に入れて一緒に送ってしまった方が良い
だが、一人あたりに仕える額がそれなりにあるなら、アンケートを送り返してくれた人だけに払う方が良い

アメとムチ
「利得フレイミング」と「損失フレイミング」のどちらの方がやる気になるか
 ↓
明らかに得たものを失う恐れの方が、得られる見通しの喜びよりも、働き手のやる気を引き出せる
 ↓
枠組みの仕切りが大事
働き手に出来高に応じた支払いをすることにして、そのうえで、出来高が低ければ失うものがあることに関心を向けさせる
 そうすれば
効果が実現できるはず

目次

ご紹介
はじめに 思い込みの向こうへ
[人がやってることって、どうしてそんなこと人はやってるんだろう?]
第1章  人にやってほしいことをやらせるには?
[インセンティヴが働く(働かない)のはどんなときか、そしてそれはなぜか?]
第2章  女が男ほど稼げないのはなぜか? クレイグズリスト、迷路、それにボールとバケツでわかること
[キリマンジャロのふもとの平原にて]
第3章  母系社会は女性と競争について何を教えてくれるだろう?
[カーシ族を訪ねる]
第4章  惜しくも銀のメダリストと大健闘で銅のメダリストが成績格差を埋めてくれる、とは?
[公的教育:6270億ドルの問題]
第5章  貧しい子がお金持ちの子にほんの数ヵ月でどうすれば追いつける?
[保育園への旅]
第6章  いまどきの差別を終わらせるカンタンな一言とは?
[君が嫌いってわけじゃないんだ、ただお金が愛しいってだけさ]
第7章  なにか選ぶときにはご用心。選んだものがあだになるかも
[差別の隠れた動機]
第8章  ぼくたちをぼくたち自身から守るには?
[実地実験を使って生きるか死ぬかの状況を学ぶ]
第9章 人に寄付をさせるのは本当はなんだろう?
[心に訴えてもだめ、見栄に訴えろ]
第10章  割れた唇と「これっきり」のチェック欄から、人が寄付をする理由についてわかること
[おたがいさまというすばらしい現象]
第11章  管理職は絶滅の危機?
[職場に実験の文化を作るには]
おわりに  世界を変えるには……まあ、少なくとも得をするには
訳者あとがき

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