全ての知識と知恵はSDGs(Sustainable Development Goals)のために。

「動乱のインテリジェンス」内容の要約と紹介:佐藤 優,手嶋 龍一

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本書でいうインテリジェンス

ここでいう「インテリジェンス」とは、知性や教養を言っているわけではありません。

「諜報活動」およびそれに伴う「分析」を含む一連の知的活動を指しています。

うかつにも、現在の不安定な世界情勢の中において、いかに知識を得ていくのかという、一種の教養書なのかと思うところでした。

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【目次】

第1章 日本の周縁で噴出するマグマ
新・海国兵談/竹島をめぐる「日韓密約」疑惑/偏狭なナショナリズムに立ち向かう勇気/周辺国の外交攻勢に怯む日本/辺境のインテリジェンス/民族とインテリジェンス/沖縄入りを果たせなかった黄門さま/亜民族のマグマ/民族のシンボルをめぐる闘争/資源大国としての沖縄/中国を喜ばせた石原構想/沖縄の眼に映る尖閣問題/独立琉球国という作業仮説/北海道独立論/領土交渉の独創的アプローチ/未解決の領土問題、その密かな戦略/プーチンのニュー北方領土戦略
第2章 中国、そのモラルなきインテリジェンス
英国”ビジネスマン”の怪死/赤い貴公子たち/盗聴ネットワークが聞いたもの/重慶製ミサイル運搬車の密輸/中国外交官の三流スパイ事件/戦略の海に乗り出す中国海軍/洋上カジノが空母に化けた/ロシア・パブのウクライナ女性
第3章 イランの鏡に映る日本外交
会見写真から消えた男/二元外交の様々な顔/よい二元外交、悪い二元外交/鳩山外交の罪と罰/熟練のプロの手に落ちた鳩山/操られた鳩山発言/イランが狙い撃ちした鳩山家のDNA/インテリジェンス大国イラン/一歩間違えば、日本発金融恐慌/ラスプーチン事件の陰にイランあり/対イラン独自外交の幻想
第4章 イランの核、北朝鮮の核
核開発、それぞれの狙い/北朝鮮・イランの密やかな絆/アサド政権が存続している理由/ミサイル発射情報はなぜ遅れたか/サード・パーティ・ルール/サード・パーティ・ルールを遵守した日本/せめて猫のインテリジェンスを
第5章 アジア半球の新たな勢力地図
「トモダチ」がやってきた/海兵隊は大型ヘリに乗って/インテリジェンス・サイクルは回っているか/アメリカの介入、その喪われた機会/ナルシシズムは情報センスの大敵/情報都市としてのTOKYO/黄昏れゆく日米同盟/ギリシャ危機の深層/TPPの政治経済学/アメリカは東アジアに回帰するか/プーチンを驚かせた日本の選択

第1章 日本の周縁で噴出するマグマ

中国との関係をめぐって

尖閣諸島周辺の領海が侵されようとしているが、領海と領空では国際法的な地位が全く違う。
領空を外国機が許可なく侵犯し、命令に従わなければ、撃墜してもいい。
だが、領海の場合、無害通航権が国際法で認められている。
尖閣諸島を国際法的に日本固有の領土であると中国と交渉しない理由
 ▼
外務官僚が中国政府と難しい交渉をしなければならない。
中国も必死に理論武装をして挑んでくるので、外務官僚はそれが面倒でサボっているだけである。
中国全土に広がった反日の運動は、中国指導部も肝を冷やしたはず。
中国社会の深層には強権体制への不満や、特権階級に対する怨嗟がとぐろを巻いている。
反日を隠れ蓑にすれば、重罪に問われない。
 つまり
体制に不満がある人々には「反日」は安全な切り札である。
 ▼
こうした情勢下では、日本側の道義的な優位性こそが、国際社会に日本の主張の正しさを訴える決め手になる。
だからこそ、国内の中華学校や中国系企業には手を挙げてはいけない。

新・帝国主義

外部世界からの「収奪」と「搾取」を強めて自国の生き残りを図り、繁栄を築く点では変わりない。
自国の要求を最大限主張し、相手が怯み、国際社会も沈黙するのなら、そのきに乗じて自国権益を拡大していく。
韓国が仕掛けているのは、こうした戦略の基づくもので、慰安婦問題という歴史カードまで使って国際社会の共感を得ようとする「プチ帝国主義外交」である。
 ▼
日本は「品格のある帝国主義国」として、対話と国際法を武器に国際社会に訴えていくべきである。
韓国政府との間には、1965年に国交を正常化するにあたって「交換公文」を交わしている。
「交換公文」は条約や多国間の協定に準じる公式の権威ある国際約束である。
 ▼
この「交換公文」の存在を蒸し返されるのは、外務省としては迷惑である。
かなりの裏事情があり、事情が込み入っているからである。
 ▼
結果として「竹島密約」が存在していたことは韓国側にも衝撃を与えた。
日本側では当事者間で語り継がれていたが、韓国側ではそのことを知らなかったからである。

沖縄

日本のインテリジェンスにとって最も重要な事項の一つは、いかに沖縄を確保するかである。
辺境地帯では特別なインテリジェンスをしなければならない。
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沖縄出身の学者では、1609年の薩摩の琉球入りを「琉日戦争」と呼ぶ人が増えている。
民族に関する研究が進んでいる国は、イギリス、ロシア、アメリカ。
アメリカには、コーネル大学のベネディクト・アンダーソンがいる。
アンダーソンが考え出したのが「想像の共同体」という概念。
民族は想像された政治上の共同体であり、それは主権的なものであり、国家内の権力を超越しかつ限定している。
 ▼
民族は近代の随伴現象であるから、まだ、二百数十年の歴史しかない。
「民族」という概念は現代的なものであり、近代の宗教である。
戦後の日本の外部領域が、沖縄である。
沖縄は天皇信仰を持っていない。歴史的な経緯が異なり、自己認識が違う。
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帝国とはこうした異質なものを内包する力を持っていなければならない。
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沖縄にはすでに分離独立の芽がある。
そうしたマグマが胎動を始めている。
亜民族意識が民族意識に変わるときというのは、知的エリートが動き出す。
もう、そうしたプロセスが動き始めている。
メタン・ハイドレイトなどを含めれば、日本の排他的経済水域には膨大な資源が眠っている。
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沖縄はそうした資源王国の中央に位置している。
沖縄は計り知れないほど重要なかなめ石である。
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怖いのは沖縄の「トルクメニスタン化」である。
トルクメニスタンはソ連崩壊後、永世中立国になっている。
永世中立の条件は、外国軍隊が駐在していないこと、軍事同盟を結ばないこと。隣接国が全部、中立化を承認すること。
 ▼
もし沖縄が独立し、永世中立国になると言ったら、中国は承認するだろう、フィリピンも承認だと思われる。

ニュー北方領土戦略

黒竜江・アムール川を挟む、中国・ロシアの動向は近未来を読み解くうえで見逃せないファクター。
中国の東北3省は1億人の人口を抱えている。
ロシアはバイカル湖以東のシベリアには640慢人しかいない。
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圧倒的な非対称は、ロシアの極東部に一種の戦略的な空白を生んでいるとプーチン政権は受け止めている。

第2章 中国、そのモラルなきインテリジェンス

重慶事件

「21世紀の三国志」とでも呼ぶしかない壮絶な人間ドラマ。
天安門事件以来といわれる、中国共産党内の権力闘争を色濃く反映している事件であった。
2011年11月15日
薄熙来が共産党の書記として君臨していた重慶。
ホテルで英国人のビジネスマン、ニール・ヘイウッドが死体で発見された。
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薄熙来の腹心の王立軍が毒殺ではないかと疑いを持ち、薄熙来に報告したところ、公安局長のポストを解任された。
その後、王立軍がアメリカ総領事館に駆け込んだため、米英の情報当局を巻き込んだ重大な様相を帯びてくる。
イギリスは国をあげて薄熙来一家を取り込むために「オックスブリッジ・カード」を斬っていた。
将来に備えた人脈作りだ。
アメリカも同様のことをしている。
たとえば、周近平の娘もハーバードに通っている。

中国のインテリジェンス・ネットワーク

東京でも着実にすそ野を広げている中国のインテリジェンス・ネットワーク。
在日中国大使館の一等書記官のスパイ事件がその典型。

第3章 イランの鏡に映る日本外交

会見写真から消えた男
2012年4月
鳩山由紀夫元首相がイランを突如訪問した。
 ▼
会見の写真。
日本外務省の通訳が写っていない。
このケースは悪い二元外交を論じるのにうってつけの題材である。
教科書に載せたいような悪い二元外交は、歴史ではめったに起きない。
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相手の目に立ってみれば
最大の問題点は、交渉の相手国が日本を容易く操れる、その一点に尽きる。
東京は隠れたインテリジェンス都市といわれるが、今回、規格外の政治家を現実の外交の道具としてテヘランへ連れて行き、イランにとって好都合な発言をさせる、という実に巧みな力が働いた。
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爆弾発言をしたにもかかわらず、本人には成功したと確信させているお手並みは鮮やか

第4章 イランの核、北朝鮮の核

国際社会が直面する二つの核の問題。

イランと北朝鮮。
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アメリカにとって、重要性が高いのはイラン。
北朝鮮に比べて控えめに言っても、10倍以上の重要性がある。
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同盟国との関係が背景にある。
 北朝鮮には日本
 イランにはイスラエル
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アメリカにとって、日本とイスラエルの比重はけた違い。
別の視点でいえば、ワシントンにおける日本とイスラエルのロビー活動の能力の差である。
また、
核武装の意図の違いもある。
イランは、イスラム原理主義革命の完遂にあり、イスラエルを地上から抹消するという宗教的な信南。
北朝鮮は金王朝を保全するための国体護持。これを保障してくれさえすれば、核を俎上にあげて話し合うことができる。

シリア情勢

アサド政権が完全に崩壊しないのは、第一にイラン、第二にロシアの支持があるため。
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イスラエルとロシアが心配しているのは、権力の空白ができることによって、そこにアルカイダが入り込むことである。

第5章 アジア半球の新たな勢力地図

今回の大震災で東アジアの新しい局面の幕が開けたと受け取るべき。
戦後の日本が一つ終焉を迎えたと考えるべきかもしれない。
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「トモダチ作戦」では、沖縄の海兵隊のヘリコプターや輸送機がどんどん降りてきた。
日本側の動きをしり目に。
日本側は誰も明確な形ではアメリカ軍に出動を要請していない。実態はアメリカの独断専行に近かった。
インテリジェンスにとっての一番の障害は「ナルシシズム」
大震災の時の菅首相がそうであった。
教育程度は高い、情報もそれなりに集めている。自分も走り回る。
だが、自己愛が決断をゆがめた。

新・帝国主義

帝国主義の本質は「搾取」と「収奪」にある。
ヨーロッパにとってみれば、ユーロを安くすれば輸出に有利で、それだけEU域外から収奪できる。
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日本は大震災の影響でまだ苦境から抜け出せていない。
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本来、通貨はその国の経済力を反映しているはずだが、弱っている日本の円が、ここまで強い理由。
それは、「帝国としてのアメリカ」が基軸通貨たるドルをダンピングさせ、「帝国としてのEU」もユーロをダンピングさせているのが原因といっていい。
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歴史的な円高は、近代経済学の理屈では説明しにく現象。

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