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「言ってはいけない 残酷すぎる真実」内容の要約と紹介:橘玲

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進化論、遺伝学、脳科学の知見

高い?それとも低い? 東大卒の両親から生まれた子の東大合格の確率は20%?

記事で書かれている数値がどこからきているのかは不明ですが、興味深い内容です。著者の言いたいことは記事の後半にありますので、抜粋した部分が著者の主張したいところではありませんが、数値が出ていますので抜粋いたしました。

高い?それとも低い? 東大卒の両親から生まれた子の東大合格の確率は20%?  | AERA dot. (アエラドット)
うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格。ベストセラー『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』の著者・杉山奈津子さんが、今や5歳児母。日々子育てに奮闘する中で見えてきた“なっちゃん流教育論…

両親ともに東大を卒業していたとしても、子どもが東大に入れる確率は、たったの20%しかないのだそうです。IQは遺伝すると言われていますが、もし知能の60%が遺伝だと仮定しても、行動遺伝学に基づいて計算してみると、全国模試のE判定(最低ランク)と同じ合格率にしかならないのです。

片親だけが東大なら、さらに5%まで下がるとのこと。両親が東大卒で、金銭的にもよゆうがあり、子どもの教育環境が整っているケースだと少々確率は上がるそうですが、それでも高くて40%という数値になるようです。

つまり、たとえ両親の偏差値が高くても、必ずしも子どもの偏差値が高くなるわけではないのです。

遺伝学者のフランシス・ゴルトンが親子の身長に関してデータを解析したところ、低い身長の親から生まれる子どもは親よりも少し高い身長になり、高い身長の親から生まれる子どもは親よりも少し低い身長になる、といった傾向があることを発見しました。

そして、特にとびぬけて身長が高い親・低い親のほうがその傾向は強く表れることも判明しました。このように、偏った数値が徐々に平均値へ近づいていくことを、「平均への回帰」と呼びます。

 つまり、たとえ両親の偏差値が高くても、必ずしも子どもの偏差値が高くなるわけではないのです。

遺伝学者のフランシス・ゴルトンが親子の身長に関してデータを解析したところ、低い身長の親から生まれる子どもは親よりも少し高い身長になり、高い身長の親から生まれる子どもは親よりも少し低い身長になる、といった傾向があることを発見しました。

そして、特にとびぬけて身長が高い親・低い親のほうがその傾向は強く表れることも判明しました。このように、偏った数値が徐々に平均値へ近づいていくことを、「平均への回帰」と呼びます。

https://dot.asahi.com/dot/2020081400060.html?page=1

令和2年の情報は次の通りです。

東大の入学定員は3,060人、京大の入学定員は2,823人。合わせて5,883人。

令和2年の18歳人口は1,167,348人。人口比で計算した場合、東大or京大に入れるのは同世代で0.5%です。

両親ともに東大卒業の場合、20%ということですので、40倍の差異があります。片親だけが東大卒業でも5%ですので、10倍の差異があります。

平均への回帰

偏った数値が徐々に平均値へ近づいていくことを「平均への回帰」と言いますが、遺伝学者のフランシス・ゴルトンの研究結果によって知られるようになりました。

「平均への回帰」は身長においてもその傾向が認められることが分かっています。特にとびぬけて身長が高い親・低い親のほうがその傾向は強く表れるそうです。

日本スポーツ協会によると、子どもの身長は、男の子は(父の身長+母の身長+13)÷2、女の子は(父の身長+母の身長-13)÷2、という式で予測されます。

身長が高い両親から、より身長が高い子が生まれ続けるとしたら、その家族の背丈はあっという間に2mを超えてしまいますが、そうはなっていません。

さて…

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知能に関する行動遺伝学の結論

行動遺伝学の結論によれば、論理的推論能力の遺伝率は68%、一般知能(IQ)の遺伝率は77%です。これは知能の違いの7〜8割を遺伝で説明できることを示しています。

科学的知見は不都合なイデオロギーとして拒絶するのではなく、社会の偏見を無くす努力のために使われるべきです。

これまでリベラルと言われる人たちは、環境によって知能の差が生じると考えてきました。いわゆる環境決定論です。

しかし行動遺伝学の研究により、知能が環境のみによって決まるという仮説は否定されました。

言語性知能は家庭環境の影響を強く受けますが、認知能力における遺伝の影響はきわめて大きいことが分かっています。

知能が遺伝の強い影響を受けているという行動遺伝学の知見を認めた上で、個人の人権を平等に扱い、効果的な再配分や社会福祉を設計した方がずっと現実的でしょう。

しかし、これは簡単ではありません。それは私たちの社会が知能の呪縛にあまりにも強くとらわれているからです。

アメリカの政治学者チャールズ・マレーと行動計量学者のリチャード・ハーンスタインが1994年に出版した「ベルカーブ」は全米で憤激の嵐を巻き起こしました。

マレーは、そこでアメリカ社会を分断するものを述べました。

それは、アメリカの経済格差は知能の格差、というものです。

実は日本においても知見の格差が経済格差として現れています。

この残酷な真実を直視するのを恐れ、知能と貧困の明白な関係に気づかないふりをしてきました。

税金を投入して高等教育を無償化したところで教育に適性のない層の困窮は改善せず、知識社会に適応した層の既得権がまた1つ増えるだけになります。

行動遺伝学者は、研究によって人格や能力の形成についての重要な事実を発見します。遺伝と環境の影響です。

家庭が子供に与える影響のうち、認知能力や性格、才能などはほとんど影響がないことが分かっています。

子育ての経験があれば、どこかで納得できるのではないでしょうか、なぜなら子供は親の思い通りにはぜんぜん育たないからです。

子供の人格形成に決定的な影響を与えるのは、友だちの世界、です。

ですが、親が無力かというとそうではなく、親が与える環境(友達関係)が子供の人生に決定的な影響を及ぼしますので、親の一番の役割は環境を与えることになります。

行動遺伝学とは

行動遺伝学は、ヒトのさまざまな性質の遺伝と環境の影響を調べる学問分野で、半世紀以上にわたって膨大な研究を積み上げてきました。

行動遺伝学の知見には、世の中のタブーにふれるものが少なくありません。

その最たるものが知能と学業成績に関する事実です。

行動遺伝学が扱ってきた心理学的な特徴の中で、知能と学業成績は、最も遺伝の影響が大きい特徴のひとつです。

行動遺伝学で重要なのは、行動遺伝学者エリック・タークハイマーが2000年に発表した「3原則」です。

  • 第1原則:ヒトの行動特性はすべて遺伝的である
  • 第2原則:同じ家族で育てられた影響は遺伝子の影響より小さい
  • 第3原則:複雑なヒトの行動特性のばらつきのかなりの部分が遺伝子や家族では説明できない

行動遺伝学は「遺伝決定論」だと誤解されがちですが、第1原則(遺伝の影響は広範に及んでいる)と第2原則(子育ての影響とされているものの多くは親から子への遺伝である)しか見ていないためです。

より重要なのは第3原則で、個性(わたしらしさ)には遺伝と子育て以外の「なにか」が強く影響しているのですが、この「なにか」を「非共有環境」と呼んでいます。

行動遺伝学では、「こころ」を「遺伝率+共有環境+非共有環境」で説明する。

遺伝率は外見、性格、精神疾患などのさまざまなばらつき(分散)を遺伝要因でどれだけ説明できるかの指標で、身長や体重ではおよそ70~80%になります。

なお、この遺伝率は「親から子へ遺伝する確率」ではありません。

例えば、身長や体重ではおよそ70~80%は遺伝的要因によって生じているされますが、これが意味するのは、「背の高い親から70~80%の確率で背の高い子どもが生まれ、20~30%の確率で子どもの背は低い」ということではありません。

ヒトの身長の遺伝率はかなり高いですが、20世紀にいくつもの国で平均身長が急激に伸びており、これは栄養状態が改善したことによります。

共有環境は「きょうだいが同じ影響を受ける環境」のことで、一般には家庭環境(子育て)とされます。

非共有環境は、きょうだいが異なる影響を受ける環境とされます。

非共有環境のうち、家庭内の非共有環境としては、「家族構成(生まれ順、性差)」「きょうだい関係(きょうだいへの嫉妬)」「子育て(子どもへの愛情のちがい)」などです。

一方、家族外の非共有環境としては「学校や地元の友だち集団」「教師」「ソーシャルメディア」などです。

社会的・経済的成功を決めるのはIQや学歴だけではなく、「コミュ力(話し方)」や「やり抜く力(GRIT)」、「人間力」だと思っていますが、これらも遺伝の影響を受けています。

遺伝率は「やる気」が57%、「集中力」が44%で、努力できるかどうかのおよそ半分は遺伝で決まるのです。

つまり、頑張りたいと思っていても、それでも頑張れない人が居るのです。

近年、教育現場でカウンセリング、チューター制度、学校外活動、ジョブトレーニングなどさまざまな試みが行なわれています。

子どもたちの「非共有環境」に介入しようとするもので、行動遺伝学の知見では、子どもの選択・行動は遺伝だけでなく非共有環境が強く影響するので、考え方としては間違ってはいませんが、期待ほどの成果をあげていないようです。

理由は、子どもたちは「教育」以外のほとんどの時間を他の非共有環境、すなわち友だち集団のなかで過ごしているためです。

子どもの選択・行動に外部から大きな影響を与えたいのなら、養子に出す、他の地域に引っ越す、転校するなど、非共有環境をまるごと変えるような介入が必要になります。

目次

まえがき
I 努力は遺伝に勝てないのか
【1】遺伝にまつわる語られざるタブー
馬鹿は遺伝なのか/依存症・精神病は遺伝するのか/犯罪は遺伝するのか
〔コラム1〕遺伝率
〔コラム2〕遺伝と犯罪
【2】「頭がよくなる」とはどういうことか――知能のタブー
親の収入と子どもの学歴の関係は/人種とIQについてのタブー/差別のない平等社会をつくれないワケ/「知能格差」の真因とは
〔コラム3〕ユダヤ人はなぜ知能が高いのか
〔コラム4〕アジア系の知能と遺伝
【3】知識社会で勝ち抜く人、最貧困層に堕ちる人
経済格差の根源は何か/超高学歴でエリート主義のスノッブたち/強欲な1%と善良で貧しい99%/日本社会に潜む「最貧困層」
【4】進化がもたらす、残酷なレイプは防げるか
犯罪は「凶暴な男」の問題/進化のために赤ん坊が殺される/妻殺しやレイプを誘発する残酷な真実/オランウータンもレイプする/夫婦間のレイプはなぜ起こるのか?
〔コラム5〕実の親と義理の親の子殺し
〔コラム6〕家庭内殺人と血縁
【5】反社会的人間はどのように生まれるか
こころを支配するもの/心拍数と反社会的行動の因果関係/犯罪者になる子ども、実業家になる子ども/「発汗しない子ども」は良心を学習できない/「賢いサイコパス」と「愚かなサイコパス」/少年犯罪者や異常性欲者への驚愕の治療法/脳科学による犯罪者早期発見システム/子どもの選別と親の免許制/非科学的な人権侵害よりも脳科学による監視社会を
〔コラム7〕犯罪と妊婦の喫煙・飲酒
II あまりに残酷な「美貌格差」
【6】「見た目」で人生は決まる――容貌のタブー
写真から性格や未来がわかる/外見から知性は推測できる/「最初の直感」の的中率/「面長の顔」は「幅の広い顔」に殺されている/顔立ちによる残酷すぎる損得
【7】あまりに残酷な「美貌格差」
美人とブスでは経済格差は3600万円/「美貌格差」最大の被害者とは/会社の業績を上げる経営者の顔とは/容姿による差別を生む市場原理
【8】男女平等が妨げる「女性の幸福」について
「男と女は生まれながらにしてちがっている」/男と女は別々のものを見ている/「男らしさ」「女らしさ」の正体とは/「母性愛」のもと、オキシトシン/男女でちがう「幸福の優先順位」
〔コラム8〕女子校ではなぜ望まない妊娠が少ないのか
【9】結婚相手選びとセックスにおける残酷な現実
一夫多妻と一夫一妻はどちらが得か/メスの狡猾な性戦略/避妊法の普及が望まない妊娠を激増させる/低学歴の独身女性があぶれる理由
【10】女性はなぜエクスタシーで叫ぶのか?
ヒトの本性は一夫一妻?/睾丸とペニスの秘密/女性の性衝動は弱いのか?/チンパンジーとボノボ/農耕社会がすべてを変えた?/女性がエクスタシーで叫ぶ理由/フリーセックスのユートピアは遠い
III 子育てや教育は子どもの成長に関係ない
【11】わたしはどのように「わたし」になるのか
双生児の奇妙な類似/「高貴な血」と「穢れた血」/遺伝するもの、しないもの/「こころの遺伝」の明暗
【12】親子の語られざる真実
「氏が半分、育ちが半分」の真偽/言語・宗教・味覚にまつわる遺伝の真相/子どもはなぜ親のいうことをきかないのか
【13】「遺伝子と環境」が引き起こす残酷な真実
同じ遺伝子でもちがう性格になるケース/「選抜された22人の少年たち」の実験/黒人少年が生き延びるたったひとつの方法/英才教育のムダと「バカでかわいい女」
あとがき
注釈:参考文献

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