本書で分かるのは、ギフテッドが思うほどにはレアではないということです。
アメリカで6%〜10%と言われており、社会経済的な背景に関係なく、どんな階層・地域にも存在すると言われています。
つまり、日本でも同じ割合でいる可能性が高いということです。
イメージのギフテッドは、100万人に1人の逸材とか、100年に1人の逸材とか、極めてレアな存在だと思っていましたのでとても意外です。
なお、ギフテッドは勉強ができる子供だけを指しているわけではありませんので注意が必要です。
本書の対象者
本書は子供がギフテッドである親向けに書かれたものです。
ギフテッドを授かったものの、どう育てれば良いか分からないご家庭には参考になると思います。
逆に、教育方法論などに期待して読む場合、参考にならないかもしれません。
なぜなら子供がギフテッドであることが前提ですので、普通の子のことは念頭にないからです。
巻末にギフテッドかどうか判定する簡易的なテストがついています。
それを利用して自分の子供がギフテッドの可能性があるかをチェックしてみるのもよいと思います。
なお、ギフテッドかどうかは、専門の機関で判定してもらう必要があります。
最後に、本書は学問的裏付けのある本ではありませんので、ご参考程度に読むのがよいと思います。
内容の要約
はじめに
gifted =ギフテッドとは、神に与えられた才能を持つ人のことで、天賦の才能のある人のことです。
ギフテッド・チルドレンは社会経済的な背景に関係なく、どんな階層・地域にも存在すると言われています。
アメリカでは6〜10%の子どもがギフテッドという統計がありますので、それほど稀な存在というわけでもありません。
第1章 なぜアメリカに天才が多く出現するのか
日本にもギフテッドはいるのですが、ギフテッドの認定制度や飛び級制度がないから、顕在化していないという指摘があります。
第2章 ギフテッド・チルドレンとは、どんな子?
ギフテッドは努力型の秀才ではなく、ほぼ生まれつき授かった才能を持つ個人です。
ですが統一された定義が存在していません。ギフテッド・チルドレンが通う私立の学校の多くが、独自の定義と評価方法を持っています。
アメリカ連邦政府の定義は、知性、創造性、芸術性、リーダーシップ性、または特定の学問での偉業を成し遂げる能力のある個人を指します。
全米天才児協会によると、例外的な論理能力と学習能力の才能をもつ個人を指します。
モントリオール大学のフランソワ・ガニエ教授は、未訓練かつ自発的に表に出る自然な能力のことを指すとしています。
- 知性
- 想像力
- 芸術性
- リーダーシップ
- 特定の学問
- 運動能力
これら6つのカテゴリーは表面的なものですが、このうちの一つでも、同年齢の子どもと比べて、上位10%に入る子どもをギフテッド・チルドレンといいます。
第3章 ギフテッドを埋もれさせない!
アメリカでギフテッドとして認識され、育てられているアメリカ人の子供の大半が、白人とアジア人です。
アフリカン・アメリカンで見ると、2人に1人のギフテッド・チルドレンが発掘されることがないというデータがあります。
現在のギフテッド教育界の一番の課題は、マイノリティにおける発掘と異文化で育った子の認定方法です。
貧困による格差と並んで、ギフテッド教育界の大きな関心ごとは、ギフテッド・チルドレンが社会的に受けるスティグマ(烙印)の問題です。
多くのギフテッド・チルドレンにとっては、成績が悪くても人気のあることの方が、成績優秀で社会から孤立するよりも大事なのです。
そしてギフテッド・チルドレンが周りに合わせていた場合、ギフテッドと気が付かずに一生を終えてしまうことも珍しくありません。
第4章 進化するアメリカの教育
貧富の差が激しいアメリカでは、頭脳の差も激しいというデータがあります。
近年では落ちこぼれ防止法などによって学力の平均値が90年代以降で緩やかに上昇に転じています。
アメリカの教育は、ギフテッド教育に注力するか、落ちこぼれをなくして平均値を上げるのに注力するかの二方向で揺れ動いてきました。
一方で日本は1990年を境に、日本人生徒の18種類のテストの成績は落ちています。
2009年に文科省はピサ調査をもとに、学力の中位層・高位層が減り、学力の低い層が増えつつあると文部科学白書に描きました。
第5章 ギフテッド専門クラスの授業
ギフテッド教育はプロジェクト・ベースでやることが多いです。
いかにプロジェクト・ベース、アクティビティ・ベースの授業形態が大切か、いかに幼い頃からテクノロジーの使い方を教えるかが大事です。
そしてどんなプロジェクトをやっても、どんな発言をしても、成績には関係ないリスクフリーの環境が整っています。
評価基準はスタート地点と比べてどのように成長したかです。
ギフテッド・チルドレンにとって一番大切なのは、自己肯定をして学ぶ楽しさを知ることです。
そこで心理学者のエリック・エリクソンの発達心理学のフレームワークに基づいて、人格が形成されると言われる10代前半までに、ポジティブな土壌を作ってあげるのが重要です。
第6章 親としてできること
- 結果は褒めない。褒めるのは過程のみ。努力したというプロセスを褒めるのが大事。
- 答えは教えない。自分で答えに辿り着くプロセスを教えることが大事。
- アイデアブックを活用する。
- 簡単な成功はない。粘り強さや(グリッド)、失敗からすぐ立ち直る能力(レジリエンス)
- 世の中の問題は、実は最高のチャンスである。
- 親の辞書に「面倒くさい」はない。親は面倒くさがってはいけない。
そして、子供の教育をアウトソーシングばかりしてはいけません。
子育ては、20年以上かけてはじめてリターンが得られる、非常に根気のいるロングタームな投資なのです。
粘り強さについては、アンジェラ・ダックワース「やり抜く力 GRIT(グリット)―人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける」がおススメです。
第7章 増え続けるホームスクール
2003年頃には、アメリカのホームスクーラーの40%以上がオンライン講座を使った学習を行っています。
第8章 日本でできるギフテッド教育
共働きでもできるのがプチ・ホームスクーリングです。
- 週末を利用する。大事なのは習慣化することです。
- ツールや材料をそろえる。
- よい本を読み聞かせるのにお金と時間を惜しまない。伝記を読ませるのがよいです。
- 子供からの質問は丁寧に受け止める。質問することの大切さを言って聞かせるのが大事です。
- ビジュアル・ラーナーとオーディナリー・ラーナーの違いを理解する。全体の3分の2の生徒が視覚的空間的な能力に長けており、それに沿った学習方法を好みます。
- 自然に触れる時間を持つ。自然に身を置くことで、生物や科学に対して、自分の生活にどのように関わっているかを体感できます。
- 送り迎えの時間を有効活用。
- 親の仕事場を見せたり、仕事の話をしたりする。
- 早い段階で子供の方向性を見極める。興味がある分野が分かるまでは、トライ&エラーが必要です。
- マルチメディアを活用する。
- 世界規模のコンテスト等に積極的に参加する。
- ギフテッドに関する組織に積極的に加入する。